2020年4月29日22時7分に共同通信から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
韓国・ソウル近郊の京畿道利川にある物流倉庫の工事現場で29日午後、爆発を伴う火災が発生し、消防によると、同日夜までに38人の死亡が確認された。
建物内に有毒ガスが充満して被害が拡大したとみられる。
他に10人が負傷した。
工事現場には出火当時、約80人がいたが、数人と連絡が取れていないという。
韓国メディアは、断熱材のウレタンフォームを吹き付けた際に出た可燃性ガスに溶接作業の火花が引火した可能性があると伝えた。
消防は地下から出火したとみて調べている。
聯合ニュースによると、建物は地下2階、地上4階建ての冷蔵用の倉庫。
https://this.kiji.is/628177450108077153
4月30日12時2分に聯合ニュース日本語版からは、やや詳しい下記趣旨の記事がネット配信されていた。
京畿道消防災難(災害)本部は30日午前、現場での人命捜索を終了したと発表した。
この火災による死者は38人、負傷者は10人だった。
火元とみられる地下2階で18人、残りの5フロアでそれぞれ4人が見つかった。
火災は29日午後1時半ごろに発生した。
地下2階での貨物用エレベーターの設置作業と、この付近で断熱材のウレタンフォームを吹き付ける作業の途中に出火したとみられる。
火は約5時間後に消し止められた。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20200430001000882
5月1日8時48分に東亜日報日本語版からは、施工会社は火災危険について何度も注意を受けていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
大火災の惨事は、予告されたも同然だった。
物流センターの施工会社は、火災発生44日前の先月16日など、消防当局から火災危険注意を3度も受けたが、これを無視したことが分かった。
30日、東亜(トンア)日報が入手した韓国産業安全保健公団の「ハンエクスプレス物流センター」の有害・危険防止計画書の審査と確認事項」によると、施工会社・コンウは、昨年3月から今年3月までの1年間、2度の書類審査と4度の現場確認の過程で35件の指摘を受けた。
公団は、火災の原因を予見したように、4度の現場確認後、3回の「溶接作業などの火花の飛散による火災発生」、「ウレタンフォームパネル作業時に、火災爆発の危険性」、「火花の飛散などによる火災」を注意するように措置した。
しかし、公団はその後、追加確認無しに「条件付き適正」と判断を下し、施工会社は、有害・危険防止計画書の審査で危険レベルが最も高い1等級が付けられた状態で工事を継続した。
火災発生当日の29日、火災爆発の危険性が大きくて注意を受けたウレタンフォームの作業とエレベーター設置溶接作業が、物流センターの工事現場で同時に行われたことが確認された。
工事開始前も大惨事は予告された。
施工会社は、書類審査で「ウレタン吹付作業時の施工ステップ別作業安全計画補完作成」、「溶接・溶断作業中の可燃性物質、残留ガスなどによる火災・爆発防止計画の具体的な補完作成」などを指摘された。
この時も、審査結果が「条件付き適正」と出たので、工事が始まった。
有害・危険防止計画書の作成は、2008年の利川物流倉庫火災などの大規模災害の後続対策として導入された制度だ。
すべての事業所は、有害・危険設備を設置したり、移転・変更する場合は、工事着工15日前までに計画書を作成して提出し、進捗状況について消防当局から確認を受けなければならない。
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5月1日12時14分にハンギョレ新聞日本語版からは、労働者に対する安全教育はなかった、工事終盤につき溶接とウレタンフォーム作業を同時に行った可能性が高いなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
火災惨事が発生した4月29日は、「世界労災死亡労働者追悼の日」のちょうど翌日だった。
最小限の安全対策もない劣悪な作業環境で犠牲になった労働者を偲び、再発防止を求めるための追悼の日だ。
しかし、「危険の外注化」に伴う惨事は再び繰り返されてしまった。
利川物流センター火災現場でかろうじて脱出した労働者たちは、「勤務前に避難や安全教育を全く受けなかった」と証言した。
昨年4月、雇用労働部と韓国産業安全保健公団は、火災の危険が大きい溶接・溶断作業などに対する安全対策づくりを推進した。
その結果、「産業安全保健基準に関する規則」が一部改正され、4月20日から施行されている。
改定された内容によると、事業主は火災の危険作業を行う前に、火花・火の粉が飛び火災が起こるのを防ぐための措置を行い、労働者に対し、火災予防および避難教育を行わなければならない。
また、作業全体の過程に対する安全措置の実施の有無などを点検し、すべての作業者が見られるよう現場に掲示しなければならないという内容も盛り込まれた。
しかし、ハンギョレが30日に会った生存者らは、事故現場で安全教育などが全くなかったと話した。
業者側から作業中の危険要素や事故発生時の避難経路について事前に案内されなかったという。
事故が発生した29日、初めて物流センターの現場に投入されたという40代の男性Aさんは、「ほかの建設現場では、普通、投入された初日に安全教育を受けるが、ここはそういうものは全くなかった」と話した。
50代の男性Bさんも、「初日なので安全設備が整っていたかどうかは分からないが、建設現場と違って、ここでは仕事を始める前に安全教育が行われなかった」と話した。
発火地点ではない地上2階で犠牲者が最も多く出たことについて、消防当局は「避難路が見つからなかったため起こった惨事」とみている。
事前に模擬訓練式の火災避難教育を進めていたなら、犠牲者を減らすことができたと判断される部分だ。
また、まだ火災の原因は明らかになっていないが、産業現場の災害の主な原因とされる「ウレタンフォーム」の希釈作業が行われる過程で、通風・換気などの措置がきちんと行われたかどうかも確認されなければならない部分だ。
産業安全保健基準に関する規則によると、事業主は、引火性物質などがあり、爆発・火災が発生し得る場所での爆発や火災を防ぐために、通風・換気および粉じん除去などの措置を取らなければならない。
今回の惨事で、施工会社だけでなく、元請会社が安全義務をきちんと履行したかどうかも究明されなければならない。
産業安全保健法では、複数の請負会社が一カ所で工事をする場合、元請は作業内容と順序を安全に調整しなければならない。
工程率85%水準だった利川物流センターには、9つの業者の労働者が集まって各自の作業をしていた。
雇用労働部のパク・ヨンマン労災予防補償政策局長は、「油蒸気が発生するウレタンフォームの作業の後は、十分に換気をさせた後に溶接を始めるなど、作業内容と順序を安全に調整しなければならない。しかし、完工が急がれる工事の終盤にはこうした手続きを省略し、同時に作業を押し進めた可能性が高い」と説明した。
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36498.html
(ブログ者コメント)
韓国の工事安全管理レベルがどの程度のものか分からないが、わが国の工事現場でも他山の石とする点があるかもと思い、紹介する。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。