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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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2010819日 旧ブログ掲載記事)
 
大阪府淀川区の森田化学工場にて、三フッ化ホウ素ガスホルダーの半年に一度の定期整備作業中に、表記の事故が発生した。
該社作成の報告書に記載されている要点は、以下のとおり。
 
・ガスホルダーの入口、出口配管付近に溜まっているスラッジの除去作業中、入口配管に誤って水道水ホースを接続し、水を流したため、ホルダーのシール部に水が混入した。
(通常は、ホースから出る水の圧力を利用して棒などでスラッジを掻きだしていた)
 
・誤注入した水を抜き出そうとドレン弁を開けるも、水は出ず。
 
・そこで、ガスホルダーの上部隙間からパイプを挿入するなどして、シール部に溜まった水とスラッジを抜き出そうとするが、水は抜けるも、スラッジは抜けず。
 
・次の一手として、スラッジを手で掻き出せるほどの大きさの穴を開けようと、電気グラインダーで側壁の一部を切断することに決定。作業を開始したが、その5分後に、ホルダー可動部が吹き飛んだ。
 
・その時、天板上では別チームの4人が天井部のマンホール取り外し作業中だったため、飛ばされて死亡した。

 
原因は下記。
 
・シール部に溜まっていたスラッジには中間生成物としての含フッ素ホウ酸が含まれており、それと誤混入した水とが反応してフッ酸とホウ酸が生成した。

そして当該酸とホルダー材質の鉄とが反応して水素が発生。

そこに、電動グラインダーが使われたため、その火花が着火源となって水素に着火し、シール部空間の急激な圧力上昇によって可動部が吹き飛んだ。
 
詳細な対策は策定中だが、中間報告としての報告書が作成されている。
 
 
(ブログ者コメント)
 
1.森田化学工業のホームページに、「事故原因調査報告書」と「事故対策調査報告書」が掲載されていた。
 
普通、この手の報告書は官庁に提出するだけで、公表されることは稀。私も、多分掲載されてないだろうと思いつつアクセスして、ちゃんと掲載されていたので驚いた。
事故が起きたことは別として、森田化学工業の安全への取り組み姿勢に敬意を表したい。公表していただいたおかげで、類似プロセスを保有している会社は、自社の安全性を再確認できるようになりました。
 
2.事故を予見することは難しい。特に、このケースの場合、スラッジの中に水との反応性の高い中間生成物が含まれていることなど、誰も思っていなかったのではないか?

こう言っては失礼かも知れないが、
200人に満たない規模の会社では、そこまでの予想は無理だろう。
今回の事故は、これが専門の安全スタッフを何十人も抱える大企業であっても、予見はかなり難しかったのではないかと、私は思う。

 
しかしながら、安全管理に問題があったとして会社ならびに所長など数名の方が既に書類送検されている。
はてさて、どの部分を警察は問題にしているのだろうか?

作業計画を事前に知り、事故を予見できたにもかかわらず対策を講じなかった、と判断してのことらしいのだが、会社としてスラッジ中にあのような中間生成物が存在し得ることを知っていた、ということだろうか?

 
 

 
(2011年3月25日 修正1; 追記)
 
2011年3月23日15時0分に、産経関西から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
地検は、当時の事業所長(53)とグループマネジャー(38)を22日付で業務上過失致死罪で在宅起訴した。

起訴状によると、所長ら2人は、タンク内に水素が発生していることを疑う兆候があったのに調査せず、タンクに穴を開ける作業をさせて水素爆発を起こし、作業に当たった4人を死亡させたとされる。
 
(ブログ者コメント)
 
8月19日の記事中、ブログ者は「この事故の予見は難しかったのではないか?」とのコメントを書いた。それが、今回、起訴状には「水素が発生していることを疑う兆候があったのに調査せず」と書かれている由。

そこで、再度、事故原因調査報告書を見直したところ、事故に至る経緯として、そのような記述は見当らなかったものの、安全管理上の問題として「危険予知の機会もあったと考えられるが、危険性を認識できなかった」ことが、また、事故原因のまとめとして「日頃培ってきた危険に対する感受性がその場において発揮されず、危険予知をすべきとことでできなかった」ということが書かれていた。
恐らくは、このことであろう。

 
しかし、具体的にどういうことを見逃したというのだろうか?その点こそが同種事故の再発防止に役立つ筈であるのに、その情報がまだ出てきていないのが残念だ。

 

(2012年1月7日 修正2 ;追記)

2012年1月6日19時37分に、NHK大阪から裁判の途中経過が以下のように報道されていた。

業務上過失致死の罪に問われている元事業所長ら2人は、裁判で「爆発は予測できなかった」と無罪を主張した。

元事業所長(54)と元グループマネージャー(39)が、水素ガスがたまっているおそれがあると知りながら作業させたとして、業務上過失致死の罪に問われている。

6日、大阪地裁で開かれた裁判で、2人は「水素ガスが発生しているとは知らなかった」と述べて起訴内容を否認し、弁護士も「爆発は予測できず過失はない」として無罪を主張した。

これに対し検察は「設備のフタが通常よりも上昇していたことから、水素ガスの発生は予測できたはずだ」と指摘した。




(2012年5月1日 修正3 ;追記)
 
2012年4月27日12時45分に読売新聞から、元所長らに有罪判決が下ったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
 
業務上過失致死罪に問われた元事業所長(54)、元グループマネージャー(39)両被告に対し、大阪地裁は27日、執行猶予付きの禁錮刑判決を言い渡した。
量刑は、元所長が禁錮2年6月、執行猶予5年(求刑・禁錮2年6月)、元グループマネージャーは禁錮2年、執行猶予5年(同・禁錮2年)。

判決によると、両被告は、上ぶたの上昇などタンク内に水素が発生したことを疑わせる兆候を認識したのに調査せず、同月24日朝、従業員に火花が出る電動工具でタンクに穴を開ける作業をさせて水素爆発を引き起こし、タンク上にいた別の従業員ら4人を死なせた。

 
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120427-OYT1T00432.htm
 
 
一方、4月27日付の朝日新聞関西版からは、上記とは若干ニュアンスが違った内容の記事がネット配信されていた。
 
判決によると、2人は別の作業員が付着物を取り除こうと誤って大量に注入した水との化学反応で、鉄製タンク内に水素が発生していたのを認識しながら、電気工具でタンクに穴を開けさせ、火花で爆発を起こさせた。
2人は「大量の水素があると認識するのは困難だった」と反論していたが、判決は、タンクの上ぶたが内圧で持ち上がっていた点などから、予測できたと判断した。


出典URL
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201204270031.html
 
 
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自己紹介:
化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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