2022年9月8日7時24分にYAHOOニュース(AUTOCAR JAPAN)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
【3歳女児が乗っていたのはハイエース・コミューターベースの幼児バス】
2022年9月5日。
静岡県牧之原市の幼稚園で、またしても小さな命が大人の不注意によって奪われた。
5日の朝、園児を送迎するバスが幼稚園に到着したあと、本来ならばバスを降りるはずの3歳女児はバスから降りてこなかった。
ドライバーと派遣職員の2人は、全員が確実に降りたか、確認を怠り、さらに幼稚園のクラス担任も確認をせず、女児は登園したことになっていた。
約5時間後、熱射病で意識不明の重体となっていた女児がバスの中で発見される。
病院に運ばれたあと、死亡が確認された。
3歳女児が倒れていたそばには、空の水筒が転がっていたという。
最後まで何とか生きようと頑張ったのに、誰1人女児に気づくこともないまま放置されてしまった。
様々なメディアが、この幼稚園が所有する送迎バスとして青い日産キャラバンの写真を添えているが、実際に3歳女児が乗っていたのはトヨタ・ハイエースコミューターである。
写真や映像から判断すると、このバスはハイエースコミューターをベースに、座席やもろもろのレイアウトを変更した「幼児バス」と呼ばれるもの。
トヨタ車体が製造し、トヨタ自動車が販売している。
子ども18人、大人2名まで乗車可能だ。
【幼児バスの保安基準にも疑問】
なお、幼児バスにはチャイルドシートはもちろん、シートベルトもついていない。
幼児バスの保安基準においては、ベルトは不要。
「様々な体格の幼児が乗る送迎バスでは、サイズが一律のベルトを備えることが難しい」
「乗降時/着脱時に保育士など保護者の負担が大きい」
「火災事故などで脱出するのに時間がかかる」
などを理由に、装備が免除されている。
その代わりに国交省では、平成25年に「幼児専用車の車両安全性向上のためのガイドライン」を定めている。
事故の衝撃を受けたとき、前のシートの背もたれに幼児が倒れこんでもけがをしないよう、衝撃を受け止める柔らかいクッションを備えることや、事故時の衝撃を和らげるためシートバックの高さを高くするなどの内容だ。
3歳女児が乗っていたハイエースがこのガイドラインに沿った年式かは不明だが、シートバックを高くすると、小さな子は見つけにくくなる危険性が生まれるのではないだろうか。
なお、保安基準では子ども用シートベルトは不要とされているが、子どもの安全を第一に考える幼稚園や保育園の中には、ベルト類を自主的に備えるところも増えている。
【センサーやカメラではない アナログな方法で子どものスクールバス置き去りを阻止】
スクールバス王国、といえるアメリカでは、小学校1年生(5歳~)から17歳まで、約9割近くの児童生徒は自家用車またはスクールバスを利用して登校する。
4歳以下の幼稚園児の場合は、保護者が自家用車で送迎するのが一般的だ。
時に命を奪う危険も大きい「車内置き去り」に対して、アメリカではどのような対策が講じられているのだろうか?
アメリカのスクールバス製造会社大手「ICバス」が標準装備している「Leave No Student Behind」(後ろにいる子どもを置き去りにしない) 手順としては、シンプルでメーカー公式の動画で手順が説明されている。
スクールバスの後部安全機能「Leave No Student Behind」について 朝、子どもたちを乗せたバスが学校に到着し子どもたちが降車するのを見届けると、ドライバーはエンジンキーをイグニッションから抜く。
その瞬間からバス内にアラームが鳴り響く(10分以上の走行後のみ)。
このアラームを消すために、ドライバーはバスの最後部まで歩いてアラームを解除(リセットボタンを押す)する必要がある。
リセットボタンを押す際に最後部まで行く間、一席ずつ確認して、子どもが眠ったまま残っていないか? シート下に隠れたりしていないか? 確認しながら歩くことになる。
カメラやセンサーではなく、ドライバーが一席ずつ歩いて子どもたちが車内に残っていないかを確認する。
そして、ボタンを押すという作業を最後におこなう。
その後、ふたたび運転席に戻るまで、もう一度シートや車内を確認することもできる。
アナログなシステムではあるが、確実に子どもの置き去りを防ぐことができる。
【アメリカのスクールバスは道路上最も安全な乗り物】
アメリカのスクールバスは5歳からの利用が基本となる。
これに対して日本の幼稚園バスは年少=3歳からバスに乗る。
3歳と5歳では体の発育も違うし、言動も異なるのは当然だが、Leave No Student Behindの方法なら、3歳児だろうが5歳児だろうが中高生だろうが、ドライバー自身が絶対に確実に見落とすことがない。
また、体が小さすぎてセンサーに反応しない、カメラに映らないなどの心配もない。
日本では全般的に、「乗車中の子ども」を守ることが保護者やスクール頼みなところがある。
つまり、社会全体、子どもに関わる産業全体で子どもを守ろうという仕組みが確立されていないのだ。
チャイルドシートに関しても同様で、法制化から20年以上経過していても、着用率はやっと7割。
そして、正しく使用できているのはわずか2~3割というデータがある。
どんなチャイルドシートを選んで、どのようにつければいいのか?
警察に聞いても、「取扱説明書を見てつけてください」としか言われない。
取り締まりも甘く、ほとんどは使用しているかの確認のみとなる。
正しく着用しているか?
事故の際にちゃんと拘束されるのか?
体に合ったチャイルドシートを使っているか?
といったところまでは、警察はチェックしないし、チェックできる知識や情報も持っていないだろう。
話を戻そう。
アメリカNHTSAにおいて、「スクールバスは道路上、もっとも安全な乗り物」であると定義されている。
NHTSAとは日本の国交省自動車局のような組織であり、アメリカの自動車に関する保安基準を定める政府機関でもある。
NHTSAが定めた保安基準がFMVSSであるが、スクールバスに関してはあらゆる自動車の中で最も多くのFMVSSが関わってくる。
こちらに書き出すにはあまりにも膨大なので割愛するが、日本の幼児バスに関する保安基準の何十倍も多くの厳しい基準をクリアする必要がある。
その1つに、スクールバスが停車して子どもが乗降しているときに出される『ストップアーム』がある。
日本では、幼児バスが止まっているときには、せいぜいウィンカーとハザードランプだけだが、アメリカのストップアームの中には約2mもの長さになる延長タイプもあり、多くのスクールバスで導入されている。
巨大で、視覚的にも物理的にも、クルマがスクールバスの横をすり抜けることを阻止する。
なお、日本は幼児バスの横を通るときは「徐行」だが、アメリカではスクールバスの追越しは厳禁で、バスが動くまで他のクルマは待つ必要がある。
【アメリカのスクールバスにはシートベルトがない?】
子どもを守るための多数のルールが敷かれるアメリカのスクールバスだが、実は、この典型的な黄色いバスにはシートベルトがない。
日本の幼稚園バスにもシートベルトの装備はなくてもよいことになっているが、アメリカと日本のスクールバスでは、シートベルトがない理由が全く違ってくる。
アメリカのスクールバスは、厳格に定められた多くの技術基準のおかげで、シートベルトがなくても衝撃を吸収し、子どもたちに影響がない構造となっている。
しかし、同じアメリカでも、日本で多く使われているミニバンタイプのスクールバスは、シートベルトやチャイルドシートの装備、着用が義務付けられている。
ドライバーに対する規則も非常に厳しい。
3歳女児を死なせた幼稚園バスを運転していたのは、臨時で園の経営者だったとのことだが、アメリカではこういうケースはあり得ない。
スクールバスを運転するのは、運転技術や安全確認のスキルはもちろん、子どもたちを守る(=死なせない、けがをさせない、事故にあわない、犯罪に巻き込まれないなど)ための、多くのトレーニングを受けて数々の試験に合格して資格を得たドライバーじゃない限り、スクールバスの運転はできない決まりがあるからだ。
「今日、いつものドライバーが休みだから園長が代わりに運転する」なんてことは、絶対にありえない。
そもそも日本では、スクールバスや幼児バスの運転に運転免許証以外、特別な資格は不要なわけだが。 何度も書く。
日本は、「乗車中の子どもの命」を国の宝として社会全体、国の制度や法律で多方面から守っていこうとする考えが希薄だ。
幼児バスの安全基準もかなり方向性がずれているし、幼稚園でのバス運用ルールも園の方針で統一されていない。
もちろん、子どもをクルマに乗せる親への交通安全教育もほぼゼロといっていいだろう。
世界で高い評価を受ける素晴らしい自動車メーカーがたくさん存在する日本。
自動車業界から率先して、乗車中の子どもを守る方法を考えてはもらえないだろうか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ff34b56abeaf1eb3cb23e6dca3fdd8137aeca4d?page=1
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。