2014年11月22日付の毎日新聞朝刊紙面に、「利かなかったブレーキ」というタイトルで、下記趣旨の記事が掲載されていた。
朝日新聞は5月20日朝刊で、「吉田調書」を入手したとして「所員の9割が所長命令に違反し、第2原発に撤退した」と報じ、9月11日に取り消しました。
その問題に関し、同社の第三者機関「報道と人権委員会」が11月12日に見解をまとめ、同社は13日朝刊で「見解」を詳しく報じました。
内容は多岐にわたるのですが、注目したのは紙面を作った5月19日当日の報道・編成局内の生々しいやり取りです。
①午後のデスク会後、記事を出す特別報道部の担当次長に当番編集長が「調書を見せてほしい」と要請したが、秘密保持などを理由に断られた。
②見出しとレイアウトを担当する編集センターの本社間の連絡で大阪は疑問点を告げた。大阪紙面のみ「所長指示通らず原発退避」という見出しも検討したが、最終的に東京の見出しに追随した。
③早版の刷りを見た特報部員が「現場の声を入れた方がいいのでは」などの指摘を取材記者2人にしたが、受入れられなかった。
④校閲センター員が、「命令違反」の横見出しが所員を責めているように読めるので「書き換えるべきではないか」と編集センターの担当者に提起したが、「第2、第3のスクープがある。今日は書いてないこともあるようだ」と言われた。
何人もがブレーキをかけたのに、利かなかったようです。
新聞作りに携わる者として身につまされる話です。
大特ダネが出るというとき、それを疑問視する意見を言えるだろうか。また、それを受け入れて軌道修正できるのだろうか。
自らを省みざるをえません。他山の石としたいと思います。
(ブログ者コメント)
事故が起きるメカニズムを説明するのに、「ドミノ理論」とか「リーマンのスイスチーズモデル」なるものがある。
それは、事故の発端となる出来事が生じても、普通であれば、幾重にも重ねられた安全対策があって、1つや2つ突破されても他の対策のどれかが効いて事故は防止できる・・・しかし全ての対策をすり抜けた時に事故は起きる、というものだ。
新聞社にとって、誤報は事故。この吉田調書誤報問題についても、同じようなことが言えるのではないかと感じた次第。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。