2016年9月25日21時21分に産経新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
トラクターなどの大型機械を使った農作業中に事故で死亡する人の割合が増加している。
就業人口10万人当たりの死者数は、高所作業など危険と隣り合わせの仕事が多い建設業の2倍を超えている。
背景には、就業人口の減少に伴う高齢化がある。
秋の収穫期を控え、農水省が注意を呼びかけているが、有効な解決策はないのが実情だ。
「もう、これはダメだと思った。助かったのは運が良かったとしかいいようがない」
8月末、島根県安来市でトラクターの下敷きになり、肋骨8本を折る大けがを負った男性(67)は、当時をこう振り返った。
畑で作業を終えた帰り道、農道の隆起した場所にトラクターが乗り上げ、運転席から放り出されたところにトラクターが倒れてきた。
周囲に人影はなく、燃料も漏れ出している。
潰された胸の痛みをこらえ、必死に大声を出したところ、数100m先にいた人が気付き、119番通報してくれた。
男性は、「倒れたトラクターからよけられると思ったのだが、体が動かなかった。入院した病院では、同じような事故で2人が死亡している」と話す。
農水省によると、平成26年に農作業事故で亡くなった人は350人。
統計を取り始めた昭和46年以降、毎年400人前後で推移しているが、母数となる農業人口が減少を続けているため、10万人当たりの事故死者数は右肩上がりとなっている。
平成26年には10万人当たり過去最多の15.4人にまで上昇。
全産業の平均(1.7人)の9倍、危険度の高い作業が多い建設業(7.5人)と比べても、2倍以上と突出している。
特に目立つのは高齢者だ。
26年の死亡事故は、65歳以上が295人と84.3%を占め、うち80歳以上は145人で41.4%だった。
農水省の担当者は、「年齢による判断能力の衰えもあるのだろう」と指摘する。
乗用型トラクターによる事故が最も多く、死者は95人。
このうち「機械の転落・転倒」が75人と約8割を占め、操作ミスとみられる事故が複数あった。
事故を調査し、防止対策などの情報提供を行っている国立研究開発法人「農研機構」によると、事故の要因は、機械の操作ミスのほか、「滑りやすい」、「草が茂って路肩が見えにくい」といった、農業独特の周辺環境も影響しているという。
運転者を守る安全フレーム付きのトラクターもあるが、高齢の個人経営が多く、なかなか高価な機械に更新できない事情もある。
広い農地で起きる事故は、目撃者がいないため長時間発見されず、通報が遅れがちなことも死亡事故につながる一因という。
担当者は、「もう少し早く見つかっていれば助かったのでは、という事例もあった」と打ち明ける。
農水省は、収穫の最盛期となる9、10月を安全対策の重点期間とし、農業従事者の集まる講習会で安全の話題を取り上げたり、ポスターを配布したりして、安全意識の向上を呼び掛けているが、決定的な解決策はない。
担当者は、「慣れた作業にこそ危険が潜んでおり、十分に気をつけてほしい」と訴えている。
建設業などで、死亡事故が減少傾向にあるのに対し、農業での事故はなぜ減らないのだろうか。
農水省の担当者は、高齢化以外にも「先祖代々の土地を守る意識で家族経営する農業者が多く、法規制がなじみにくい構造がある」と指摘する。
建設業など法人組織の事業者は、労安法などに基づき、雇用する労働者の安全や健康を確保しなければならず、ひとたび死亡事故が起きれば、厳しく責任を問われる。
だが、同法が適用されるには、「労働者」として雇用しているとの前提がある。
農水省によると、同法が適用される農家は全体の1割程度。
家族経営が多い農業従事者は、ほとんどが法の適用外にあるのが現状だ。
また、トラクター事故の多くは、安全のための装備がついていない旧型機で起きる。
安全装備の義務化を求める声もあるが、農水省の担当者は、「義務となると多額のコスト負担がかかり、農家の存続に関わる」としており「将来的には何らかのルールが必要だが、急な変更は難しい」と、法整備には消極的だ。
出典
『農業は「危険な職業」だった!? 死亡事故割合は建設業の2倍 目立つ高齢者の機械操作ミス』
http://www.sankei.com/affairs/news/160925/afr1609250024-n1.html
(ブログ者コメント)
農作業中の事故は本ブログの掲載対象外だが、事故が起きたという報道は、確かに多いと感じていた。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。