[事故の概要]
(4月22日20時48分 朝日新聞 ;写真、被害範囲地図掲載)
22日午前2時15分ごろ、山口県和木(わき)町の三井化学岩国大竹工場で爆発火災があった。
また、午前8時すぎにも爆発が発生。夕方に火の勢いはほぼ収まったが、消火作業は22日夜も続いた。
この事故で、作業していた社員1人(22)が死亡、2人が頭の骨や腕の骨を折る重傷。
このほか工場内で7人、隣のJX日鉱日石エネルギー麻里布製油所で2人、周辺住民11人が軽いけがをした。
また、和木町や隣接する岩国市、広島県大竹市でも爆風で窓ガラスが割れるなど、周辺の住宅、ビルへの被害が約450件あった。
工場は小瀬川をはさんで山口、広島両県にまたがっている。
工場によると、爆発が起きたのは山口県側にあるプラントで、タイヤの接着剤の原料となる化学製品「レゾルシン」をつくっている。
http://www.asahi.com/national/update/0422/SEB201204220001.html
(04月23日 07時02分 NHK広島)
工場内にある別のプラントでトラブルが起きたため、工場内の各プラントを緊急停止させる作業をしていたところ、爆発が起きた。
工場内にある14のプラントが損傷した。
死傷者はなかったものの、昭和59年にも同じプラントで爆発が起きている。
http://www.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/4004629111.html
http://www.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/4004626921.html
(4月23日 20時39分 共同通信)
山口県警は23日、亡くなった男性の死因について、司法解剖の結果、化学薬品中毒と確認した。爆発で飛び散った薬品を浴び、吸い込んだとみている。
http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012042301002345.html
[敷地外被害の状況]
(04月23日15時35分 毎日新聞)
この事故で、建造物の損壊被害が、同工場から約10km離れた広島県廿日市市まで及んでいることが、毎日新聞の取材で分かった。
さらに、爆音や衝撃波による影響は広島湾を挟んだ広島市など約30km離れた同湾沿岸部まで届き、爆発のすさまじさを物語った。
同工場から直線距離で31km北東の広島市西区大宮。7階建てマンション5階に住む団体職員の男性(40)一家4人は、発生時刻ごろ、ベランダの窓ガラスと蛍光灯の激しい揺れに飛び起きた。男性は「ガタガタ、ビシビシと揺れ、震度3ぐらいの地震と思った。妻は幼い子ども2人を抱えて身構えていた。爆発事故の影響とは思いもよらなかった」と振り返る。
同区横川新町の会社員の男性(42)も「窓ガラスが台風の時みたいに激しく揺れ、慌てて外に出たけど静かだった。不思議な現象だった」と話した。
市消防局には、数件の問い合わせがあったという。
http://mainichi.jp/select/news/20120423k0000e040194000c.html
(4月25日付 毎日新聞九州版;写真付き、4月26日12時13分 NHK山口)
□この事故で、重さ約6トンあるプラントの一部金属片が、現場から北東約700m離れた山口、広島両県境の小瀬川河口で見つかった。
同工場によると、直径約6m、厚さ約2cm。鋼板にステンレス鋼を内張りしてあり、形状などから、爆発箇所とみられる円筒型の酸化塔(288m3)の一部らしい。
爆発で吹き飛び、同工場に隣接するJX日鉱日石エネルギー麻里布製油所の原油タンク(約5万kℓ)を飛び越えたとみられる。
同町の無職男性(74)は「国道や民家の方に飛んでいたら大変なことになっていた」と話した。
□三井化学は26日、「酸化塔」の一部と見られる鉄の塊を回収した。
警察では、この鉄の塊を爆発の衝撃を示す証拠として押収し、詳しく調べることにしている。
http://mainichi.jp/area/news/20120425sog00m040005000c.html
http://www.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4064713191.html
[事故直前の状況]
(4月23日15時53分 朝日新聞)
爆発したプラントは、事故前に緊急停止する作業を始めた時点では、温度や圧力に異常がなかったことが、工場関係者などへの取材でわかった。
同社は、作業開始から爆発までの約2時間45分の間に何らかの異常が起き、爆発につながったとみている。
爆発が起きたのは、タイヤの接着剤の原料となる化学製品「レゾルシン」(RS)を作るプラント。
工場では21日午後11時半に蒸気系統のトラブルがあり、工場内の7割のプラントを緊急に止める作業を始めた。
RSプラントでは、亡くなった男性ら7人が作業をしていたところ、22日午前2時15分ごろ爆発が起きた。
RSプラントで最も損傷が激しかったのは、主原料を酸化させる工程だった。
酸化工程では約300m3の容量があるタンクの中で主原料と空気を混ぜ合わせ、中間生成物を作る。
主原料は可燃性はあるが、爆発の危険性はない液体。
中間生成物は極めて引火しやすい液体で、爆発の危険性が高いという。
http://www.asahi.com/national/update/0423/SEB201204230006.html
(4月23日付 中国新聞 ;反応プロセス模式図付き)
原因究明はこれからだが、可燃性の強い物質を生み出す酸化反応タンク付近で何らかのトラブルが起きた可能性が高いとみられる。
爆発の3時間近く前の21日午後11時半ごろ、工場内に「シャットダウンせよ」という緊急の放送が鳴り響いた。各プラントで必要な蒸気を供給する設備にトラブルがあり、構内の7割のプラントが緊急停止に入った。
爆発が起きたレゾルシンプラントでは、作業員が約30m離れた計器室で停止のために自動弁の開閉や窒素の注入などを始めるボタンを押した。
その後、死亡した男性がプラント内に入り、完全に停止させるために手動でバルブを閉める作業などに当たっていたとみられる。
同社によると、爆発の際には、停止のための作業がほぼ完了していた可能性もある。
なぜ、突然の大爆発につながったのか、現時点では不明だ。
爆発したプラントでは自動車タイヤのゴム用接着剤などに使われるレゾルシンを生産する過程で、可燃性が高い物質ができる酸化工程がある。
「爆発は酸化過程に出る過酸化物が影響した可能性がある」。爆発直後、現場に駆け付けた工場長は話した。
ただ、タンク内で爆発したのか、タンク外に何かの原因で可燃性物質が漏れて爆発につながったのかなどは「調査してみないと分からない」とした。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201204230094.html
(4月25日 12時26分 NHK山口)
爆発した当時、工場では、すべてのプラントを緊急停止させる作業が行われていたが、労基署によると、「レゾルシン」プラントの近くにいた作業員が「爆発の前に『シュー』という異常な音を聞いた」と話していることが分かった。
会社によると、このプラントでは、亡くなった男性を含む7人が緊急停止の作業に当たり、自動で行う「1次操作」は異常なく完了したということで、爆発は手動でバルブを閉めるといった作業を行う「2次操作」の段階で、起きたと見られている。
労基署では、作業員が聞いた異常な音と爆発との関連などについて、引き続き作業員から話を聞くことにしている。
http://www.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4064679771.html
[その他]
(4月23日付中国新聞、4月26日19時52分 NHK広島))
□同社によると、工場の敷地内には触媒に使う放射性物質の劣化ウランが200ℓドラム缶で3379本貯蔵されていた。貯蔵する倉庫の窓ガラスが一部割れたが、同社は「ドラム缶に影響はなく、測定した放射線量も爆発前と変わらない」としている。
□この爆発事故で、工場の敷地内に放射性物質を含む廃棄物が保管されていることを、周辺の自治体が把握していなかったことが分かった。
工場では、爆発が起きたプラントからおよそ500m離れた倉庫に、放射性物質を含む廃棄物が、200ℓのドラム缶で、およそ3400本保管されていた。
ところが、周辺の和木町や岩国市、それに大竹市は、事故が起きるまで、放射性物質を含む廃棄物が保管されていることを把握していなかった。
文部科学省によると、放射性物質を含む廃棄物の保管について、会社から自治体に、報告の義務はない。
しかし、3つの市と町では、防災のための十分な対策を立てられないとして、今後は、会社側に対し保管の事実を地元自治体に報告するように、対応の見直しを求めることになった。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201204230092.html
http://www.nhk.or.jp/lnews/hiroshima/4004739461.html
(2012年5月4日 修正1 ;追記)
2012年4月27日付で中国新聞と毎日新聞山口版から、また4月30日付で朝日新聞広島版(聞蔵)から、過去報道の修正ならびに過酸化物に関する新情報が、下記趣旨でネット配信されていた。
□亡くなった男性は、警察のその後の調べで、頭蓋骨を骨折していたことが分かった。
□放射性物質の「劣化ウラン」などが廃棄物として保管されていた問題で、26日、工場が立地する岩国市と和木町がつくる岩国地区消防組合消防本部に、工場側から届け出がありながら、市町はそれぞれの地域防災計画に保管場所などを記載していなかったことがわかった。
消防本部に残る記録で、工場側が火災予防条例に基づき1968年に「核物質等貯蔵取扱届」を提出。保管状況の変更などの度に再提出されており、最近では07年11月に届け出ていた。
□工場によると、プラントでは、タンク内で中間生成物「ハイドロパーオキサイド(HPO)を作っていた。
HPOは引火点が4℃と極めて引火しやすい。爆発があったのは主原料が投入されて約40時間後で、タンク内はほぼ全てがHPOに変わり、その量は約150トンと推測される。
当時、作業員から異常を知らせる連絡はなかったといい、現場で把握できない何らかの要因が起きてHPOに引火したのではないかと工場関係者はみている。
□24日からは連日約30人の捜査員で現場検証を続けているが、プラントの損傷が激しく、現場検証は少なくとも3週間続く見込みだ。
出典URL
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201204270051.html
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20120427ddlk35040550000c.html
(ブログ者コメント)
報道では、ハイドロパーオキサイドの引火性だけに着目しているが、モノは有機過酸化物。
物質そのものの爆発特性にこそ、着目すべきだろう。
(2012年5月12日 修正2 ;追記)
2012年5月11日付で中国新聞から、被害状況に関する下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三井化学は10日、家屋の損傷が994件、被害者を死者1人、重軽傷25人とする独自調査の結果を公表した。
9日時点の数字で、家屋の損傷は4月末時点からほぼ倍増した。
家屋損傷は大竹市374件、岩国市250件、和木町368件、廿日市市2件。
4月末の調査時点で113件だった大竹市が3倍以上増え、工場のある和木町を上回った。
爆発地点から北約700mで酸化塔の一部とみられる鉄塊(約6トン)が発見されており、爆発地点北側で爆風の影響が強かったとみられる。
和木町も150件、岩国市も97件増えた。
増加した被害家屋はいずれも爆発地点の半径2.5km内だった。
被害家屋が倍増した理由について同社は、社員の戸別訪問時の留守宅や、後日判明したケースがあったと説明している。
けが人は4月末時点から和木町で2人、岩国市と大竹市で各1人増えた。いずれも住民で軽傷という。
同社はこの日、2011年度の決算を発表したが、事故の影響が反映される12年度の業績予想については「補償や撤去、復旧などの費用、販売などへの影響を合理的に見積もるのが困難」として発表を見送った。
出典URL
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201205110023.html
(2012年6月17日 修正3 ;追記)
2012年6月13日付で中国新聞、読売新聞九州版ならびに朝日新聞山東版(聞蔵)から、概略の事故原因に関する下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三井化学の事故調査委員会の小川輝繁委員長は12日、同工場で会見し、プラント全停止スイッチを運転員が誤って解除した結果、異常反応が起こり、爆発につながったとの見方を示した。
委員長によると、この日開かれた第3回目の会合で、運転記録や運転員の証言などから、爆発地点を、タイヤの接着剤原料レゾルシン(RS)を製造するプラントと断定。
このプラントにある酸化塔とタンク3基のうち、酸化塔で温度や圧力が上昇するといった異常が爆発前にみられ、損傷も大きかったことから、酸化塔が爆発したと判断した。
酸化塔ではメタ・ジ・イソプロピルベンゼンを反応させ、過酸化物ハイドロパーオキサイド(HPO)を作る。
委員長によると、別のプラントのトラブルに伴い、RSプラントを緊急停止させる全停止スイッチが押され、自動停止プログラムが作動。全ての機器が正常に停止した。
自動停止すると、約220トンのHPOが内部にあった酸化塔は、反応を止めるために酸素の供給が絶たれ、温度上昇を防ぐために窒素が注入され、塔内の温度を安定化させるために撹拌が行われる。
しかし、午前0時40分ごろ、何らかの理由で運転員が全停止スイッチを解除したため、窒素の供給と撹拌が停止。結果、酸化塔内の冷却コイルより上の部分にあったHPOの温度が徐々に上昇。停止スイッチ解除から約1時間後には警報が鳴るほど温度が上がり、運転員が反応器に水を入れて冷やそうとしたが、HPO分解が進んでメタンやCOなどのガスが発生し、温度、圧力とも異常に高まって爆発に結びついたとみられるという。
委員長は「通常は解除しなくてもいい。撹拌されていれば爆発はしなかった」」との見方を示した。
調査委では今後、解除を判断した理由や爆発エネルギーの解析などを行い、事故原因のさらなる究明を進める。次回会合は7月5日に開かれる。
出典URL
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201206130047.html
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20120613-OYS1T00205.htm
(ブログ者コメント)
緊急停止スイッチを解除したために窒素も撹拌も止まってしまったという件、どのような理由があって、そのようなシステムにしていたのだろうか?
安全を確保できる状態で止まっているものを、緊急停止スイッチを解除することで停止前の状態に戻してしまう、そういったシステムにした理由がわからない。
緊急停止スイッチを解除しても停止時の状態は維持され、再スタートする場合は、一つずつ安全を確認しながら停止前の状態に戻していく・・・・そんなやり方をとるべきではないのだろうか?
(2012年8月13日 修正4 ;追記)
2012年8月7日付で中国新聞から、手動で緊急停止システムを解除した理由などが、下記趣旨でネット配信されていた。
三井化学の事故調査委員会は6日、作業員がプラントの緊急停止システムを独断で手動解除したために爆発につながったとする調査結果をまとめた。小川委員長が同日、工場で会見し、明らかにした。
事故当時、爆発したタイヤ接着剤原料レゾルシン製造プラントの酸化塔は緊急停止システムが作動。空気注入を止め、窒素によるかき混ぜと緊急冷却水による冷却が進められていた。
小川委員長によると、プラント運転担当の班長男性(58)が冷却速度が遅いと感じ、緊急冷却水よりも通常運転時の循環水の方が早く冷却できると思い込み、システムを手動解除したという。
解除のための具体的な条件はマニュアルには記載されていなかったが、必要な上司の了解を得ていなかった。事後報告もしなかったという。
小川委員長は、解除すれば、冷却に効果のある窒素によるかき混ぜも停止することを班長が失念していたと指摘。この結果、塔内の温度が部分的に上昇して過酸化物の分解が進み、内部の温度と圧力が急激に上がって爆発につながったとしている。
出典URL
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201208070063.html
(2012年8月23日 修正5 ;追記)
2012年8月16日19時28分にNHK山口から、同日19時34分に日テレニュース24(山口放送)から、また8月16日付の朝日新聞広島版(聞蔵)から、三井化学が事故報告書を提出したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三井化学は16日、事故原因と再発防止策をまとめた報告書を山口県に提出した。
報告書には、
・緊急停止の際、酸化反応塔の冷却能力を高める
・緊急停止スイッチを解除する条件や操作手順書の中にあいまいで分かりにくい表現が使われていたのを見直し、解除する場合の条件を明確にしてチェックリストを作成する
・緊急停止に関する教育訓練を徹底する
・異常に気付きやすい操作画面のあり方などを見直す
といった再発防止策が盛り込まれている。
工場長は、「化学工場に対する不信感を増大させてしまい本当に反省している。二度と事故の起きない安全な工場にしていきたい」と話していた。
出典URL
http://www.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4064306141.html
http://news24.jp/nnn/news8702558.html
(ブログ者コメント)
三井化学HPにアクセスしたが、当該報告書は掲載されていなかった。
(2012年12月2日 修正6 ;追記)
2012年11月28日3時0分に朝日新聞から、同社がプラント再建を断念したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
三井化学は27日、今年4月に社員1人が死亡する爆発事故が起きた岩国大竹工場で、大きな被害を受けたレゾルシン(タイヤの接着剤の原料)の製造設備の再建を断念したことを明らかにした。
同社はレゾルシンの世界生産の1割弱、年7600tを作っていたが、事業から撤退する。
事故から半年間、レゾルシンが生産できない間に、顧客が他のメーカーから供給を受けるようになり、製造設備を再建しても需要が見込めないと判断した。
レゾルシン設備以外の工場の大部分は、すでに7月に運転を再開している。
出典URL
http://www.asahi.com/business/intro/TKY201211270901.html?id1=2&id2=cabcbbci
(2013年1月31日 修正7 ;追記)
2013年1月23日19時37分にNHK山口から、最終報告書が公表されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
会社が設置した事故調査委員会は、23日、最終報告書を公表した。
これまでの調査で、事故はほかのプラントで起きたトラブルに伴い爆発したプラントを緊急停止させる作業が行われている最中に、現場の責任者が手動で停止のスイッチを解除した「判断ミス」によって引き起こされたと結論づけている。
その上で最終報告書は、緊急停止の際の手順やリスクの評価が見直されてこなかったことや、プラントが設計された当初の技術が確実に伝承されてこなかったことなどが根本的な原因だと指摘している。
そして、プラントの変更に伴ってリスクを再評価することや、管理者が交代する時に申し送りを徹底し、人材育成にも力を入れていくことなどの対策を求めている。
一方、三井化学では去年10月から岩国大竹工場に、「安全再構築プロジェクトチーム」を立ち上げ、事故の再発を防ぐための改善を進めている。
出典URL
http://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4064890791.html?t=1358986670604
以下は、三井化学HPに掲載されている報告書。
http://jp.mitsuichem.com/release/2013/pdf/130123_02.pdf
(ブログ者コメント)
□報告書中、事故の経緯などが下記趣旨で記されている。
・反応器下部の冷却コイルで冷やされた液が反応器内部を循環し、液全体が冷却されるシステムになっていた。
・循環は、反応用と撹拌用の2種類のエアーによって行われ、反応器の中央部が上昇流、器壁側が下降流となっていた。
・そのような状況下、インターロック作動により、下記状態となった。
*エアー供給は停止され、同じラインから窒素が供給された。
*コイル冷却水は、循環水から緊急冷却水に切り替わった。
・その後、反応器液相下部温度の下がり方が遅いため、コイル冷却水を再び循環水に切り替えることにし、切り替えのためにインターロックを解除した。
・解除によりコイル冷却水は切り替わったが、窒素供給も停止し、結果、液の撹拌が止まった。
・液相下部温度は下がり続けたが、撹拌停止により、液相上部温度は上昇し始めた。
・液相上部温度ハイアラームが発報したが、温度が上昇しているのは気相部だと思い込み、反応器上部から水を注入した。
・しかし、それでも温度が下がらないことで撹拌停止に気付き、エアーを通入しようと対応している時に反応器が破裂した。
・対策としては、下記などを実施する。
ハード面)冷却コイルを液相全体に設置。
ソフト面)緊急停止の安全設計を確認し、マニュアルや設備に反映させる。
・また上記内容以外、事故の深層原因として、「リスクアセスメントの不足」、「技術伝承の不足」、「規則、ルールの軽視」などにも言及している。
□ブログ者は、なぜインターロックを解除すると窒素が停止するシステムになっていたのか、その理由がわからなかった。
その点、今回の報告書には以下の記載(30/47、35/47ページ)があるものの、理由に関する記述はなかった。
○インターロックを解除すると窒素が停止することが、マニュアルにも教育資料にも記載されていなかった。
○撹拌の重要性の認識が低かったため、インターロックを解除すると、窒素が停止することを知ってはいたが、その時は気付かなかった。
○対策としては、インターロックが解除されても窒素が自動で停止せず、撹拌が維持されるシステムに変更する。
□ちなみに、上記の「撹拌の重要性の認識が低かったため・・・」という件だが、主語がないために、誰の認識が低かったのか分からない。
今回は、過去の報道などからおおよその推定はできるが、一般論で言えば主語がなければ、実効ある再発防止策に結びつかない恐れがある。
事故報告書に原因を記載する場合は、主語を明確にすることが大切だ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。