2022年11月20日7時11分にYAHOOニュース(Merkmal;鉄道ライターの寄稿文)から、下記趣旨の記事が3枚の参考写真付きでネット配信されていた。
【ドアコックによる運行妨害は年数回】
東急の運転士が小田急の運行妨害の疑いで逮捕――。
そんな奇妙な事件が11月9日、報じられて話題となった。
報道によれば、この運行妨害は2022年7月に小田急電鉄の柿生駅で発生した。
当事者である東急電鉄の運転士は通勤中で、当日、遅刻しそうだったため、鉄道車両の外部にあった非常用ドアコック(以下、ドアコック)を使い、出発しそうだった電車のドアを開けて乗車した。
要は、運転士としての経験をうまく使ったわけだ。
結果、乗車できたものの、安全確認のため、電車の出発は5分ほど遅れ、運転士は威力業務妨害の疑いで逮捕された。
ドアコックは、鉄道車両の内外に設置されている。
操作するとドアを閉める空気圧が下がり、手で開けられるようになる。
安全装置として必須のものだ。
とりわけ、車内に設置されたものは、乗客にもわかりやすい形で掲示されている。
鉄道を使う大半の人は、「非常時になったら、ドアコックでドアを開ける」 と知っているだろう。
ただ、そのわかりやすさゆえに、「乗り間違えた」「降り損ねた」などのさまざまな理由で、乗客が勝手にドアを開ける事件が何度も起きているのだ。
全国の新聞過去記事を調べてみると、ドアコックの操作による運行妨害は、年に何度か、必ず報じられている。
かつては、「犯人」は見つからないことが多かったものの、近年は防犯カメラなどが整備されたためか、逮捕されることが多い。
報道では、「威力業務妨害の疑い」で逮捕されたものが多いが、このほかにも鉄道営業法違反、新幹線の場合は新幹線特例法違反などのさまざまな刑事罰に加えて、損害賠償を請求される可能性もある。
つまり、 「個人的理由でドアコックを操作する = 犯罪」 という考えは広く知られているが、それでも手を染める者は後を絶えないのだ。
【ドアコックが登場した理由】
2019年には、走行中の山陽新幹線で酒に酔った男が2度にわたってドアコックのふたを開け、列車を緊急停車させたとして逮捕されている。
また、新幹線では乗車後に乗り間違いに気づき、ドアコックを使って運行を妨害しただけでなく、転落死したり、大けがをしたりする事件も起きている。
そのため、新幹線車両では近年、列車が時速5km以上になるとドアコックをロックする機能を追加している。
こうした不用意な使用が絶えない背景には、ドアコックが安全装置、すなわち、手動で扉が開き、問題なく列車を乗り降りできるという 「素朴な思い込み」 があるようだ。
ドアコックは、1951(昭和26)年4月に神奈川県横浜市で発生した桜木町電車事故を契機として義務化された。
車両火災で多くの死傷者が出たこの事故では、ドアコックの表示が行われていなかったことが被害を拡大した原因のひとつとされた。
そのため、この事故以降、座席下のドアコック周りには赤ペンキが塗られ、「非常の時にはこのコックを開いて扉を手で開けてください」と表示されるようになった。
また、すべての車両に設置が義務化された。
ところが、1962年5月に発生した三河島事故では、脱線した貨物列車に衝突した電車から多数の乗客がドアコックを使って脱出。
線路を歩いて避難しようとしていたところに、事故を知らない後続の列車が進入し、大惨事となった。
この事例が示すように、ドアコックは万が一の時に欠かせない安全装置であるものの、決して万全なものではない。
これが改めて示されたのは、2021年10月に京王線で発生した、「ジョーカー」(米人気漫画『バットマン』の悪役)の衣装を着た男が車内に放火し、乗客を襲った京王線刺傷事件だった。
この事件では、乗客がドアコックを操作したことで、加速できなくなった車両が国領駅(東京都調布市)の所定位置から2mずれて停車。
国領駅にはホームドアが設置されているため、ドアを利用できず、多くの乗客が窓から脱出することになった。
線路側にあるホームドアの非常開閉ボタンも使用できなかった。
【国交省がガイドライン化】
この事件を受けて、国土交通省は2021年12月、鉄道会社に対して、新規に導入する車両に防犯カメラの設置を義務づけるとともに、非常通報装置やドアコックなどの操作方法について、ピクトグラム表示を共通化する方針を示している。
京王線の事件では、結果的に脱出が困難になったことから、これらの導入と並行して、ドアコックの是非や使用方法に関する議論も盛り上がった。
しかし現時点では、脱出時や、脱出後にさらなる事故を生む懸念はあるものの、必要な設備であることは一致している。
そこで、国土交通省が2022年6月、「車内用非常用設備等の表示に関するガイドライン」を発表し、各鉄道会社はこれに基づいた表示を実施している。
このガイドラインに基づく表示では、日英2か国語で、使用方法と危険性が記されている。
いざというとき、ドアコックは当然使われるべきものだが、それでみだりに車外から出るのは危険である。
また、車両から地面までの高さにも注意が必要だ。
改めて、ドアコックの適切な使い方が周知されなければならない。
最後に繰り返したい。
「個人的理由でドアコックを操作する = 犯罪」 である。
皆さん忘れないように。
弘中新一(鉄道ライター)
https://news.yahoo.co.jp/articles/30fa47873ae1a95c8887b9f38abc6e1e038c06c6
ちょっと前、11月9日17時50分にテレビ朝日からは、遅延証明書目的だった可能性もあるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
今年7月、小田急電鉄柿生駅で始発電車の出発が5分ほど遅れるトラブルがありました。
その理由は、なんと、出発しようとしていた電車のドアを乗客が外から無理やり開けたことでした。
果たして、そんなことができるのでしょうか。
鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん:
「一般的に電車には、車両の外側からでも緊急時などに備えて扉を開けられるように、非常用のドアコックというのが設けられている。
こちらを操作すると、普段は自動で閉まっている扉が手で開けられるようになります」
乗客がなぜ、そんな知識を持っていたのか…。
実は、ドアを開けた乗客は東急電鉄の運転士で、勤務のために小田急電鉄を利用。
遅刻しそうだったため、運転士としての知識を使い、車体の外にある非常用装置を操作してドアを開け、車内に乗り込んだとみられています。
次の電車に乗れば済むのに、なぜ、こじ開けてまで乗ったのでしょうか。
鉄道の専門家は、ある可能性を指摘します。
鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん:
「例えば、『電車が遅れました』という理由だと遅延証明書が出ますし、遅刻の言い訳にはなるのかなと思います。そういうことを考えたのかもしれない」
警察は8日、東急電鉄の運転士・保田容疑者(男性、43歳)を威力業務妨害の疑いで逮捕しました。
保田容疑者:
「やったことは間違いないが、妨害したつもりはない」
と容疑を一部、否認しています。
威力業務妨害罪は3年以下の懲役、または50万円の罰金が科せられます。
大澤孝征弁護士:
「そう軽い罪ではない。
『列車を妨害するつもりはなかった』と言っても、それは通用しない話。
5分間遅れるということは、かなり、場合によっては大きな影響を及ぼすことがある。
乗車している人にとっては、そのこと自体が大きな問題になることもあり得る」
被害を受けた小田急電鉄は、取材に対して「極めて遺憾、お客様の安全に関わるので、このような危険な行為はやめてほしい」とコメント。
一方、東急電鉄の担当者は「今後の警察の捜査に全面的に協力して参ります」と答えました。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000275095.html
(ブログ者コメント)
〇1951年の桜木町電車事故は、以下のようなものだった。
(失敗知識データベースより引用)
京浜東北線桜木町駅で、垂れた架線にモハ63が接触、ショートしたことから火災が発生し、逃げ場を失った乗客106名が焼死、92名が重軽傷という大惨事を起こした。
架線工事のミスが火災発生の直接の原因であったが、 多くの死傷者が出たのは、運転士が事故発生と同時にパンタグラフを下ろしてしまったため、自動扉が開かず、また窓が中段の開かない3段窓で乗客が脱出できなかったためである。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000603.html
〇外から操作できるコックがあるとは知らなかった。
テレビ朝日のイラストで画像をボカしてある、あの辺にあるのかもしれない。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。