2021年5月9日21時29分にYAHOOニュース(在英国際ジャーナリストの寄稿文?)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
8日早朝、日立製作所が製造した複数の高速鉄道車両クラス800に亀裂が見つかったため、運行するイギリスのグレート・ウエスタン鉄道(GWR)とロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)などは安全点検のため運行を停止しました。
混乱は月曜日も続きそうです。
亀裂が見つかったのは車両下にあるジャッキングポイントの溶接部です。
クラス800は運用が始まって約3年半、866両すべての納品が終わっており、イギリスの社会インフラになったと日立製作所は自負しています。
クラス800をベースにした標準車両AT300の拡販攻勢をかけています。
クラス800は世界の鉄道市場に殴り込みをかけた「鉄道の日立」の、まさにフラッグシップと言える車両なのです。
スコットランド議会選を取材した筆者はクラス800のLNER「AZUMA(あずま)」に乗って7日早朝にスコットランドのエディンバラからロンドンに戻りました。
快適な4時間半だっただけに、ニュースに衝撃を受けました。
グレート・ウエスタン鉄道はロンドンとウェールズを結んでいます。
ロンドンとスコットランド、ウェールズを結ぶ大動脈が止まりました。
ディーゼル・電気両用のハイブリッド車両で最高速度は時速200キロメートルのクラス800は2017年10月、ロンドンとウェールズを結ぶGWRの路線で営業運転を開始した際、遅延や空調から水が漏れるトラブルに見舞われ、惨憺たるデビューを飾りました。
この車両には神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムが使われています。
クラス800は4月26日にも安定増幅装置に深さ最大15ミリメートルの亀裂が見つかり、5両の運行を一時停止して修理したばかり。
今回の亀裂は別の箇所で見つかり、「かなり深い」そうです。
182車両のアルミニウム部分に金属疲労の兆候がないか調査していると英紙デーリー・テレグラフは報じています。
GWRは「複数の車両から亀裂が見つかった」と話しています。
金属疲労は時間が経つにつれ悪化し、保守点検で見逃せば大事故につながる恐れもあります。
労働組合の運輸従業員協会(TSSA)のマニュエル・コルテス書記長は次のようにコメントしました。
「鉄道工学のスタッフが事故につながる前にこれらの亀裂を発見したことは歓迎すべきニュースだ。これらの亀裂の原因を完全に調査することが絶対に不可欠だ。この車両は100%安全と確信するまでサービスを再開することを許可してはならない。車両は比較的新しく、乗客や納税者ではなくメーカーが修理の費用を負担する必要がある」
日本ではどうなのでしょう。
深刻な事故につながりかねない「鉄道重大インシデント」の統計を見てみても、車両障害は最近では年1回しか報告されていません。
2017年12月、「のぞみ34号」で走行中に異臭や異音がし、台車枠の側ばりに亀裂が発見されました。
車両は10年前に製造され、亀裂は実に長さ146ミリメートル、幅16ミリメートルに及んでいました。
溶接や過度の研削が関与したと推定されています。
新幹線としては初の「鉄道重大インシデント」に認定されました。
のぞみの最高速度は時速300キロメートルです。
クラス800は時速200キロメートルとはいえ、これは日本で言う「鉄道重大インシデント」が2週間もしないうちに同じクラス800で立て続けに、しかも同時多発的に起きたということではないのでしょうか。
クラス800は、イギリスでデビューして、まだ4年も経過していません。
クラス800が、神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムを使用し、今回、アルミニウム部分の金属疲労を調べているというのも非常に気がかりです。
当時、日立製作所の正井常務は、「きちんと検証をしており、安全性に問題ない。今回の問題は残念だが、安全な製品を届けることがメーカーの責務だ」と説明していました。
欧州の鉄道市場には仏アルストム、独シーメンス、カナダのボンバルディアの3強がひしめき、アルストムがボンバルディアの鉄道関連事業を買収したばかりです。
そこに切り込んだ日立製作所の海外鉄道事業に大きな影響を与える恐れがあるような気がしてなりません。
どうか筆者の杞憂であることを祈ります。
それにしても、イギリスでは富士通の会計システム「ホライゾン」が最大736人にのぼるとみられる準郵便局長の大量冤罪事件を引き起こしており、「モノづくり日本」の輝かしい栄光は一体どこに行ってしまったのでしょう。
【日立製作所のイギリスにおける鉄道事業】
2009年12月、ロンドンとアシュフォードを結ぶ約100キロメートルの区間で日立製作所が製造した高速鉄道用の車両(クラス395)が運転開始
・・・・・
2020年2月、英政府がイングランドの主要都市を南北に結ぶ高速鉄道計画「ハイスピード(HS)2」の建設を進めると発表。
日立製作所はカナダのボンバルディアと第1期の車両受注を目指して応札
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210509-00237051/
5月11日12時40分にYAHOOニュースからは、問題となっている亀裂はハイブリッド車両に集中して見つかっているらしいなど、下記趣旨の続報的記事がネット配信されていた。
8日、日立製作所が製造した英都市間高速鉄道車両クラス800シリーズのジャッキングポイント溶接部に「深刻な」亀裂が見つかった事故で、緊急点検の対象になるのはグレート・ウエスタン鉄道(GWR)とロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)など運行会社5社計1456車両にのぼり、不合格は99件に達したと英鉄道専門メディア、レールビジネスUKは報じています。
運休と遅延は数週間続く見通しです。
ワクチン接種が進むイギリスは6月中の正常化に向け、ロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除しているものの、ロンドンとスコットランド、ウェールズ間の乗客はパンデミック前の30%程度。
このため運行会社は仏アルストム製の代替車両や長距離バスを使って路線を再開させる予定です。
英政府は日立に対し、乗客への補償として数百万ポンド(数億円)を請求する方針です。
日立製作所鉄道部門の欧州拠点、日立レールは、筆者の電子メールでの問い合わせに一切答えていません。
レールビジネスUKの報道を見ていきましょう。
クラス800シリーズのうち、電気専用の車両クラス801では亀裂はそれほど見つからず、問題はディーゼル・電気両用のハイブリッド車両に集中しているようです。
スコットランドの運行会社スコットレールに納入され、2018年7月から運用されている日立製近郊輸送用車両クラス385でも10件の亀裂が見つかったそうです。
クラス800シリーズ、クラス385の車両は、いずれもアルミニウムでつくられています。
ジャッキングポイントとは、車両を整備するためジャッキで地面から持ち上げる箇所です。
運行が停止されたのは、車両の部品が亀裂により落下して線路や駅プラットフォームの人に危険を及ぼす恐れがあるからです。
クラス800シリーズは摩擦攪拌溶接技術を使って組み立てられており、アルミニウムの溶接部を修復できる施設は限られています。
さらに、溶接の際生じる大電流による損傷を防ぐ必要があるそうです。
クラス800シリーズでは4月11日にも安定増幅装置ヨー・ダンパーに深さ最大15ミリメートルの亀裂が見つかり、修理したばかり。
このとき亀裂は8件見つかったそうです。
亀裂が見つかったシリーズは日立製作所の笠戸事業所(山口県)と英北部ニュートン・エイクリフの車両工場で製造されており、溶接が均一に行われていなかった恐れもあります。
クラス800シリーズの車両には神戸製鋼所がデータを改ざんしていたアルミニウムが使われていますが、当時、日立関係者は「きちんと検証をしており、安全性に問題ない」と説明していました。
鉄道関係者によると、営業運転開始から2~3年で亀裂が立て続けにこれだけ広範囲で見つかるのは本来あり得ません。
ヨー・ダンパーのような台車で亀裂が見つかれば、日本では「鉄道重大インシデント」に当たります。
車両本体に亀裂が入ることは、まずないそうです。
クラス800シリーズは最高時速200キロメートルで走行するので、亀裂が広がれば大事故につながりかねません。
日立製作所と日立レールは、原因が分かり次第、すぐに記者会見する必要があるのではないでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210511-00237318/
(ブログ者コメント)
新型コロナワクチンの開発遅れに続き、技術立国の足元が揺らいでいるかの如きトラブルの報道があったので紹介する。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。