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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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201912211718分に読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

 

札幌市保健所は20日、札幌市南区のイタリア料理店で食事をした30~70歳代の男女6人が、発熱や発疹などの症状を起こしたと発表した。

 

患者の血清から寄生虫の旋毛虫の抗体が検出されたことなどから、食中毒と断定し、食品衛生法に基づき、同店を3日間の営業停止処分にした。

 

加熱が不十分だったクマ肉料理が原因とみられる。

 

旋毛虫による食中毒は、札幌市内では1979年以来40年ぶり。

 

市保健所によると、同店で11月10日に食事をした男女8人のうち6人が、11月下旬から今月上旬にかけて、発疹などの症状を訴えた。

うち1人が一時入院したが、全員が快方に向かっている。

 

クマ肉は、同店の知人が4年前に入手した冷凍肉だった。

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20191221-OYT1T50110/

 

 

12202124分に北海道新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。

 

札幌市保健所は20日、札幌市南区のイタリア料理店「J」(澄川3の2)で、クマ肉のローストを食べた6人が、旋毛虫による食中毒を発症したと発表した。

市保健所は同店を同日から3日間の営業停止処分にした。

 

市によると、旋毛虫による食中毒が市内で発生したのは40年ぶり。

 

市保健所によると、旋毛虫は動物などに寄生する線虫の一種で、体長は雌で約3~4ミリ。

旋毛虫が潜む肉を人が食べて1~2週間たつと、腹痛、発熱などの症状が起き、重症の場合は死亡することもある。

 

国内では、食用家畜から旋毛虫が検出された例はないという。

 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/376895/

 

 

 

(ブログ者コメント)

 

旋毛虫による食中毒は201611月に水戸市でも起きている。(本ブログでも紹介スミ)

 

一方、今回の事例を機に関連情報を調べ直したところ、以下の詳細な情報も見つかった。

 

2018115130分 日本経済新聞)

 

クマの肉を食べたことで旋毛虫症を発症した事例が、相次いで3例発生したことが報告された。

 

いずれも同じ1頭のクマの肉が原因食品で、うち2例はローストして食べ、1例はカツにして食べていた。

 

市立札幌病院感染症内科の児玉文宏氏らが、第67回日本感染症学会東日本地方会学術集会(2018102426日、東京)で報告した。

 

同氏らは、野生鳥獣肉(ジビエ)ブームの中、旋毛虫症などの感染症リスクが高まっているとし、一般消費者へのさらなる啓蒙が必要と指摘している。

 

症例1の経緯はこうだ。

 

特記すべき既往歴のない北海道在住の40歳代男性で、2018年春にハンターから譲渡された狩猟直後のクマ肉を1週間程度、冷蔵保存。

その後、自宅でロースト調理し食べたという。

 

喫食から22日後に発熱。

その後、かゆみを伴う全身発疹が現れ、咳、呼吸困難感、口唇腫脹、四肢筋肉痛も出現した。

 

近医を受診し、アレルギーとして治療後、いったん呼吸困難感や発疹は改善したが、その後、かゆみが悪化したため市立札幌病院を受診した。

 

白血球の一種である好酸球数が多く、また患者からローストしたクマ肉を食べたことが聴取できていたことから、旋毛虫感染症を疑い、治療を開始した。

 

その結果、次第に改善し、クマ肉を食べてから10週後に完全に消失した。

 

治療開始と並行して寄生虫検査も行ったが、当初は抗旋毛虫の抗体価が低く、喫食37日後に陽性となった。

 

また、喫食翌日から冷凍保存されていた同じ個体のクマ肉から旋毛虫が検出され、旋毛虫症と確定した。

 

患者からの聞き取りで、食べたクマ肉は塊ごと約10分間表面を焼き、その後余熱で加熱していた。

表面以外の内部の肉は「赤いまま」だったことが分かっている。

 

症例230歳代女性で、症例1と同じ日に、同じローストしたクマ肉を食べていた。

 

喫食20日後に症例1とほぼ同様の症状、所見を呈した。

 

同じような経過をたどり、症例1と同様の治療により、症状が消失した。

 

クマ肉の喫食が原因で旋毛虫症を発症した事例が2例と続いたことから、同じクマ肉を食べた人を追跡調査したところ、症例2の母(症例3)が、抗旋毛虫抗体価が陽性となった。

 

症例3は、生のクマ肉をカツにして食べていた。

 

1カ月ほどして発熱、四肢・体幹筋肉痛、発疹が出現したが、その後、数日で症状は自然消失していた。

治療はしていない。 

 

児玉氏は、2016年に茨城県で旋毛虫による集団食中毒が発生したことを受けて、厚生労働省が「クマ肉による旋毛虫(トリヒナ)食中毒事案について」を発信し、改めて「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」(厚労省、2014年)の順守を求めたことに言及。

 

しかし、今回、3例の旋毛虫症例が相次いで発生した背景には、「シカ肉と同様に、ローストすればクマ肉も安全との誤解があった」と指摘。

 

ジビエ食による感染症リスクの認識やその予防法が広まっていない可能性があるとし、さらなる啓蒙が必要とまとめた。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37361080V01C18A1000000/

 

 

文中、「「シカ肉と同様に、ローストすればクマ肉も安全との誤解があった」との表現がある。

 

その理由について調べたところ、水戸市の事例が詳述された文献に、以下の記述があった。

思うに、旋毛虫はシカには寄生していないのかもしれない。

 

12ページ)

. 旋毛虫による食中毒

8. 国内における感染動物

わが国では家畜から旋毛虫が検出された記録はないが、クマ(ツキノワグマおよびヒグマ)以外の野生動物からも、旋毛虫は検出されている。

動物種および検出された地域は、キツネ(北海道)、タヌキ(北海道、山形県)、アライグマ(北海道)である 5, 9, 13

また、イヌ(北海道)からも旋毛虫が検出されている 5

しかし、ジビエとして積極的な利用が図られつつあるイノシシ 14およびシカ 15の肉からは、現時点で検出報告はない。

 

ただ、シカには旋毛虫以外の寄生虫が寄生しているとのこと。

やはり、十分に加熱するに越したことはなさそうだ。

 

14ページ)

. 肺吸虫による食中毒

肺吸虫の幼若虫の寄生率・寄生数は、シカよりもイノシシの方が相当に高く、肺吸虫の感染源としてイノシシには、引き続き十分な注意が必要である24, 25

しかし、シカ肉もイノシシ肉と同様に、人体肺吸虫症の感染源となる可能性があると証明されたため、 肺吸虫感染が疑われるような症例に関しては、淡水産カニあるいはイノシシ肉だけでなく、シカ肉の喫食についても、問診する必要がある 22

 

 

『野生鳥獣肉が関わる寄生虫症 杉山広』

(モダンメディア 6422018[話題の感染症] 37

http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/2018_02/003.pdf

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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