2020年4月30日付で信濃毎日新聞から、下記趣旨の記事が給油所全景の写真付きでネット配信されていた。
売木村で燃料タンクを地上に置く「地上タンク」を使った全国初のガソリンスタンド(給油所)の仮営業が始まった。
経営は住民グループが担う計画で、設備を提供している「コモタ」(横浜市)から消火や操作方法について指導を受けながら本格営業を目指す。
「給油所過疎地」対策として経済産業省が支援する実証実験の一環。
飯田広域消防本部の承認・許認可を受け、営業時間を通常の半分の午前9時〜午後3時(日曜休み)に短縮して27日に始めた。
レギュラーとハイオクガソリン、軽油、灯油を提供する。
経営を担う住民グループの後藤さん(61)は、「地上にあるためメンテナンスがしやすい。安全に配慮して営業していきたい」とした。
村内の給油所は1カ所のみで、地下タンクの更新には多額の費用を要することから、村は費用が抑えられる地上タンクの導入を検討。
村と連携するコモタなどが準備を進めてきた。
3月に地上タンクを設置した。
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200430/KT200429GVI090003000.php
ちょっと前、2020年3月15日9時15分に毎日新聞からは、より詳しい下記趣旨の記事がネット配信されていた。
長野県売木村は、経済産業省資源エネルギー庁と協力して3月10日、道の駅「南信州うるぎ」の隣接地約470平方メートルを整備して、ガソリンなどの「コンテナ型地上タンク」(幅6メートル、奥行き2・6メートル、高さ2・8メートル)を設置した。
全国初の試みとなる実証実験で、エネ庁は「中山間地への燃料供給に選択肢が増える」と期待。
同村の清水秀樹村長は「3月下旬には試験営業を開始したい」と意気込む。
国内のガソリンスタンド(GS)は、引火の危険性から地下タンク設置が消防法で定められているが、同村唯一のGSは地下タンクの耐用期限が2022年度末に迫る。
約5000万円と見込まれる更新費用を避けたい村と、GS過疎地対策のため、維持管理費が安く欧州では一般的な地上タンクを国内でも選択肢に加えたいエネ庁との思惑が合致して実現した。
GSの販売システムを手掛ける「コモタ」(横浜市)がドイツから輸入して安全検査したタンクを使用。
現場では1月17日から基礎工事に着手し、2メートルを超える防火壁も設置。
3月10日には小雨の中、大型クレーンがタンクをつり上げて設置場所に慎重に運んでいた。
飯田広域消防本部などの検査を経て、26日から試験営業に入る。
2500万~3000万円と見込まれる設置費用は、コモタを国が助成。
レギュラー、ハイオク、軽油、灯油のタンクを併設する。
当面は同村のGSを経営している村民有志の「ガソリンスタンドを残す会」が運営を兼務。
村は、道の駅の隣接地に設置することで、道の駅スタッフが来客時のみ対応する「駆け付け給油」で人件費を抑制することも視野に入れる。
エネ庁石油流通課の成瀬さんは、「人口減少でGSの閉鎖が進む可能性がある。消防法の規制緩和が進めば、中山間地での地上タンク設置に道が開ける」と期待を寄せる。
村唯一のGSは、村が年200万円を負担して経営を維持しており、村の財政を圧迫しているが、このGSが閉鎖されれば、隣の阿南町まで行く必要がある。
それに加えて伊東副村長は、村がGS維持にこだわるのには「理由がある」という。
同村は「平成の大合併」で阿南町、天竜村との合併が協議されたが、最寄りの阿南町役場でも車で30分以上かかり、合併後の役場へのアクセスの悪さなどのデメリットが指摘されて、合併が実現しなかった経緯がある。
伊東副村長は、「閉鎖された村であるがゆえに、『自分たちのことは自分たちで賄いたい』との村民の意思が、GS維持への強い気持ちの背景になっているのでは」と分析する。
村は、燃料確保の手段として、隣県の浜松市などで実証実験が進む移動給油車の導入も考慮した。
だが、村の中心部から最奥部まで数キロしかなく、狭い村域に点在する集落を移動する経営形態は非効率な上、18年11月の村民アンケートでは、約7割が「地震などの災害で村が孤立する場合も考えてGSを維持してほしい」と要望したため、地上タンクの設置に踏み切った。
村の担当者は、「村にはバイクで訪れる観光客も多く、GSは必須。暖房のための灯油スタンドも備えて村民の要望に最大限に応えたい」と話し、新GSの経営状況を見ながら村内での維持策を探る。
https://mainichi.jp/articles/20200315/k00/00m/040/028000c
※以下は、油業報知新聞社(発信年月日不明)からの関連情報。
『vol.671『規制緩めりゃ業態変わる』』
『経済産業省は、過疎地の住民が「ガソリンスタンド難民」となるのを防ぐため、小型の貯蔵タンクを用いた「ミニGS」の設置を後押しする。
ミニGSを導入する自治体に対し、早ければ今年度から設置費の一部を補助する。
人口数百人程度の地域で普及が期待される。
ガソリンは1万㍑前後の地下タンクで貯蔵するのが一般的だ。
ミニGSは、給油機と600㍑以下の小型タンク(高さ1.5㍍程度)を一体とし、地上に設置する。
設置費は約一千万円で従来のGSの約3分の1に抑えられ、維持費も安くなる』─ 8月21日付「讀賣新聞」。
この計画が画期的と言えるのは、ガソリン貯蔵タンクを小型とはいえ地上に設置することで、埋設や配管などの工事費をゼロにできる点だろう。
しかし、それに伴って種々の規制が掛けられれば、元も子もない。
さらに重要なことは運営コストのこと。
当然セルフ方式となるだろうが、従来どおり、泡消火設備の設置やコントローラーによる制御等を義務付けると、これまた費用負担が増すことになる。
限りなく無人化に近いかたちでシンプルな運営ができるかどうかが、成否の鍵となるだろう。
そこのところは、消防庁を所管する総務省とよ~く話し合ってもらう必要がある。
もし、この「ミニGS」が、一定人口の郊外地にも導入されることになれば、GS業界にとっては歴史的な出来事になるかもしれない。
・・・・・
http://yugyouhouchi.co.jp/notebook/475
(ブログ者コメント)
ガソリンスタンドでタンク地下埋設が義務づけられているのは、引火した場合の被害拡大抑制や車による衝突リスクを防ぐためだ。
『ガソリンスタンド減少歯止めへ 石油連盟、地上型タンク容認を検討』
(2015年6月4日6時33分 産経ビズ)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/150604/bsd1506040500008-n1.htm
以下は、地下埋設を義務付けた消防法の該当条文。
危険物の規制に関する政令
第三節 取扱所の位置、構造及び設備の基準
給油取扱所の基準)
第十七条 給油取扱所(次項に定めるものを除く。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。
・・・・・
七 給油取扱所には、固定給油設備若しくは固定注油設備に接続する専用タンク又は容量一万リットル以下の廃油タンクその他の総務省令で定めるタンク(以下この条及び第二十七条において「廃油タンク等」という。)を地盤面下に埋没して設ける場合を除き、危険物を取り扱うタンクを設けないこと。ただし、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第五号の防火地域及び準防火地域以外の地域においては、地盤面上に固定給油設備に接続する容量六百リットル以下の簡易タンクを、その取り扱う同一品質の危険物ごとに一個ずつ三個まで設けることができる。
・・・・・
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334CO0000000306#F
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。