2018年1月30日22時0分に日本経済新聞電子版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2017年の有効求人倍率が44年ぶりの高さとなる中、企業の品質管理を取り仕切る専門家が、とりわけ不足している。
検査データ改ざんなど不祥事が相次ぎ、各社が管理体制の強化を急いで需要が増える一方、団塊世代の引退などで人材が枯渇。
長年の経験が問われる分野だけに、自前の育成にも時間がかかる。
日本のものづくりの信頼維持の足かせになりかねない。
厚労省が30日発表した17年12月の有効求人倍率をみると、専門家が軒並み不足している現状が浮かび上がった。
製品検査の担当者のうち、金属は2.37倍、金属を除くは2.79倍、機械検査も2.12倍で、いずれも、さかのぼって比較できる12年3月の調査以来、最高だ。
人材の奪い合いが加速し、転職市場も逼迫している。
リクルートキャリア(東京・千代田)によると、17年12月時点で、品質の管理・保証の経験者の転職求人倍率は1.35倍。3年前より0.31ポイント上がった。
各年12月で比べると、調べ始めた08年以降で最高となった。
自動車、家電などメーカーの需要が目立つ。
日産自動車や神戸製鋼所などで相次いだ品質管理面での不祥事が背景にあるとみられる。
技術者らの転職サイトを運営するクイックは、「特に30~40歳代の引き合いが強い」と分析。
比較的長く働ける即戦力への需要が高い。
「中途採用にも、さらに力を入れていきたい」。
アイリスオーヤマ(仙台市)次期社長の大山晃弘取締役は取材で、不足が目立つ品質管理にあたる人材などの確保を課題にあげた。
日本のメーカーは出荷前の商品検査で不良品を取り除き、市場に出回った後で不備が見つかれば、補償などで迅速に対応してきた。
環境規制の「ISO14001」などの取得にも積極的。
品質管理のプロの人手不足は、そうしたものづくりの土台を揺さぶる。
慢性的な人手不足を招きかねない構造問題も浮かんでくる。
そのひとつは、シニア層の定年退職だ。
品質管理運動を推進する日本科学技術連盟は、「高度成長期に現場でシステムや作業工程を築いた今の60歳代には専門家が多い」と話す。
団塊世代は17年から70歳に突入。
再雇用で働く人も多いが、70歳代の労働参加率は、それまでと比べて一気に下がる。
もう一つは、大学研究の停滞だ。
品質管理に詳しい文教大学の長田洋教授は、「国立大の工学部で品質管理全般を学べる研究体制が定着しなかった」と話す。
1990年代から生産拠点が海外に移り、企業や学生の間で学問として品質管理を追求する動きが乏しくなった。
ベテランが退き、若い即戦力が少ないなら、企業が自前で育てるしかない。
トヨタ自動車は、品質管理の人材を育てる多くのプログラムを持つ。
自動車の完成検査では、学科講習や実技訓練で指導したうえで、有資格者と検査工程に入る。
そこで習熟して、初めて一人前の戦力として認める。
ただ、こうした自社育成システムを構築した企業は、ごく一部。
日科技連の調査でも、15年度の品質管理教育への投資額が「売上高の0.01%未満にとどまる」と答えた企業が全体の37%に達した。
06年度調査の21.4%から大きく上昇した。
長田教授は、「品質管理部門も、AIなどによる生産性向上が不可欠。経験値の高い専門家育成を同時並行で進めるべきだ」と語る。
JR東日本は20年春までに、山手線の新型車両「E235系」を全面導入する。
乗客を乗せながら、車両設備やレールの状態をデータとして収集できる。
それを解析し、故障の削減に生かす。
一方で、定年退職後に再雇用した社員の待遇を改める。
ベテランを引き留め、若手への技術やノウハウ継承を促す。
人手不足の状態を放置すれば、日本のものづくりの信頼は失墜する。
出典
『品質管理プロが足りない 企業不祥事で脚光?』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26324570Q8A130C1EE8000/?n_cid=NMAIL007
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。