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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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(1/2から続く)

 

2020881221分にYAHOOニュース(WIRED)からは、硝酸アンモニウム保管上の絶対禁止事項が2つとも守られていなかったなど、下記趣旨の解説記事がネット配信されていた。

 

レバノンの首都ベイルートで84日午後6時ごろ(現地時間)に発生した倉庫火災は大爆発を引き起こし、超音速の爆風がベイルートの街全体を駆け抜けた。

 

映像を見ると、港に近い倉庫で発生した火災に続いて大きな白いキノコ雲が勢いよく立ち上がり、爆発の衝撃波で通りが焼き焦げ、建物は倒壊し、車や人が吹き飛ばされ、窓ガラスが砕け散った。

 

この爆風は10km先まで及んでいる。

 

記事の公開時点で、少なくとも135人の死亡が確認され、4000人以上が負傷している。

なぜこのような爆発が起きたのか。

そして、なぜこれほどの大爆発となったのだろうか。

 

 

【燃料と酸化剤の両方の特性】

 

今回の大規模な爆発の原因となったのは硝酸アンモニウムだと考えられている。

 

硝酸アンモニウムは、農業用肥料や鉱山で使われる爆薬の原料として使われることが多い化学物質だ。

 

レバノンのミシェル・アウン大統領によると、爆発現場の港湾倉庫には2750トンの硝酸アンモニウムが、安全対策が不十分なまま、6年にわたり保管されていた。

 

爆発の威力は凄まじく、200km離れたキプロス島でも感じられたほどだった。

 

硝酸アンモニウムへの引火の原因はまだ不明だが、港湾倉庫の火災が硝酸アンモニウムに引火して爆発を引き起こした可能性が最も高い。

 

硝酸アンモニウムは比較的安定した化合物だが、170℃で融解する。

 

ベイルートで大量の硝酸アンモニウムに引火し、続いて起きた化学反応で大きな火の玉が発生し、大爆発を引き起こしたようだ。

 

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの化学教授であるアンジェラ・セッラは、硝酸アンモニウムの爆発性は、その化学成分に起因するのだと指摘する。

 

すなわち、アンモニウムは水素に似た性質があり、硝酸塩は酸素に似た性質をもつ。

「燃料と酸化剤の両方があるようなものです」と、セッラは説明する。

 

酸化剤は炎に酸素を送り込み、その勢いを増す。

「燃料と酸化剤をまとめて点火源と組み合わせれば、大きな問題になることは確実でしょうね」

 

 

【超音速の衝撃波が都市を襲った】

 

硝酸アンモニウムの爆発は、空気を急激に圧縮する。

 

その結果、港湾倉庫から超音速の衝撃波が波紋のように広がった。

 

衝撃波の前方は非常に高温だが、後方の温度は低く、ソニックブームの周りの空気は移動・圧縮される。

「シャンパンボトルからコルクが勢いよく飛び出すと、ボトルの中に水蒸気が凝縮した霧が発生する現象と少し似ています。

それとまったく同じプロセスで、非常に急激に冷却されるのです」

と、セッラは説明する。

 

今回の爆発は核爆発以外で近年最大級の規模であると、シェフィールド大学の土木工学教授であるアンディ・ティアスは語る。

 

ティアスとシェフィールド大学の衝撃・衝突力学研究グループの研究チームは、ベイルートの爆発を記録した多数の動画と画像を分析し、爆発を引き起こした爆薬の量を推定した。

 

この結果、爆発はトリニトロトルエン(TNT)火薬換算で約10001500トンに相当するとみられている。

広島に投下された原爆の10分の1の威力だ。

 

しかし、なぜ、これほどの大爆発になったのだろうか。

それには、複数の要因が組み合わさっている。

 

要因のひとつは硝酸アンモニウムの量の多さ、もうひとつは不適切に港湾倉庫に保管されていた期間だ。

 

 

【「絶対禁止」のルールが守られず】

 

ベイルートでの爆発の原因となった硝酸アンモニウムの量それ自体は、決して珍しいものではない。

肥料をつくるために同程度の量の硝酸アンモニウムが世界中に出荷されている。

 

だが、硝酸アンモニウムがこれほど大量に1カ所に保管されることは、あまりない。

まさにベイルートで目撃された爆発の原因となったものだ。

 

「業界の安全プロセスに関する基本的な知識をもっている人なら誰でも知っている最も重要なルールは、大量の危険物を1カ所に保管しないことです。特に密閉された環境では厳禁です」と、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの化学工学教授であるハロウン・マゲレフテは指摘する。

 

「ふたつ目の絶対禁止事項は、人口密集地域近辺での保管です」

 

硝酸アンモニウムの安全な保管について助言する英国企業Haztech Consultantsのディレクターのスティーヴ・カーショウによると、硝酸アンモニウムは自体は比較的安定した化合物だが、長期間大量に保管したり、異物混入や汚染が起きたりすると、複合して大きな塊になる。

 

 

【不適切な保管で硝酸アンモニウムが固まった?】

 

時間経過とともに湿気を吸って固まった硝酸アンモニウムは、爆発のリスクが大きくなると同時に、爆発の激しさも増す。

 

そしてベイルートの倉庫で起きたように、固まった硝酸アンモニウムに引火すると、大惨事をもたらす可能性がある。

 

「大量の硝酸アンモニウムがぎっしり詰め込まれて不適切に保管されていたことで、爆発が起きたのです」と、カーショウは言う。

 

さらに、通常なら数百トンほどの硝酸アンモニウムを小さな容器に隔離保管し、その際には硝酸アンモニウムに引火するような可燃性物質を周囲に置くことはないと、カーショウは指摘する。

 

量が少なければ、予期せぬ事態が起きても小さな爆発で済む。

 

「衝撃と爆発で、保管されていた膨大な量の硝酸アンモニウムすべてが、ほぼ瞬時に爆発しました」

 

複数のメディアの報道によると、13年に2750トンの硝酸アンモニウムを積んだ船舶がベイルートに到着したが、船舶が航海に不適切と判断されたか、あるいは船舶所有者がベイルート港への料金支払いを拒否したことで、14年に出航不許可となった。

のちに硝酸アンモニウムが押収され、倉庫に保管されたという。

 

すでに6か月前には、この硝酸アンモニウムを移動しないとベイルート全体が吹き飛ばされることになると複数の検査官が警告していたと、『ガーディアン』紙は伝えている。

 

「時間の問題だったとわたしは思います」と、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのマゲレフテは言う。

「絶対に起きてはならないことが起きてしまったのです」

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/e279afbb9226b85262c95ac7ce4c472f39bdd003 

 

 

 

(2020年8月12日 修正1 ;追記)

 

2020811743分にYAHOOニュース(ロイター)から、大量保管の危険性は1月に司法当局から指摘され、安全保障当局からも720日付の私信で大統領と首相宛に警告されていたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

 

レバノンの首都ベイルートで4日発生した大爆発事故の原因とされる、港に保管されていた2750トンの硝酸アンモニウムについて、アウン大統領やディアブ首相は、安全保障当局から事前に危険性を警告されていた。

 

ロイターが、当局による報告書や複数の安全保障担当高官の取材を通じて、この事実を突き止めた。

 

今回初めて存在が明らかになった報告書は、国家安全保障局が事故に至る経緯をまとめたもので、その中には、7月20日付けで大統領と首相宛てに私信が送られたことが記されている。

 

報告書で私信の具体的な内容には言及されていないものの、ある安全保障担当高官はロイターに対して、硝酸アンモニウムについて直ちに安全対策を講じるべきだと促した1月の司法当局による調査結果が要約されていたと説明した。

 

この私信作成に関与していた同高官は、「硝酸アンモニウムには危険性があり、盗まれた場合は、テロ攻撃に利用されかねなかった」と述べ、爆発すればベイルートが壊滅する恐れがあると、自身が政府首脳部に訴えていたと付け加えた。

 

アウン大統領は先週、事故前に硝酸アンモニウムがあることは知っていたと認め、直属機関の最高国防評議会の事務局長に「必要な措置を講じる」よう指示したと語った。

 

ただ、こうした直接的な警告を受けながら、結果として適切な対応を怠ったことが分かり、汚職や経済危機などを含めた政府に対する国民の怒りがさらに強まりそうだ。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/50b75e24605501f51a11f57bfde5532af0159831

 

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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