2023年5月7日1時57分にYAHOOニュース(ワールドジェットスポーツマガジン)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
【ボートから落水した釣り人、自動膨張式の救命胴衣が膨らまずに死亡】
今月5日、兵庫県明石市松江の沖合約3キロで、プレジャーボートを操船していた姫路市の70歳代男性が波に揺られて海中に落水。
約40分後に、通報を受けた神戸海上保安部に救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
男性は「自動膨張式ライフジャケット」を着用していたが、ライフジャケットが膨らまなかったという。
この事故について、本誌編集部が海上保安部に「ライフベストが膨らまない事故は、他にもあるのか?」と質問をしたところ、「統計的な数字に関して、即答は出来ない」との答えだった。
【ライフジャケットの形状は主に2種類】
ライフジャケットにもいろいろ種類があるが、代表的な形状は、浮力体に発泡プラスチックなどを使っている「固型式」と、浮力体として炭酸ガスなどを使用する「膨脹式」の2種類だ。
今回の事故で着用していたのは、「膨張式のライフジャケット」である。
「固型式」は、もともと浮力体がライフジャケットに入っているので、着ているだけで浮力が得られる。
しかし、浮力体が厚いので着用するとかさばるし、折りたためないので収納時もかさばる。
10人定員のボートなら、10着分の収納スペースが必要になる。
「膨張式」は中にボンベが入っていて、作動すると内蔵の気密袋にガスが充填され膨らむ。
膨張方法としては、水に浸かると自動的に膨脹する「自動式」と、紐を引くことで膨脹する「手動式」がある。
ジャケット自体が薄くて動きやすく、コンパクトでかさばらないのが特徴だ。
【「自動膨張式ライフジャケット」の誤解・メーカーは“100%自動で膨らむ”という保証をしていない】
自動膨張式ライフジャケットの"自動膨張機能"は、あくまでも補助装置とされている。
今回の事故のように自動で膨らまなかった場合は、手動式と同じようにヒモを引かないと膨らまない。
メーカーは「落水時に必ず膨張する」保証はしていないのだ。
ライフジャケットは法定備品なので、船舶検査時に膨張式ライフジャケットも検査対象となる。
検査の一例として、ボンベの重量を測定したり、口で膨らませて漏れがないか確認するが、膨張式は一度膨らませてしまうとボンベを交換しなければならない。
そのため、実際に水に浸けて“自動で膨らむかどうか”の検査は行っていない。
つまり、自分の持っている「自動膨張式ライフジャケット」が本当に膨らむかどうかは、実は誰にも分からない。
現在、神戸海上保安部が死亡した男性のライフジャケットを調査中である。
しかし、メーカー側からは「自動で膨らむ保証はない」という旨があるので、責任を求めることは難しそうだ。
【「どのライフジャケットを選ぶか」。それも自己責任である】
浮力体の入っている「固型式ライフジャケット」と、ボンベで膨らむ「膨張式ライフジャケット」、どちらを選ぶかは自己責任だ。
もし、船から落水したときに衝撃で気を失ったら、ヒモを引っ張れない。
落水してパニックになった子供に「自分でヒモを引け」といっても、それは無理な話だ。
「自動膨張式ライフジャケット」がキチンと機能してくれればいいが、今回の事故のようなケースもあるはずだ。
「自動膨張機能」は、“補助装置”という時点で、「自動で膨らまないことがあるかもしれない」と認識すべきである。
それを知っていると知らないのとでは、万が一のときの心構えが変わってくる。
メーカー側も、1年に1回は定期点検を依頼してほしいと呼びかけている。
これから本格的なマリンシーズンを迎えるにあたり、ライフジャケットは、「自分の命を預けるもの」という認識の上で、どのタイプを選ぶかを決めてほしい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/128d15367c392690ebf9141e695bfb2fb451e300
5月7日19時10分に同じYAHOOニュース(ワールドジェットスポーツマガジン)から、自動膨張式は浸水感知まで時間がかかることがあるので落水時は手動で作動させるように説明しているメーカーもあるなど、下記趣旨の補足的続編記事がネット配信されていた。
海上保安部に質問をした際、コメントのなかに、『自動で膨らまない“かもしれない”救命具の名称として「自動」を使うのはいかがなものか』とあったが、私もそう思う。
それより何より、この『自動で膨らまないことがある』という事実を"知ってもらう"ことが最優先事項だと思っている。
【「自動膨張式ライフジャケット」が膨らまないことでメーカーに責任を問うても、「記載してある」と言われる可能性が高い!】
「自動膨張式ライフジャケット」を非難するつもりはない。
国民の多くが「自動膨張式ライフジャケット」は自動で"膨らむ"と思っている、その事実に"警鐘"を鳴らしたい。
そして、膨らまないときは「引き手を引っ張る」ことを知って欲しい。
事実、今回の事故では自動で"膨らまず"に人が亡くなっているからだ。
【「自動で“膨らまない”ことがある」ことを知っておくのが大事】
通常、膨張式のライフジャケットは「引き手を引っ張る」ことで付属のボンベからガスを放出させ、浮力体を膨張させる仕組みになっている。
自動膨張式の装置には"水を感知する機構"が備わっていて、落水あるいは水が入ってきたことを自動で検知したときに、付属のボンベからガスを放出させ、浮力体を膨張させる仕組みなのだ。
手動式の「引き手を引っ張る」のと同じ構造である。
『落水時の姿勢や落ちた状況により、どうしても浸水するまでの時間にバラつきがでます。自動膨張機能はあくまでも補助的な機能とし、安全を素早く確保する意味で、落水時は手動にて引き手を引いて膨張させてください』と説明しているメーカーもある。
自動で膨らむのはあくまで“補助”的なものであって、それが絶対に膨らむというものではない。
メーカー側は、最初から「自動膨張を補助する機能が付いています」と書いている。
【ボンベキットの交換時期は?】
ボンベ自体に明確な使用期限はないそうだが、膨脹式救命胴衣に使用されている「カートリッジ」には、使用期限がある。
特に、水分を感知する部分は特殊な和紙でできている。
1年も経つと、この和紙がカラカラに乾いてしまうので、水分を感知しにくくなるそうだ。
最悪の場合、ライフジャケットが膨脹するまで30秒以上かかってしまうケースもある。
一度膨らませてしまったり、カートリッジの使用期限が切れた膨張式ライフジャケットは、ボンベキットを取り替えれば何度でも再使用することができる。
付いているボンベの種類やメーカーによっても変わってくるが、交換を依頼しても5000円前後で新しいボンベキットにしてもらえる。
【どこのメーカーか分からない「激安ライフジャケット」に、自分の命を任せられるかは「自己責任」である】
本誌は水上バイクの専門誌なので、常日ごろから使用しているのは、国の認可を受けた“桜マーク”の付いた「TYPE D」や「TYPE F」と呼ばれる"固型式のライフジャケット"である。
浮力体に発泡プラスチックなどを使っているので厚みもあり、耐衝撃性や保温性も兼ね備えている。
このタイプは、水上バイクで使用するにはベストだ。
難点と言えば、とにかくかさばる。
折りたたむこともできないので収納にも困る。
そのため、一般的なボート遊びでは、かさばらず手軽に着れる「膨張式のライフジャケット」が人気なのも理解できる。
繰り返しになるが、「自動膨張機能」は、“補助装置”という時点で、「自動で"膨らまない"ことが"あるかも"しれない」ということを絶対に覚えておいてほしい。
膨張式のライフジャケットが悪いと言う気は全くない。
それを知っていると知らないのとでは、万が一のときの心構えが変わってくる。
これから本格的なマリンシーズンを迎えるにあたり、ライフジャケットは、「自分の命を預けるもの」という認識の上で、どのタイプを選ぶかを決めてほしい。
名の知れたメーカーでも自動で膨らんでくれない恐れがあるというのに、どこのメーカーかも分からない激安品の膨張式ライフジャケットに、自分の命を預ける勇気は私にはない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bee283035cf1dafe853c321f709b7c7351dbc4cf
5月8日19時47分にYAHOOニュース(ワールドジェットスポーツマガジン)からは、ライフベストは手動式だったが引き手を引いていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この事故について本日、管轄の海上保安部より、「調査の結果、被害者の着用していたライフベストは“自動膨張式”ではなく、“手動膨張式”であった」と本誌に連絡があった。
さらに男性は、「ライフジャケットの“引き手を引いていなかった”」という答えだった。
死亡した男性は、恐らく海に投げ出された時点で、意識がなかったのだろう。
「引き手を引っ張る」ことが出来なければ膨らまないので、せっかくライフジャケットを着用していても意味がないことになってしまう。
手動式は、落水時に「引き手を引っ張って」"膨らませ"なければならない!
このコトを肝に銘じておいて欲しい。
・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/29a7fbedf157257eacfe3b2006214b1dc0391727
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。