2023年10月9日20時1分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
9日正午ごろ、JR仙台駅で「(東北新幹線の車内で)薬品のようなものに触れ、子どもがけがをした」と119番通報があった。
宮城県警仙台中央署によると、東京都内の40代の男性のバッグから薬品が漏れ、この男性や乗客の男児(5)ら計4人が足や手、尻をやけどする軽傷を負った。
署によると、他に30~40代の男児の両親がやけどを負い、発生した気体を吸い込んだ乗客の30代女性とJR職員の20代男性が体調不良を訴えた。
薬品は地質調査で使うものとみられ、ペットボトルのような容器で持ち運ばれており、署は業務上過失致傷容疑も視野に、運搬方法が適切だったかどうか調べる。
騒動は新青森発東京行きの東北新幹線はやぶさ52号で起きた。
仙台駅に停車する直前、都内の男性は、足元の黒いバッグから薬品が漏れていると他の乗客から指摘され、バッグを持ってデッキに移動。
その際、薬品が通路にこぼれ、自身の両足にもかかってやけどを負った。
さらにその後、トイレに行こうとした男児が薬品で足を滑らせて転倒し、尻をやけど。
助けようとした両親も足首や手にやけどを負った。
ホームで新幹線を待っていた男性によると、新幹線がホームに停車した後、駅員が「煙!」と叫ぶのが聞こえた。
近づくと、ドア付近に置かれたバッグから白い煙のようなものが出ていたという。
JR東日本によると、はやぶさ52号は乗客全員を降ろして運休となった。
東北新幹線の上り12本にも最大55分の遅れが生じるなど、約7300人に影響が出たという。
https://www.asahi.com/articles/ASRB94CH3RB9UTIL009.html
10月9日19時46分に朝日新聞からは、男性は試薬の硫酸が爆発したと話していたなど、発生直後の車内の様子が下記趣旨でネット配信されていた。
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8号車に乗車していた男性会社員(37)は、この日正午前、仙台駅で降車しようとデッキに向かうと、「駅員さんを呼んでください」と言うスーツ姿の男性を目撃した。
トイレから出たばかりで、足元は大きくところどころに穴が開き、足首が見えていたという。
ほかの乗客が乗務員を呼びにいく間、この男性は「試薬の酸が爆発してしまった」と話し、「危ないものではないです。試薬の硫酸なので大丈夫です」「ご迷惑をおかけしてすみません。大丈夫なので」などと繰り返していたという。
別の30代の会社員女性は、帰省先から戻るために新幹線に乗り、座席で寝込んでいるところだった。
見知らぬ乗客から急に起こされ、車外に避難するよう言われた。
乗っていたのは10両編成の6号車。
車内に目をやると、床に液体が広がっているのが見えた。
そのすぐ後に、7号車につながる通路のドアを乗務員が封鎖した。
ドア向こうの通路では、煙のようなものが充満しているのがガラス越しに見えた。
車内には異臭も漂っていた。
「何かが燃えるような、たばこの煙のような臭い。少し刺激があるような感じだった」。
車内を行き来する乗務員はせきこんでいる様子だった。
7号車の方からは、「子どもがやけどした」と叫ぶ女性の声が聞こえた。
他の乗客が「トイレで酸性の薬品の入れ物が破裂し、中身が漏れ出したようだ」と話しているのも聞こえ、すぐに車両から避難した。
・・・
https://www.asahi.com/articles/ASRB953JGRB9OXIE00G.html
10月10日21時35分に朝日新聞からは、男児は尻に「3度」の大やけどを負ったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
仙台中央署によると、男児は尻や右手首、右足首に大やけどを負った。
尻のやけどは皮下組織まで達する「3度」と診断された。
30~40代の男児の両親もやけどを負ったほか、発生した気体を吸い込んだ乗客の30代女性とJR職員の20代男性が腕のしびれやのどの痛みを訴えた。
薬品を持っていた男性は入院しており、任意の聴取に「青森県内から薬品を新幹線で運んだ」と説明しているという。
https://www.asahi.com/articles/ASRBB74L8RBBOXIE02S.html
10月9日16時19分にNHK宮城からは、0.5ℓ以内の密閉容器に入れて破損しないよう荷造りした硫酸であれば列車内に持ち込むことができるなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
JR東日本は「旅客営業規則」の中で、手回り品として列車の車内に原則持ち込むことができない危険品をまとめています。
危険品に指定されているのは13の品目で、
▼火薬類
▼高圧ガス
▼マッチと軽火工品
▼油紙など
▼ガソリンや軽油などの「可燃性液体」
▼マグネシウムや硝石などの「可燃性固体」
▼リン化カルシウムなどの「吸湿発熱物」
▼硫酸や塩酸などの「酸類」
▼過酸化ナトリウムなどの「酸化腐しょく剤」
▼クロロホルムやホルマリンなどの「揮発性毒物」
▼放射性物質
▼セルロイド類
▼農薬
となっています。
このうち、ガソリンや灯油、軽油、ベンゼンやメタノール、アルコールといった可燃性の液体そのものは、量に関係なく、車内に持ち込むことはできないとしています。
一方、「酸類」「酸化腐しょく剤」、それにクロロホルムとホルマリンなどは、密閉した容器に入れた上で破損するおそれがないよう荷造りした0.5リットル以内のものは、手回り品として持ち込むことができるとしています。
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20231009/6000025227.html
10月10日17時34分にYAHOOニュース(東北放送)からは、漏れたのは濃硫酸だった模様、専門家はペットボトルで運ぶのは考えられないと述べたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「報道であったいろいろな事象を見てみると、いずれも濃硫酸で矛盾はない」
こう指摘するのは、東北医科薬科大学の薬学部長・吉村祐一教授です。
吉村教授:
「煙が出ている。
服がぼろぼろになったという話しがありますが、腐食性が非常に強いので、洋服とかにかけると綿製品などは簡単に穴が開いてしまいます。
逆に言うと、薄い硫酸だったら、なかなかそうはならない。
ちょっとかけても穴が開く程度なんですけど、ぼろぼろになるというのは、かなり濃い硫酸がかからないと、そういう現象はおこらない」
「通常、硫酸と何かを一緒に運ぶっていうことは、同じかばんの中にというのは危険なのでやらないです。
そもそも、報道であったペットボトルを使ってというのは、我々の中では考えられないやり方です」
https://news.yahoo.co.jp/articles/338c8decdf27548acde44ae3eb39b30719ea3939
10月12日11時51分にYAHOOニュース(Merkmal)からは、危険物車内持ち込み規則が制定された背景は不明、昔は3kg以内なら車内持ち込み可能だったガソリンも車内放火事件を受け持ち込み禁止になったように規則は必要の都度制改定されるなど、下記趣旨のルポライター寄稿記事がネット配信されていた。
・・・
いったいなぜ、多くの人が利用する鉄道で劇薬の持ち込みが許されているのだろうか。
今回の事故原因とされる硫酸を含む、酸類の持ち込み条件は以下のとおりだ。
1.酸類で、密閉した容器に収納し、且つ、破損するおそれのないよう荷造した0.5リットル以内のもの。
2.薬液を入れた鉛蓄電池で、堅固な木箱に入れ、且つ、端子が外部に露出しないように荷造したもの。
このように条件を守れば、火薬や硫酸を車内に持ち込める。
しかし、この規則が制定された背景や理由は明確ではない。
JR各社の営業規則は、1942(昭和17)年に当時の鉄道省が定めた「鉄道運輸規程」を基に戦後の国鉄が定め、それが受け継がれている。
また、火薬や硫酸は、規程を順守すれば車内に持ち込める一方、ガソリンの持ち込み自体は禁止されている。
以前は、ガソリンも3kg以内ならば“手回り品”として車内に持ち込めるとされていた。
しかし、2015年6月に東海道新幹線「のぞみ225号」で発生した車内放火事件を受けて、ガソリンなど一部の危険物に関する持ち込み規程が見直され、禁止となった。
【持ち込みできるワケ】
そもそも、鉄道運輸規程は危険物の持ち込みをなぜ許容し、国鉄もそれを受け継いだのか――。
この経緯も、今となってはわからない。
国土交通省鉄道局にも聞いてみたが 「今となっては、当時、なぜ一定の条件下でこれらの危険物の車内持ち込みを認めたかは、わからない」 という。
さらに担当者は、現在でもさまざまな危険物が持ち込み可能になっている理由をこう語る。
「規則というものは、必要があって制定されたり、変更されたりするものです。
これまで規程を変更する機会がなかったため、現在まで残ってきたのでしょう。
ですので、今回の事件を受けて、硫酸などの劇物に関する規則が変更される可能性はあります」
今回の事故において 「車内に危険物を持ち込むのは許されない」 との声が、SNSなどでは多く見られた。
だが、この考えが常識となるまでは、長い時間を要している。
かつての日本人は、車内に危険物を持ち込むことにためらいがなく、それが原因で事故が発生していた。
しかも、事故の多くは、持ち込まれた火薬やガソリンに 「たばこの火が引火する」 ケースだった。
車内でのポイ捨て、混雑する車内での喫煙など、モラルのなさと複数の不注意が組み合わさり、事故を引き起こしていたのだ。
【過去の持ち込み事故】
・・・
【個人のモラル頼みは危険】
その後、昭和30年代までは、車内に持ち込まれたガソリンや花火などの危険物にたばこの火が引火した事故が幾度も報じられている。
しかし、その後は、このような事故はまったく姿を消している。
意図的に爆発物を仕掛けた事件は、その後も発生している。
同様の事故が繰り返し発生するなかで、その危険性が周知され、「電車やバスには危険物を持ち込まない」 というモラルが形成されていったと考えられる。
結果、事故がないため、規則を変更する機会は訪れなかったわけだ。
実際、現代では、多くの人は 「たとえ規則で許可されていても、危険物を車内に持ち込まない」 と考えている。
しかし、今回の事故は、そのような“常識”が通用しないことを明らかにした。
これまで、個人のモラル形成が事故を未然に防いできた。
しかし、それに頼るだけでは事故を完全に防げないということも広く認識された。
これを機に、鉄道会社の危険物持ち込みに関するルールが大きく見直されることになりそうだ。
昼間たかし(ルポライター)
https://news.yahoo.co.jp/articles/842aa29372dd6d16dc3bb65e5424ea8c1ae67fae
(2023年10月29日 修正1 ;追記)
2023年10月26日18時5分に読売新聞からは、容器は溶けて原型をとどめていなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
男性は仕事で鉱物を採取するため、薬品を青森県十和田市の倉庫からペットボトルのような容器に入れて持ち出したが、容器は溶けて原型をとどめておらず、かばんの一部も溶けていた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231026-OYT1T50193/
10月26日18時34分にYAHOOニュース(東北放送)からは、硫酸と硝酸が検出されたが濃度や量はわからなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
警察は26日、鑑定の結果、薬品から硫酸と硝酸が検出されたことを明らかにしました。
濃度や量はわからなかったということです。
警察によりますと、薬品を持ち運んでいた40代の男性は東京都の地質調査会社の社長で、自らが管理する青森県十和田市内の倉庫から薬品を運んでいました。
男性は「薬品をペットボトルに入れて運んでいた」と話していて、硫酸と硝酸は鉱物の採取の際に使うものだと説明しているということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb4c16b8138ee6adb9563ea5440aafa249c50a39
10月27日18時27分にYAHOOニュース(東北放送)からは、耐薬品性表によればPETは濃硫酸に不適、硝酸に含まれている水分も影響した可能性ありなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東北大学大学院の上田実教授は、「状況から判断すると、硫酸は濃硫酸」と推測したうえで、「強い酸をペットボトルに入れるのはありえない」と話します。
東北大学大学院有機化学第一研究室 上田実教授:
「PETは「ポリエチレンテレフタラート」と言うが、最も酸とかアルカリといった薬品、有機溶媒に弱いプラスチック。
酸を持ち運ぶ時にPETに入れるのはまずありえない」
こちらはプラスチック製品の薬品への耐性を示した表です。
濃硫酸の場合、PET=ポリエチレンテレフタラートは「大きく影響があるため使用に適さない」と評価されています。
上田教授:
「PETはエステルという系統の化合物。
エステルは酸で加水分解という反応が起こって、分解してしまう」
さらに、新幹線の車内には煙が発生していたという情報もあり、これについて上田教授は「硝酸」の中の水分にも注目します。
上田教授:
「硝酸は、濃硝酸であっても「水」を含んでいる。
濃硫酸は水と混合すると熱を発する。
硫酸のペットボトルが溶けて、漏れてきた濃硫酸と(硝酸が)混合することで熱が出たことは考えられる。
漏れてきた濃硫酸が紙とか布のバッグなどと反応すると「脱水作用」が起きるので、それで煙や熱が出たと、一つの仮説として考えられる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fae1907032c6c75ed0921fb702c7c9577322f4b4
(ブログ者コメント)
耐薬品性表は多数、ネットに掲示されているが、表にPETが含まれているものは少なかった。
以下は、少ない中の一点。
PETは10%、50%硫酸には使用可だが、98%硫酸には使用不可と書かれている。
https://www.himac-science.jp/rotor/pdf/chemical_chart.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。