印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚労省は、大阪市の印刷会社に勤務した3人について、発症と業務の因果関係があったとして労災認定する方針を固めた。
がんを引き起こす原因は解明の途上だが、職業性疾病が疑われる労災認定をめぐり原因物質の特定を待たずに結論を出すのは異例。
胆管がんの労災認定は過去に例がなく、年度内に初の認定が決まる見通し。
厚労省によると、これまでに印刷業に従事した経験があり、胆管がんを発症して労災申請したのは56人(うち死亡35人)。
厚労省はこのうち、大阪市中央区の校正印刷会社「サンヨー・シーワィピー」の元従業員3人について、専門家検討会を立ち上げ、労災認定の可否を検討してきた。
作業環境を再現実験した結果、発症との関連が指摘される化学物質「1、2ジクロロプロパン」の平均濃度は推定130ppmに達し、国が許容の指標値とする10ppmの13倍だった。
同社の地下作業場の換気システムは、外部に排出した汚染空気の56%が還流し、換気が不十分だったことも判明。厚労省は「危険な環境下の仕事で発症した蓋然性が極めて高い」と判断した。
出典URL
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130101/trl13010117290000-n1.htm
(2013年2月22日 修正1 ;追記)
2013年2月20日11時40分に毎日新聞から、大阪の印刷会社の16人が労災認定されるという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
印刷所の従業員に胆管がんが多発し労災請求が相次いでいる問題で、厚労省は20日、発端となった大阪市中央区の印刷会社「サンヨー・シーワィピー」で働いていた16人全員の請求を認める方針を固めた。
同一の職場で多発していることから、仕事との因果関係があると判断したとみられる。胆管がんによる労災認定は初めて。
通常、労災認定の可否は全国の労基署で判断する。しかし胆管がんはアスベストや放射線被ばくなどと同様、判定が難しいため、同省は専門検討会を設けて基準づくりを進めていた。
厚労省の調査では、サンヨー社の作業室は排気装置の不備により、インキ洗浄剤に含まれ、発症原因と疑われる化学物質「ジクロロメタン」「1、2−ジクロロプロパン」の濃度が米国基準の最大21倍に達し、劣悪な環境だったことが判明している。
16人の内訳は、20代1人(死亡)、30代7人(うち死亡3人)、40代8人(同3人)。胆管がんはまれな病気で発症は高齢者に多いのに、若い従業員に多発しており、発症率の高さからも、業務と関係があると結論づけたとみられる。
サンヨー社以外の労働者で労災請求している46人(同31人)については、専門検討会で来月まとまる認定基準に沿って、4月以降に個別に審査する。
出典URL
http://mainichi.jp/select/news/20130220k0000e040194000c.html
(2013年3月21日 修正2 ;追記)
2013年3月14日13時34分に毎日新聞から、発症原因に関する報告書がまとまったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
厚労省の専門検討会は14日、発症原因に関する報告書をまとめた。
インキ洗浄剤に含まれる化学物質「ジクロロメタン」「1、2−ジクロロプロパン」を高い濃度で長期間浴びると発症すると推定。大阪市の印刷会社での大量発症は1、2−ジクロロプロパンにさらされたことに起因した可能性が高いと結論付けた。
昨年までに労災申請した同社の従業員・元従業員16人の中には、従来なら時効で請求権を失っていた人も含まれるが、時効の起算点は「検討会の翌日」(15日)に設定。同省は全員を今月中に認定するよう大阪労働局に指示した。
既に暴露防止措置が義務付けられているジクロロメタンに加え、1、2−ジクロロプロパンについても年内に法令改正して措置の義務化を検討する。
大量の発症が問題になったのは大阪市中央区の「サンヨー・シーワィピー」。
16人はいずれも男性で、支援団体によると、生存している8人は30〜40代、他の8人は1998年〜今年1月に20〜40代で亡くなった。
厚労省の調査では、同社の作業室は排気装置の不備で、ジクロロメタンと1、2−ジクロロプロパンの濃度が米国の基準の最大21倍に達していた。
報告書は、この2物質が胆管がんの原因と「医学的に推定できる」とし、同社の16人は1、2−ジクロロプロパンに4〜13年ほどさらされて発症した確実性が高いと指摘した。
ジクロロメタンについては、暴露したのが16人のうち11人で、高い濃度で浴びた期間が最長でも約3年であることから原因と推定するには至らなかった。
今回は、印刷職場での胆管がん発症が知られていなかったことを考慮した。
出典URL
また、2013年3月14日付で毎日新聞大阪版夕刊から、この問題を最初に指摘した産業医大の熊谷准教授のコメントが、下記趣旨でネット配信されていた。
胆管がんと化学物質の因果関係を最初に指摘した産業医科大学の熊谷信二准教授(労働環境学)に、同様の事態の予防や早期発見のための方策を聞いた。
今回の特徴は、胆管がんとの関係が知られていなかった1、2−ジクロロプロパンなどを労働者が吸ったことで発症したことと、この化学物質が規制されていなかったことだ。
早期発見と予防のため三つの提案をしたい。
第一に、法的規制がない化学物質でも、健康被害が発生すれば事業主の責任だと明確にすることだ。
産業現場では、法的規制がない化学物質を安易に使用する傾向があり、新たな健康被害を引き起こしてきた。事業主の責任を法的に明確にすることで、未規制の物質の安全対策を十分、実施した上で使うようになるだろう。
第二に、健康を守るための労働者の知る権利、予防のため職場改善に参加する権利を強化、確立することだ。
化学物質を販売する者は、販売先の事業主に、毒性情報を記したMSDSを提供することが労安法で定められている。
しかし今回、元従業員の依頼で私が毒性を調べようとしたが、販売者にMSDSの情報提供を拒否され、調査の妨げになった。
労働者が化学物質対策の決定に参加する権利も欠かせない。
職場環境は事業主が改善を図り、労基署の監督官がチェックするのが建前だが、実際は人数不足で手が回らない。労働者が職場の改善に関われるように法令を改めるべきだ。
今回、患者が「同僚も同じような病気になっているので、仕事が原因ではないか」と医師に訴え出たが、「証明が難しい」と言われたケースがあった。
特定の感染症は発生の報告が義務づけられていることにならい、異常事態を医療現場から労基署などに報告するシステムを構築すれば、予防に効果的だ。
出典URL
厚労省HPには、平成25年3月14日付で下記趣旨の報道発表資料が掲載されている。
本日、大阪府の印刷事業場に従事する労働者に発症した胆管がんの発症原因について、現時点での医学的知見を報告書としてとりまとめました。
報告書のポイントは以下のとおりです。
(1) 胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること
(2) 本件事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと
本報告書を踏まえ、厚生労働省においては、以下のとおりの対応を行います。
○ 1,2-ジクロロプロパンについては、早急にばく露の実態を踏まえ必要なばく露防止措置を検討し、夏頃を目途に結論を得て、速やかに特定化学物質障害予防規則等の改正を行います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002x6at.html
(ブログ者コメント)
熊谷准教授の「毒性を調べようとしたが、販売者にMSDSの情報提供を拒否され、調査の妨げになった」というくだり、実際の発言どおりだったとすれば、どういう意味だろう?
ジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパンともに、MSDSはネットで入手可能。
販売者から提供を拒否されれば、ネットから入手すればよいだけで、なにも調査の妨げにはならないのではないか?
MSDSを提供しない販売者の姿勢を問題にしているのなら、話は別だが・・・。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。