2020年4月22日2時0分に日本経済新聞電子版から、下記趣旨の記事が解説イラスト付きでネット配信されていた。
医師や介護職員、スーパーマーケットの店員、公共交通機関の運転手など、社会機能を保つため職場にとどまる人は、緊急事態宣言が全国に拡大された今でも、なお多い。
彼らや私たちが職務上の原因で新型コロナウイルスに感染した場合、労働者災害補償保険の認定対象となるのか。
ケースごとに考えてみた。
【3月中旬、初の労災申請明かす】
「新型コロナウイルス感染に関する労災認定申請が1件出ていて、審査中だ」
3月中旬の参議院厚生労働委員会。
坂口卓・厚生労働省労働基準局長は、福島瑞穂氏の質問にこう返答した。
「新型コロナ感染症関係の申請を予断を持たず丁寧に扱い、労災認定の判断をする際は、厚労省本省補償課と協議するように」
実は厚労省は、新型コロナが国内で大問題になる前の2月3日、各都道府県の労働局あてにこんな通達を出していた。
補償課によれば、申請は現在、「まだまだ出てきていない」状態という。
【労災認定なら休業中、賃金の8割給付】
労災は健康保険と比べても手厚い。
疾病やけがが労災認定されれば、治療費の自己負担はゼロ。休業中は賃金の計8割が給付され、後遺症には一時金や年金、本人死亡なら遺族年金が出る。
ただし認定は厳格で、労働基準監督署が案件ごとに審査する。
では、細菌やウイルスなど病原体の感染については、どんな場合に対象となるのだろうか?
それが書いてあるのが、労働基準法施行規則35条の別表だ。
最初に明記されているのは、「医師、看護師、介護士が業務上感染する疾病」だ。
患者と濃厚接触が避けにくいためで、過去には結核患者の看護で院内感染した看護師などが労災認定されている。
今回も申請が出てくると予想される。
一般の会社員には、「病原体にさらされる業務に起因することが明らかな疾病」全体を審査の対象とする、包括救済規定が適用される。
基本的には、あらゆる職種が対象になる。
最重要の認定基準は2点ある。
疾病やけがが事業主の指揮命令下で起きた「業務遂行性」と、原因が業務自体にある「業務起因性」だ。
認定のためには、この2点が共に満たされなければならないが、疾病の場合は業務や通勤による起因性が重視される。
【ポイントは、「職場以外での感染可能性がないか」】
今回のコロナ禍で厚労省がまず想定したのは、中国・武漢などウイルス流行地域に出張した社員が帰国後に発症するケースだ。
通常の労災が通勤中の「通勤災害」と、職場での「業務災害」に二分されるのとは異なり、出張の場合は、家を出てから帰宅までの時間すべてが認定対象になりうる特別扱いとなる。
厚労省は、流行地域に出張して商談などで感染者と接触し、業務以外の感染機会がない場合は労災として認定する方針だ。
私的な目的で流行地域に渡航し、私的行為で感染したことが明らかな場合は、業務外なので労災ではない。
より身近なのは国内感染だ。
厚労省は、接客などの対人業務で感染者と濃厚接触し、業務以外に感染機会がない場合は労災認定することにしている。
私的行為で感染者と接触したことが明らかな場合は、国外感染と同じで労災の対象外だ。
いずれも業務上か私的かの判断がポイント。
補償課の担当者は、「職場以外での感染の可能性がないか、ウイルスの潜伏期間や症状に医学的矛盾がないかを監督署が個別に調査し、判断していく」と指摘。
基準を一言で説明するのは難しいとする。
【在宅勤務中にけが 労災認定も】
テレワークの場合はどうか。
テレワークといっても、企業ごと人ごとに手法は異なり、自宅から出ず仕事ができる事務職や研究職もいれば、自宅やサテライトオフィスを起点に外回りをする営業職もいる。
テレワークの場所は
(1)自宅
(2)サテライトオフィス
(3)喫茶店や交通機関など公共の場
の3パターンがある。
テレワーク中の感染については、先の国内感染についての厚労省の考え方がそのままあてはまるだろう。
むしろテレワークで気になるのは、慣れない場所で働くことで、ふだんの勤務場所での勤務に比べ、一般の労災事故に遭う可能性が増すことだ。
(1)の自宅の場合、仕事中のパソコンや事務機器の使用に伴うけがは業務上災害になる。
厚労省によると、所定の労働時間中に自宅でパソコン作業をしていたテレワーカーがトイレで離席し、作業場所に戻って椅子に座ろうとして転倒した事故が労災認定された例がある。
トイレや水分補給など業務に付随する行動に起因するためだ。
休憩時間の私用外出や、家の中で子供を世話していた際のけがは対象外になる。
【「営業先でクラスター発生」でも認定の可能性】
サテライトオフィスはどうか。
自宅とオフィスの往復中のけがは、経路と移動手段が合理的であれば「通勤災害」になる。
サテライトオフィスが遠隔地にある場合は出張扱いになり、労災認定の範囲がより広がるだろう。
(3)のモバイルワークは、業務と業務外の線引きが難しい。
厚労省補償課によれば、特定営業先を回る業務であることが明らかな場合は、通勤災害や業務災害が認められる可能性があるようだ。
新型コロナ禍が始まった時期、中国人観光客を乗せた観光バスの運転手とガイドが感染したが、労災に詳しい波多野進弁護士は、「2人に中国への渡航歴がないことなどから、十分に労災認定の可能性がある」とみている。
営業先などの限られた範囲で患者の「クラスター」が発生した場合、出入りの営業担当者が労災認定を受けられる可能性はある。
いざという場合、労働局や労働基準監督署への問い合わせをためらう理由はない。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58258950Q0A420C2KNTP00/?n_cid=NMAIL007_20200422_H
4月24日2時3分に毎日新聞からは、業務性が確認できれば感染ルートが厳格に特定できなくても労災として認められるという、同趣旨の記事がネット配信されていた。
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染者から労災認定の請求があった場合、感染ルートを厳格に特定できなくても、業務中に感染したとみられる事例を含めて認める方針を固めた。
すでに業務中に感染したと訴える人から3件の請求があり、同省によると、請求は今後も増える見込みだ。
保険給付を受けるには、通勤を含む仕事中にけがや病気をしたことと、仕事が原因という2点を満たすことが必要。
感染症の場合、対人業務で感染者と接していることや、仕事以外の感染機会がないと判断されたケースなどが該当する。
しかし、新型コロナは国内感染が広がり、無症状の人から感染したケースもある。
従来通りの認定基準を適用することは「ハードルが高いのではないか」と懸念の声が上がっていた。
厚労省は、こうした声を踏まえ、「感染ルートを厳格に特定できなくても幅広く認める」(幹部)という方針を固めた。
認定のばらつきを抑えるため、保健所の疫学調査も参考にする。
関係者によると、3~4月までに、中国人観光客を案内したツアー関係者や陽性患者を看病していた看護師らからの労災請求が3件あった。
今後も請求の増加が見込まれ、認定までの期間も短縮する構えだ。
ただし、ライブハウスでのイベントや集団での会食に私的に参加していた場合は認定しない方向だ。
厚労省幹部は、「業務性が確認できれば、幅広く認定できるようにしたい」と話す。
労災認定されると、治療費の自己負担がゼロになるほか、休業中も賃金の8割が保険給付となる。
https://mainichi.jp/articles/20200423/k00/00m/040/283000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。