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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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(1/2から続く)

 

 

【クマの爪痕は体にも心にも…】

 

この事故による負傷者は計10人に及んだ。

襲撃された人のほとんどは、顔を狙われていたという。

 

いちばん重傷だったのが最初に登場した66歳の男性で、右目は完全に失明し、左腕と左足にも重い後遺症が残った。

 

山小屋のオーナーも、唇の上から喉にかけて100針以上縫う重傷を負い、話をするのに若干不自由するようになった。  

 

なお、事故を伝えた当時の報道には、「畳平に現れたクマを、男性が棒で叩くなどして興奮させたことがきっかけとなって、次々と人が襲われた」というニュアンスものが多かった。

 

しかし、これは事実ではない。

 

男性がとった行動は、あくまでクマに襲われていた女性を助けようとしたためであり、決して好戦的にクマに向かっていったのでない。  

 

ただ、事故は彼の心身に大きな傷を残した。

 

体が不自由になって好きな山に登れなくなっただけではなく、いっしょに畳平を訪れていた友人らは、「助けられなかった」という負い目から彼のもとを離れていき、その後の人生は大きく変わってしまった。

 

 

【なぜバスターミナルにクマが?】

 

もともと乗鞍岳一帯はツキノワグマの生息域であり、周辺ではこの事故以前にもクマがたびたび目撃されていた。

 

しかし、ほとんどの野生のクマがそうであるように、乗鞍岳に生息するクマも人間を恐れており、登山者らに干渉することなく、ある一定の距離を保っていた。

 

では、なぜこのときに限って、バスターミナルにいた人の集団のなかに、クマは自ら飛び込んでいったのだろうか。  

 

この点について、岐阜大学応用生物科学部プロジェクトチームがまとめた『乗鞍岳で発生したツキノワグマによる人身事故の調査報告書』は、「クマが大黒岳の上部で採食に夢中になっているときに、近くにいた登山者が大声を出すなどしたため、驚いて斜面を駆け下りた可能性が考えられる」と推測している。  

 

ところが、駆け下りた先が車の往来する道路であり、バスに接触したり鉄柵に挟まるなどしてパニック状態が続き、大勢の人がいるバスターミナルに飛び出してしまった。

 

そこには身を隠す場所がなく、大声を出されたり石を投げられたりしたため、精神的に追い詰められて人への攻撃に転じたというわけである。  

 

クマにしてみれば、あくまでも脅威から逃避しようとして行動したのに、その先々でさらなる脅威に直面し、それまでに体験したことのないほどの身の危険を感じて、死に物狂いでそこから逃れようとしただけなのだろう。

 

そう考えると、被害に遭った人たちにとっても、射殺されたクマにとっても、不運で不幸な出来事であったとしか言いようがない。  

 

この事故以降、乗鞍岳一帯でクマによる人身被害は、今のところ出ていない。

 

しかし、乗鞍岳がクマの生息域であること、また多くの登山者や観光客が訪れる山岳観光地でもあることに変わりはない。

 

実際、周辺では毎年たくさんの目撃情報が寄せられており(今年度は1021日現在、36件の目撃情報がある)、ときに登山道や遊歩道の近くに出没することもある。  

 

そうした状況では、人間のなにかしらの行動がトリガーとなってクマがパニック状態に陥るのは充分に予測できることであり、同様の惨事がいつ起きても、なんら不思議ではない。

 

それは乗鞍岳にかぎった話ではなく、クマが生息するほかのエリアについても同じことがいえる。

 

登山であれキャンプであれ観光であれ、自然のなかで活動するときには、そうしたリスクがあることを、我々は忘れてはならない。

 

 

【「自分を守る」ために行動する】

 

とくに今年は全国各地で例年以上にクマの出没・目撃情報が相次ぎ、石川県や新潟県、山形県では、市街地や観光地で人がクマに襲われる被害も発生した。

 

その要因としては、今年はクマの食料となるドングリが凶作であること、人間を怖がらない新世代のクマが現れはじめていること、過疎化や高齢化により里山が荒廃してクマの生息域が広がっていることなどが挙げられている。  

 

いずれにせよ、これまでになく人間とクマの距離が近くなっているのは間違いなく、両者の関係はより緊張の度合いを増しており、突発的な事故には充分警戒する必要があろう。  

 

なお、乗鞍岳の事故のように、人がクマに襲われている場面に出食わしたとしたら、どう対処すればいいのだろうか。

 

残念ながら、周囲にいる人たちにできることはほとんどなにもない。

 

乗鞍岳の事故のときのクマは、体長136センチ、体重67キロだった。

体格的には人間の成人男子より小さいにもかかわらず、人の力では制御できず、10人もの重軽傷者が出てしまった。  

 

たとえどんなに屈強な男性でも、まともにクマとやりあったのではとても勝ち目はない。

襲われている人を助けようとしてヘタにクマを刺激すると、いっそう興奮させて被害がより拡大してしまう。

 

たとえナイフやナタ、あるいはクマスプレーを持っていたとしても、クマを確実に撃退できる保証はなく、逆に返り討ちに遭ってしまう可能性が高い。  

 

だから、まず行なうべきは、自分の身を守る行動をとる、すなわち避難することだ。

 

「襲われている人を助けたい」と思う心情は理解できるが、もし助けようとするのなら、「もしかしたら自分も命を落とすことになるかもしれない」という覚悟が必要である。  

 

また、自分がクマに襲われた場合は、クマスプレーを携行していればそれを噴射すべきだが、そうでなければ防御姿勢(首や腹部への致命傷を防ぐために、地面にうつ伏せになり、手を首の後ろで組む体勢)をとって、クマの攻撃をやり過ごすしかない。

 

負傷するのは避けられないだろうが、力ずくで対抗しようするよりは賢明だろう。

 

---------- 参考文献 『乗鞍岳で発生したツキノワグマによる人身事故の調査報告書』(岐阜大学応用生物科学部プロジェクトチーム) ----------

 

羽根田 治(フリーライター)

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/08ba99e80b3c68734f0d376eec361cf9a48e7de2?page=1

 

 

 

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。

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