2016年11月10日18時33分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
人身事故でダイヤが乱れた近鉄奈良線の駅で、乗客に対応していた車掌が突然、高架線路から飛び降りるという異例の事態があった。
ネットでは、車掌を擁護する声が盛り上がった。
なぜなのか。
大阪府東大阪市の東花園駅。
近鉄秘書広報部によると、車掌の男性(26)が飛び降りたのは、9月21日午前11時すぎのことだ。
30分前に別の駅で人身事故が起き、ホームは多くの客で混乱していた。
車掌は客に対応していたが、制服の上着や帽子を脱ぎ捨てて高架線路の柵から7m下に飛び降り、腰と胸の骨が折れる重傷を負った。
当時、何があったのか、近鉄は「本人の心理的負担を考慮し、公表は差し控えたい」としている。
だが、ツイッターでは、目撃者の情報として、車掌が乗客に取り囲まれて強い口調で責められ、10分ほどしたころに叫んで飛び降りたという情報が拡散。
行きすぎたクレームがあったのではないかという見立てが広がり、「お客様は神様だから、パワハラを我慢しなければならないの?」、「クレーマーから社員を守るのも企業の責任」と、同情の声が次々に書き込まれた。
ネット上では、車掌への寛大な処遇と心のケアを求める嘆願書への署名活動が始められ、賛同者は5万7千人を超えた。
署名を呼びかけた千葉県浦安市の電気技師の男性(40)は、「状況ははっきりわからないが、職場放棄というより、限界に達した末の出来事ではないか。お客様第一主義が行きすぎ、クレーマーがモンスター化している状況への警鐘になると思う」と話した。
鉄道係員への過剰なクレームは、以前から問題になっていた。
暴力行為も高止まり。
日本民営鉄道協会によると、大手私鉄16社の鉄道係員への暴力行為は、2001年度は81件だったが、08年度以降は200件を超える状況が続く。
15年度は225件だった。
鉄道業界だけではない。
学校現場では「モンスターペアレント」の存在が問題となり、医療現場でも、院内暴力が深刻化している。
「カレー専門店なのに、味がちっとも専門的でない」、「後から来た客に先に料理が運ばれた」。
クレームの問題に詳しい池内裕美・関西大教授が消費者に調査したところ、こんな理由で店員に激しく苦情を言った経験を挙げる人がいた。
池内教授によると、クレームを受けることが多い仕事を「感情労働」と呼ぶことがある。
肉体労働、頭脳労働に次ぐ概念で、フライトアテンダントや飲食業、介護・福祉職などが代表的だ。
感情を押し殺して対応し、ストレスをため込んでしまう。
「揚げ足を取るようなクレームの問題がメディアでも取り上げられるようになり、誰もが思いあたる節がある。それが今回の擁護の声につながっているのでは」
感情労働を支えるには、従業員同士で語り合うなど、横のつながりで助けあうことが有効だが、「それだけでは足りない」と池内教授。
日本では、客を最優先にすることを当たり前ととらえる風潮が強い上、最近はSNSであおられる傾向があり、「クレーム社会」ぶりが過熱していると池内教授はみる。
「消費者も謝罪を受け入れる寛容さや、『自分だったら』と想像する力が必要。過剰なサービスを再考する時期に来ている」
飛び降りた車掌は退院し、通院治療中。
寛大な処分を求める声が多く届いた近鉄は、「鉄道従事者は可能な限り安全優先に努めるのが義務で、制服を脱ぎ捨て線路に直行する行為は許されない。ただ、寄せられた声も考慮し、当時の状況などを聞いた上で、精神的なケアも含めて今後の対応を検討する」としている。
出典
『飛び降りた車掌に同情論 モンスター生むクレーム社会』
http://digital.asahi.com/articles/ASJC97RMPJC9UTIL04R.html?rm=750
(ブログ者コメント)
ブログ者も、何回か、駅員に激しく詰め寄る乗客の姿を見て、「あの駅員に細かい情報は入ってないはず・・・文句を言っても仕方がないのに・・・」などと思いながら通り過ぎたことがある。
一方、たまに乗客に暴力をふるわれることもある由。
駅員さんも大変だ。
顧客と直接コンタクトする企業にとって、社員をトンデモ客から守ることも「安全確保」の一つではないかと感じた事例につき、紹介する。
関連報道として、以下が目についたので、タイトルのみ紹介する。
(2016/10/ 5 11:30 週間朝日)
『近鉄車掌飛び降りで浮かぶ「お客様は神様か?」問題』
https://dot.asahi.com/wa/2016100400204.html
(2016.11.2 10:00 産経新聞west)
『何が追い詰めたのか? 職務放棄して高架から飛び降りた近鉄車掌、寛大処分求める署名運動も』
http://www.sankei.com/west/news/161102/wst1611020005-n1.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。