2016年11月16日23時3分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
11月17日7時16分に中国新聞から、11月17日付で山口新聞から、11月17日付で朝日新聞山口版(聞蔵)からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
16日正午ごろ、山口県下松市下谷(くだたに)のトンネル工事現場で、作業員から「トンネル内に人が取り残されている」と119番があった。
トンネル内で作業していた男性8人と救助に入った男性1人の9人が、一酸化炭素(CO)中毒の疑いで病院に搬送されたが、いずれも意識はあって命に別条はない。
作業員たちは「息苦しい」、「動けなくなった」などの症状を訴えており、工事を発注した県や警察が、事故原因などを調べている。
この日は午前8時ごろから作業員10人がトンネルに入り、凹凸があったコンクリートの底面を平らにする作業をしていた。
途中で2人が外に出たが、残る19~58歳の8人が、地表に戻る予定だった午前11時半を過ぎても帰ってこなかったため、不審に思った別の作業員(43)がトンネル内に入り、8人が倒れているのを見つけた。
この作業員が1人をトンネルの外に連れ出し、さらに4人が作業用の運搬車に乗って自力で外に出てきたところを消防隊が救助した。
取り残された3人も、午後3時過ぎまでに救助された。
様子を見に行った作業員も救急搬送された。
現場は、作業用のトンネル入り口から約1.5km進んだ地点。
県企業局などによると、酸欠防止のため、作業前の酸素濃度の測定や送風機を設置するなどの対策を講じていた。
トンネル内では、換気用の送風機1台が動いて空気が送られていたというが、警察によるとCOの濃度が高かった。
工事関係者によると、現場では軽トラック10台、発電機12台、コンプレッサー5台、ポンプ13台が持ち込まれており、それらの排ガスが十分に換気されていなかった可能性があるという。
この日は午前9時に作業を始め、CO濃度は、同10時の測定の際は異常はなかったという。
県によると、トンネルは同県周南市の水越ダムから沿岸部のコンビナート企業に工業用水を送るための導水路。
全長15km、幅2.3m、高さ2.3mのかまぼこ型で、貫通している。
2017年度までの補修事業として、県企業局周南工業用水道事務所が工事を発注し、山口市の建設会社が受注。
今月11日から水を止め、特殊なコンクリートで床を覆って補強するために、老朽化したコンクリートをはがしていた。
同市と周南市の下請け3社の作業員が工事に従事していた。
厚労省によると、CO中毒で4日以上の休業を余儀なくされた労働災害は、2014年までの過去3年間で85件発生し、死傷者は136人。
その約半数を建設業が占めており、換気が不十分な場所でガソリンエンジンで動く発電機などを使ったのが主な原因だった。
出典
『トンネル工事 作業員9人を搬送、CO中毒か 山口』
http://mainichi.jp/articles/20161116/k00/00e/040/252000c
『トンネル工事、9人搬送 下松、一酸化炭素中毒か』
http://this.kiji.is/171746295691314683
『CO中毒か 下松の工業用水トンネル工事中9人重軽症』
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2016/1117/1p.html
11月19日付の朝日新聞山口版(聞蔵)からは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
警察によると、CO中毒の症状を訴えた作業員9人のうち、8人までが18日までに退院。
残る1人も、週明けには退院できる見通しという。
県によると、15日までの2日間で発電機や軽トラックなどが運び込まれたとみられ、無限軌道に荷台がついた作業車も持ち込まれていた。
これらの機械や車両は、クレーンでトンネル入り口から降ろし、現場付近まで移動させていたという。
事故当日は、コンクリートの床面を平らにする機械に圧縮空気を送り込むコンプレッサー5台も持ち込まれていた。
事故当時、トンネルでは、内部の空気を吸い出し、外に送り出すことで、空気の循環を生み出す送風機が作動していたとみられる。
(ブログ者コメント)
詳細不明だが、19日付の朝日新聞(聞蔵)記事が正だとすれば、空気を吸いだすダクト口とCO発生源の位置関係が不適切だった可能性も考えられる。
というのは、ブログ者の手持ち情報に以下のような事例があるからだ。
(2010年8月24日掲載、2011年4月16日転載)
換気方法不適切で軽度の溶剤中毒
http://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/278/
(2016年11月28日 修正1 ;追記)
2016年11月22日付で朝日新聞山口版(聞蔵)からは、事故時のやや詳しい状況が、下記趣旨でネット配信されていた。
前日の15日も水がトンネル内に流れ込んでいる状態で、作業員はポンプを使って、水の汲み上げ作業をした。
この際、複数の作業員が目の痛みを訴えたという。
ある作業員の家族は「『両目に尋常じゃない痛みがあった』と聞いた。この時、きちんと対策がとられていれば」と話した。
こうした作業員の体調もあり、事故当日は、トンネル内の換気を促す送風機が大型のものに換えられたというが、事故は起きた。
また、2016年11月26日8時52分に毎日新聞からは、現場にはCO濃度常時計測器が置かれていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(本情報は、3日後に起きた長崎市での事故とあわせた解説記事。長崎事例は、別途、独立記事として掲載予定)
現場に空気ボンベや一酸化炭素(CO)の濃度を常時観測する機器が備えられていなかったことが、捜査関係者の話で分かった。
いずれの機器も、CO中毒を防ぐため、厚労省のガイドライン(指針)で設置が求められており、逸脱していた疑いがある。
出典
『トンネル工事事故 CO中毒防止の指針逸脱か 山口・長崎』
http://mainichi.jp/articles/20161126/k00/00m/040/155000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。