2020年8月12日5時46分にYAHOOニュース(東洋経済オンライン)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
岡山県の海運会社・N汽船(岡山県笠岡市)が所有し、商船三井が運航する大型貨物船「WAKASHIO」(載貨重量トンは約20万3000トン)がインド洋のモーリシャス沖で座礁し、1000トン以上の重油が周辺の海域に流出する事故が起きていたことが明らかになった。
事故現場周辺のマングローブ林はラムサール条約で国際保護湿地に指定されており、世界的にも希少なサンゴが群生する海洋公園にも近い。
モーリシャス政府は8月7日、環境危機事態を宣言し、フランスのマクロン大統領が翌8日、軍用機の派遣を含む支援を表明した。
日本政府も8月10日、油漏防止の専門家チームを現地に向けて出発させた。
【モーリシャスの観光、水産業に大打撃】
9日に記者会見したN汽船と商船三井によると、7月4日に中国の港を出港してシンガポール経由でブラジルに向かう途中だった大型貨物船WAKASHIOがモーリシャス島沖南東0.9マイルで座礁したのが7月25日のことだった。
その後、船内への浸水が進み、8月6日に船体に亀裂が生じて、燃料油の重油が漏れ始めた。
船内のタンクにあった約3800トンの重油のうち、破損したタンクから漏れたのは推定1000トン以上。
うち約460トンを手作業で回収したという。
一方、船内には重油約1600トンと軽油約200トンが残っている。
深刻なのが、モーリシャスの経済や生態系への影響だ。
同国の人口は約126万人(2018年、世界銀行調べ)。
豊かな自然環境を売りにした観光業が主力産業だが、今回の重油流出事故で壊滅的な被害は免れない。
水産業への影響も深刻化しそうだ。
注目されるのが、事故原因の究明や賠償の行方だ。
商船三井の加藤・常務執行役員によれば、当初の航海計画ではモーリシャス島の南側の10~20マイル沖合を航行すべきところを、「波が高く、しけを避けようとして北にずれていった」という。
商船三井は2007年に社内に安全運航支援センターを開設。
インマルサット衛星を利用し、用船を含め、同社が運航するすべての船舶の運航状況を24時間体制で監視している。
しかし、加藤氏は「データの入手頻度は数時間おきにとどまり、約800隻の運航船舶すべてについて、どこへ走って行こうとしているか把握できているわけではない」と説明する。
同社は安全運航支援センターによる「24時間365日の支援体制」をうたい、「(悪天候やテロなどのリスクを)リアルタイムで把握し、本船、船舶管理会社、海技グループ、運航担当者と連絡を取り合い、『船長を孤独にしない』体制を整えています」とホームページで明記している。
そのうえで同センターには「船長経験者を含む2名が常駐し、海外メディアの情報や気象情報など、船の航行に関するあらゆる情報を収集し、タイムリーに適切な情報発信を行うことにより、重大事故の発生を未然に防止するべく全力で取り組んでいます」と記述している。
今回の事故で、同センターが事故を起こした船舶とどのようなやり取りをしたのか、どこに問題や限界があったかについても検証が必要になりそうだ。
【社員を現地に派遣】
賠償の見通しも、現時点では定かではない。
船主責任保険(P&I保険)の加入義務は、船の所有者(船主)であるN汽船にある。
同社は、乗組員を手配したうえで、商船三井に船を貸し出している。
いわゆる用船契約という仕組みだ。
8月9日の記者会見でN汽船の社長は、7「本件油濁事故については、船主である当社が保険に加入している」と述べた。
そのうえで、保険でカバーできない可能性については、「どの程度の損害になるか把握できないので答えられない」とした。
一方、商船三井の小野副社長は、「当社は(保険加入の義務のない)用船社の立場だが、社会への甚大な影響に鑑みて、誠実に対応してまいりたい」と述べた。
商船三井とN汽船は8月11日、情報収集や油漏拡大防止を目的とした計8人(商船三井6人、N汽船2人)の社員を現地に向けて派遣した。
海運業界では近年、海運会社が自社で船を持たずに借りて運航する「用船」という仕組みが一般化している。
ただ、貸主である船主の中には、財務基盤が脆弱であったり、大規模事故への備えが十分でない企業もある。
今回の事故でも、被害の程度や対応の仕方によっては、船の運航契約を結んでいた商船三井や日本政府に国際社会から被害救済を求めるプレッシャーが強まることも予想される。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e0a2d5420e0d2d24824cd102d3ded8308ae7d8cb
8月13日3時53分にAFPからは、タンク外に100トン残っているものの、タンク内の燃料油は全て汲み出したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
インド洋の島国モーリシャス沖で日本の海運大手、商船三井が運航する貨物船が座礁し燃料が流出した事故で、モーリシャスのプラビン・ジャグナット首相は12日、船内のタンクからすべての燃料を回収したと明らかにした。
2度目の大規模な燃料流出は回避された。
貨物船「わかしお」は先月25日、サンゴ礁の広がるモーリシャスの沖合で座礁。
2週間以上たった現在も身動きがとれない状態にあり、船体が破断する恐れも出ている。
ジャグナット首相は「燃料タンクからすべての燃料が汲み出された」と表明。
船内のタンク外の場所にはまだ約100トンの燃料が残っていると説明した。
わかしおからの燃料流出は先週に始まり、サンゴ礁やマングローブ林、保護区として指定されている湿地が汚染された。
楽園のような島国として、新婚旅行客をはじめとする観光客に人気の同国にとって、今回の事故は大きな打撃となっている。
https://www.afpbb.com/articles/-/3298880
8月14日23時19分に産経新聞からは、wifi接続のため陸地に近づいたらしいという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
地元紙は14日までに、複数の乗組員が地元警察の調べに対し、「座礁前、Wi-Fi(ワイファイ)に接続しインターネットを利用するため島の近くを航行した」と話していると報じた。
警察関係者が明らかにしたという。
一方、米誌フォーブスは航路を追跡した衛星データを基に「速度を落とさず11ノット(時速約20キロ)で島に直進していた」と伝えており、乗組員が島への接近を認識していなかった可能性を示唆。
警察は船内から航行記録を押収し、座礁した原因を慎重に調べている。
地元紙によると、事故直前、乗組員の誕生日会を開いていたとの供述もあるという。
貨物船を保有するN汽船(岡山県)が乗組員20人全員を手配していた。
出身国はインド3人、スリランカ1人、フィリピン16人で船長はインド人。
全員救助され、無事だった。
(共同)
https://www.sankei.com/affairs/news/200814/afr2008140028-n1.html
8月15日4時31分にAFPからは、船体が折れ曲がり、船倉に残っていた燃料油100トンも流出し始めたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場からはこれまでに700トンの油と260トンの汚泥やがれきが除去された。
12日、船内の燃料タンクからは燃料がすべて取り除かれ、さらなる大規模流出は免れた。
しかし同国の危機対応委員会によると、14日になり船倉に残っていた約100トンの燃料が漏出し始めた。
同委員会は、「専門家によると、この種の漏出は予期されていたもので、船体が折れ曲がったことが原因」と説明。
流出を止める防材と装置が追加配備された他、近く燃料除去用の船も投入されると述べた。
漁師の男性は同日、船の周りの「水がまた黒く染まった」と語った。
事故をめぐっては、船が座礁してから1週間にわたりほとんど対策を講じなかったとして、同国政府が批判の的になっている。
一方、わかしおを所有するN汽船の専門家チームが現地に到着したのは、事故から3週間後だった。
https://www.afpbb.com/articles/-/3299251
(ブログ者コメント)
海洋汚染もさることながら、大手海運会社の航路管理の一端を知ることができた情報としても紹介する。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。