2014年4月22日1時45分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
路線バスの車内で転倒し、けがをする高齢者が後を絶たない。
発進や停止の際に転ぶケースが大半で、重傷を負う例もある。
こうした中、運転手とは別に添乗員を同乗させ、お年寄りに注意を呼びかける取り組みを京浜急行バス(東京都港区)が続けている。
「お客様の着席を確認してから発車します。お降りの際は止まってからお立ちください」。出発するバスの車内に、添乗員の尾田さん(61)の声が響いた。
横浜市港南区の住宅街から上大岡駅に向かう路線。バスは急坂を下り、細く曲がりくねった道を進む。
「ブレーキをかける場面が多く、車内事故が起きやすいんです」と尾田さん。
高齢の女性が、停留所でバスが止まる前に腰を浮かせた。
「ゆっくりでいいですからね」。降車ドアの前で車内を見渡していた尾田さんがすかさず声をかけ、女性は腰を落ち着けた。
駅が近づくにつれ、乗客が増えてきた。
「混雑時の事故は少ない。昼間のすいている時が危ないんです」
慌てずに乗り降りできるよう、車内が和む話し方を心がける。
バスを降りた近くの橋爪さん(76)は、「危ないとは思いつつ、もたもたしてたら他のお客さんに悪いと思って、つい早く立ってしまう。声をかけてもらえるのはありがたいですね」と話した。
東京都南部から神奈川県東部にかけて路線バスを運行する京急バス。
この取り組みを2011年に始めたのは、運転手への指導を重ねても、車内事故が減らなかったためだ。
「他社の似たような取り組みは、聞いたことがない」という。
発進や停車時の事故を減らすには、運転手が乗客の着席を確認して発車することと、乗客が走行中に立ち上がらないことが大切になる。
だが、お年寄りは動作が遅く、「迷惑をかけてはいけない」と早く席を立つ傾向がある。
このため、ベテラン社員が「添乗員」として乗客に協力を呼びかけることにしたという。
坂が多い路線や、昼間に高齢者が多く利用する路線を中心に、12年度には社員2人を専従にして計2000回にわたり添乗した。
「従来も管理職が同乗して運転手に改善点を指摘することはあった」といい、コスト面の心配もないという。
同じ路線で添乗を重ね、少しずつ呼びかけが浸透。
京急バスグループの路線バスで10年度に10件あった発進時の事故は、13年度には6件に、7件あった停車時の事故も3件に減った。
同社の生出課長は、「お客様の行動が変わってきた。今後も事故防止の取り組みを続けたい」と話す。
公益財団法人・交通事故総合分析センターの統計によると、乗り合いバスの車内事故による負傷者数は2011年に799人。
65歳以上が446人で、うち男性は88人、女性は358人。傾向は変わらないという。
なぜ高齢女性の負傷者が多いのか。
神奈川大学工学研究所の堀野定雄・客員教授(人間工学)は、両手に荷物を持って乗車することが男性より大幅に多く、体を支えられず転倒してしまうためだと分析する。
堀野教授は、車内に手荷物をひっかけるフックの設置や、衝撃を和らげる柔らかい床材の導入を提言。
他方で、意識を変えることが最も効果的と訴える。
「焦らずゆっくりの動きでよいから安全にと、運転手、高齢者、他の利用者が理解することが大切だ」
業界団体の日本バス協会は、07年から毎年7月に車内事故防止のキャンペーンを展開。
当初は「バス停に着いてから」席を立つよう呼びかけていたが、11年からは「扉が開いてから」と表現を変えた。
同協会の長尾参与は、「少しでもゆっくり立ってほしいと強調するために言葉を変えた。お年寄り以外の乗客にもご理解をお願いしたい」と話す。
他のバス事業者も、取り組みを進める。
都営バスを運行する東京都交通局は、一昨年、高齢者向けに走行中に立ち上がらないよう呼びかけるパンフレットを作成。70歳以上が対象の「シルバーパス」を発行する際に手渡すようにしている。
神奈川中央交通(神奈川県平塚市)は、従来も車内の安全確認を運転手に呼びかけてきたが、昨年秋からは、「車内よし」と指さし確認してから発車するよう呼びかけ始めた。
同社の担当者は、「これから高齢化が進む中で対策が必要と考えた」と話す。
出典URL
http://www.asahi.com/articles/ASG485CLLG48ULOB02D.html
(ブログ者コメント)
○記事には、黄色い腕章をした添乗員の男性の写真が掲載されている。
○全路線で終日となると実現は難しいだろうが、重点路線に時間帯を区切って対応している点に、工夫を感じた。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。