2017年12月26日6時30分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
庭石などに使われる「蛇紋岩」に含まれるアスベスト(石綿)を吸入して肺がんになったとして、埼玉県の造園業の男性(71)が熊谷労基署に労災認定された。
蛇紋岩による石綿健康被害の労災認定は、極めて珍しい。
蛇紋岩に石綿が含まれていることはほとんど知られておらず、他にも多くの被害者がいる可能性がある。
蛇紋岩は北海道から九州まで広く分布し、石綿を含むことが多い。
資源エネルギー庁によると、近年は採掘量が減っているものの、10年前の2007年には国内で年156万トンが採掘され、セメントの材料や石材として流通している。
石綿そのものの使用は労安法で禁止されているが、蛇紋岩の使用は認められている。
男性が労災認定されたのは今年4月。
労基署の調査などによると、男性は1970~82年ごろに週2、3回、愛知・静岡県境の採石場で蛇紋岩を仕入れ、庭石として販売していた。
表面を電動工具で削るなど加工することもあった。
別の仕事に従事した後、92~05年には、造園の仕事で蛇紋岩を切断したこともあった。
男性は蛇紋岩に石綿が含まれていることを知らず、マスクなどの安全対策は取っていなかったという。
男性は15年春に肺がんと診断され、手術で肺の一部を摘出。
仕事が原因と考え、熊谷労基署に労災申請した。
手術で摘出された肺の組織を同署が調べたところ、労災認定基準の数倍の石綿が検出された。
仕事で蛇紋岩に含まれる石綿を吸い込んだことが肺がんの原因と判断し、労災認定した。
蛇紋岩による石綿被害を研究する久永直見(なおみ)愛知学泉大教授(産業医学)は、「蛇紋岩由来の石綿被害の実態は分かっておらず、労基署が被害を認めた意義は極めて大きい。蛇紋岩は身近にあり、隠れた被害者が相当数いる可能性がある。国は作業員らに危険性を周知すべきだ」と指摘する。
【ことば】蛇紋岩
国内に広く分布する岩石で、表面の模様が蛇の皮に似ていることから、この名がついた。
比較的安価で、表面は緑色や黄色で光沢がある。
コンクリートに使う砂利に加工されるほか、模様の美しさから庭石や装飾品などにも利用される。
部分によって石綿が含まれ、風化によって繊維状の石綿が飛散することもある。
角閃石(かくせんせき)やタルク(滑石)にも石綿が含まれている。
出典
『造園業者石綿労災 「蛇紋岩」庭石加工で肺がん』
https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/140000c
12月26日6時35分に毎日新聞から、下記趣旨の関連記事がネット配信されていた。
「蛇紋岩に石綿が含まれ、それを吸っていたなんて思ってもみなかった」。
蛇紋岩の石綿で肺がんになったとして今年4月に労災認定された埼玉県の造園業の男性(71)は、毎日新聞の取材に心境を語った
男性は1970年ごろ、愛知・静岡県境にある採石場で、庭石に使う蛇紋岩を仕入れる仕事を始めた。
比較的大きな岩を買い付け、トラックに積んで近くの街で訪問販売していた。
高度経済成長期とも重なり、「よく売れた」という。
ただ、採石場はダイナマイトで岩を爆破するなどしており、強風が吹くと砂ぼこりがもうもうと舞った。
男性が行くのは多い時期で週2、3回で、作業時間は1回2~3時間。
現場では、蛇紋岩を機械で細かく砕いて砂利にし、ダンプカーに積む作業が一日中行われており、数10人が働いていた。
この男性だけでなく、ほとんどの作業員はマスクを着けていなかった。
「あの人たちは自分よりずっと多く石綿を吸い込んでいたと思う」と振り返る。
男性に早期の肺がんが見つかったのは2015年春。
石綿など念頭になかったが、加入している労働組合「建設埼玉」の担当者から「肺がんなら石綿の可能性を調べるべきだ」と石綿関連疾患の専門医の受診を勧められ、原因が石綿と分かった。
最近は蛇紋岩を扱っていない。
「40年も前の仕事が原因とは……」と驚いたという。
男性は手術して体調が回復し、造園業に復帰した。
「誰を恨むわけじゃないが、蛇紋岩に石綿が含まれていると知っていれば、対策を取れたかもしれない。多くの人に蛇紋岩の危険性を知ってもらい、発病する人が減ってほしい」と話した。
出典
『「蛇紋岩、知っていれば対策も」』
https://mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/040/141000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。