2015年8月4日21時42分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
8月4日21時31分に読売新聞から、8月5日0時27分に共同通信から、8月7日8時44分に岐阜新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
4日午後3時10分ごろ、岐阜県土岐市下石(おろし)町の自然科学研究機構「核融合科学研究所」の敷地内にある大型ヘリカル実験棟から出火、液化ヘリウム冷却装置の一部が焼け、近くで作業をしていた溶接業の栄田さん(61)が焼死し、男性(32)が首に軽いやけどを負った。
研究所によると、火災で放射性物質が漏れるなどの被害はなく、周辺への影響もないという。
警察や核融合科学研究所によると、火災が起きたのは「LHDヘリウム液化冷凍機」というマイナス269℃の冷媒をつくる、高さ約11m、直径約3.8mの円筒状の実験装置。
出火当時、現場では作業員数人がフィルター交換のため新しい配管を設置する溶接をしており、装置内のパイプに巻いてあったプラスチック製の断熱材に火が燃え移ったという。
栄田さんは、配管を交換するための溶接を担当。装置の近くに金属製の足場を組み、高さ約5mの場所で作業していたという。
作業員は出火直後、火を消し止めようとしたが、辺りに煙が充満して消火しきれず、足場の上部にいた栄田さんが逃げ遅れたという。
排煙用の窓はあるが、閉まっていた。
火事は、約1時間後に鎮火した。
溶接は、火花の散らない特殊な作業という。
施設内には、コンクリートで囲まれた放射性物質を扱うエリアが地下にあるが、発生現場とは40m以上離れていた。
研究所の金子副所長らは午後7時から会見し、「火災を起こし、ご迷惑をおかけしました。この場を借りておわびします」と謝罪した。
警察などは、5日朝から実況見分して、詳しい事故原因を調べる。
「核融合科学研究所」
核融合による発電の実現を目指し、研究に取り組む国内の拠点施設の一つ。
「ヘリオトロン」と呼ばれる日本独自の核融合方式に基づき、1997年に完成した大型ヘリカル装置を使った高温プラズマ実験の研究プロジェクトを進めている。
2004年に大学共同利用機関として、自然科学研究機構の一研究所に再編された。
2003年1月にも、大型ヘリカル実験棟内で高周波発振器の一部が焼ける火事があった。
出典URL
http://www.asahi.com/articles/ASH845JFCH84OIPE022.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150804-OYT1T50100.html?from=ycont_top_txt
http://www.47news.jp/CN/201508/CN2015080401001934.html
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20150807/201508070844_25458.shtml
(2015年8月22日 修正1 ;追記)
2015年8月17日18時33分にNHK岐阜から、溶接の熱が断熱材に伝わったことが原因とみられるという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
(新情報に基づき、タイトルも修正した)
研究所は17日、火災のあった施設の内部を報道陣に公開した。
公開されたのは、この実験棟にある気体のヘリウムガスを冷却し液体に変える装置で、研究所の説明によると、火災は、ヘリウムを流すパイプの溶接中に、溶接の熱がパイプの周りの断熱材に何らかの原因で伝わって起きたとみられるという。
断熱材は樹脂製で、ほとんど焼け落ちて金属製のパイプがむき出しになっていた。
警察も詳しい原因を調べていて、研究所では警察の捜査が終了しだい、近隣の住民を対象に火災の詳細について説明することにしている。
出典URL
http://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/3084148391.html?t=1439844428790
(2015年9月28日 修正2 ;追記)
2015年9月26日付で朝日新聞名古屋版(聞蔵)から、溶けたステンレス塊が落下したことなどが原因だったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
(新情報に基づき、タイトルも修正した)
研究所は、25日、「安全対策が不十分な点もあった」とする最終報告書を発表した。
取材に対し、作業を担当した業者への安全指導が不十分だったことも認めた。
報告書によると、出火原因は、実験装置を冷やす冷媒を作るためのヘリウム液化冷凍機の配管を冷凍機メーカーの作業員が溶接中、溶けたステンレスの塊が、別の配管に巻き付けられていた可燃物の断熱材に引火したという。
周囲に防炎シートがかかっていたが、「溶けたステンレスの塊を防ぎきれなかった」とし、再発防止のため、溶接の際は近くの可燃物を撤去する、と記した。
作業を請け負う業者に対し、作業員に休憩をとらせ、消火器の準備もするよう、研究所が指導を徹底する方針も示した。
研究所は、取材に対し、今回の溶接作業で、火災を防ぐための指導が冷凍機メーカーに対し不十分だったと認めた。
(ブログ者コメント)
○最終報告書(全17ページ)の5ページに、直接原因が以下のように記されている。
出火の原因は、溶接を実施する配管周辺の断熱材を除去し、周囲を防炎シートで養生して、火花がほとんど出ないTIG溶接による配管溶接作業を実施していたが、火花 以上の大きさの溶融したステンレスの塊が発生・落下し、溶接作業時の養生に使用していた防炎シートでは防ぎきれず、コールドボックス内の断熱材が燃え上がったこ とによるものである。
なお、溶接時に一点に集中して放電が継続されることにより、ステンレスの溶解が 起こることは推測できるが、なぜ放電が集中継続したかは不明である。
○一方、2ページと4ページの記述によれば、現場に設置されていた消火器で初期消火が試みられたようだが、6ページには対策として「消火機器準備の強化」が挙げられている。
何か反省すべき点があったのかもしれないが、報告書には何も記されていない。
http://www.nifs.ac.jp/press/150925.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。