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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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202233040分にYAHOOニュース(Merkmal)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

【製造現場が抱える葛藤とは】

ある自動車メーカーに取材へ行ったときのことだ。
事務棟内を会議室に向かって案内してくれていた担当者が言った。
「階段では、必ず手すりを持ってください」  

驚く私に、担当者は困ったような笑みを浮かべた。
「安全のため、規則で決まっていますので」  

階段昇降の際の転倒、および転落を防ぐため、階段では手すりを持って昇り降りするのが規則なのだという。  

確かに、階段という場所は日常の中でも意外な危険がひそむ場所だ。

私自身、子どもの頃に階段から落ちて痛い思いをした経験もある。

階段では安全に気を付けるべきなのは、間違いない。  

だがしかし、ここは企業のオフィスである。
出入りするのは大人だけだ。  

それなのに「階段では手すりを持つ」という規則が課され、さらに昼休みなど人の行き来の増える時間には、安全担当者が、皆が手すりを持っているか監視に立つのだという。  

自動車メーカーという、いわば日本の中でも優秀な人材が集まる場所で、これほど“過保護”な光景が繰り広げられているとは、実に驚きである。

 

【過保護な細やかさは公正さの証】

実は、このような話は、決してめずらしい話ではない。  

ある自動車関係エンジニアは言う。
「カッターの使用が禁止されているため、取引先から受け取った荷物を開けるのが大変だ」  

また他の重工関係技術者もこう話す。
「社内にある池への立ち入りが禁止された」  

日本の技術を引っ張る大企業が、まるで子供を相手にしているかのような規則を次々と社員に課しているのである。  

なぜこのようなことが起こるかというと、実はすべて労働災害防止のために行われているのだ。  

労働災害(労災)とは、仕事に関連した作業が原因で発生したケガや病気、死亡などを意味する。  

労災は全て、労働監督基準署に必ず報告されなければいけない。

そして会社は、必要な治療費などを保障しなければいけない。  

つまり、会議室を移動するために歩いていた階段で転んで足首をねんざしたのも、事務所でダンボールを開けるために使ったカッターで手を切ったのも、さらには休憩中に散歩がてら社内の池の飛び石を渡っていたら転んで頭を打ったのも、全て労働災害となり、報告の義務が発生するのだ。

 

【背景にある「労災かくし」】

なぜ、そのような小さなことや、明らかな不注意からくるものまで、きちんと報告しなければいけないのだろうか。  

その理由は「労災かくし」にある。  

労災かくしとは、本来は労災として対応されなければならない事例が、報告や保障されないものだ。

労災かくしが発生すると、今後の労災発生を防止するための対策が取られなかったり、本来ならば被災者が受け取れるはずだった保障や賠償が受けられなかったりする。  

もしも労災が「小さなケガだから」や「不注意が原因だから」で報告の必要がなくなれば、本来ならば報告が必要な事例についても、無理やり「うっかりからくる、ちょっとしたケガ」にさせられるケースが必ず出てくるだろう。  

だから労災は、どのようなものでも、報告が義務づけられているのである。

 

【小さな事故への対応が重大事故の防止につながる】

当たり前だが、労災が多いと企業の評判は落ちる。

事故などの危険が多い職場は、働き手の確保も難しくなる。

また、労災による治療費の負担や賠償など、企業への負担も大きい。  

そのため、企業は労災をなくそうと必死になる。

自動車業界をはじめ、製造現場では「ゼロ災でいこう」、つまり労災をゼロにしようと言われる。

つまり、階段で転ぶとかカッターで手を切るようなものでも、再発防止のための対策が取られるようになるのである。  

また製造業の現場では「ハインリッヒの法則」という考え方もよく使われる。

1件の重大な事故が起こるとき、それまでに29件の小さな事故があり、300件の事故に至らないまでも、ちょっとヒヤッとした出来事があるというのである。  

そして1件の重大な事故を防止するためには、29件の小さな事故からなくす。
そのためには300件のヒヤッとした出来事にきちんと対策をとるという考え方だ。  

階段に例えるならば、転落して死亡するケースは1件でも、転んですねを打ったりねんざするような事故が29件あり、転倒しなくてもよろめいたり、つまづいたりするケースが300件ある。  

つまり、死亡事故を起こさないようにするためには、そもそも階段でよろめいたり、つまづいたりするケースをなくさなければならないのだ。

階段で転んだとかカッターで手を切るような小さなケガでも、きちんと対策を行い原因を取り除くことが、重大な事故の防止につながる。  

こうして冒頭のような「階段では手すりを持つ」というルールが作られるのだ。

 

【正解の見えない安全と過保護の対立】

このような理由から、企業は小さな事故やケガにも真剣に対応せざるを得ない。

だがしかし、その結果として“過保護”なルールを課している。  

現場のジレンマは社員の声から聞かれるような不便さや社員のモチベーション低下だけにはとどまらない。

いちいち再発防止のための会議や、情報共有のミーティング、社内教育が行われ、それに伴うコストも発生する。  

単純な計算だが、時給1000円で働くスタッフを1000人、教育のために30分拘束すれば、そのコストは50万円になる。

自動車メーカーのような巨大な企業であれば、こんな軽い数字で済むわけもない。  

人は小さなミスを完全になくすことはできない。

全てを完璧に対策するのは不可能で、やればやるほど管理のためのコストもかさんでいく。  

労災防止のための取り組みと、それに足下を取られて動きにくくなる現場。

折り合いがつく日は来るのだろうか。

石川玲子(工業系エンジニアライター)

https://news.yahoo.co.jp/articles/76f3df4078f40206bbc69dec301b8289c3b632ad

 

(ブログ者コメント)

しばしば聞く話しだが、よくまとめられている記事だと感じたので紹介する。

 

 

 

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自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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