2020年7月12日に掲載した第2報がブログサイト運営会社の字数制限に抵触しましたので、ここに新情報を第3報修正4として掲載します。
第2報は下記参照。
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10823/
(2020年8月5日 修正4 ;追記)
2020年7月29日5時16分にYAHOOニュース(東洋経済オンライン)から、加圧泥水式工法を採用した工事で土砂を多く取り込みすぎたことが原因だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
2022年度の開業を目指して建設が進む「相鉄・東急直通線」の地下トンネルの真上で今年6月、2度にわたって起きた陥没事故。
1回目の発生から約1カ月半を経て、その原因が明らかになってきた。
直通線の整備主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が設置した専門家らによる検討委員会は7月24日に3回目の会合を開き、陥没はトンネル掘削時に土砂を取り込みすぎていたことが原因だったと結論づけた。
現場のトンネルは、地中を筒状の「シールドマシン」で掘り進める工法で建設。
一般的に、シールドトンネル工事での陥没事故は「切羽」と呼ばれる掘削面の上が崩落して起きることが多いとされるが、今回の陥没は、すでに掘削が終わった部分の上で発生した。
地下約20mで何が起きていたのか。
【掘削後のトンネル上で陥没】
2度の陥没事故は、横浜市の郊外を通る幹線道路「環状2号線」の新横浜駅(同市港北区)付近で起きた。
1回目は6月12日、新横浜駅から北東に約800mほど離れた横浜市営バスの港北営業所近くで発生し、歩道部分から片側3車線の左側車線にかけて大きさ約6m四方、深さ約4mの穴が開いた。
2回目は同月30日、1回目の現場からさらに300mほど北東で起き、大きさ約8×6m、深さ約2mの穴が開いた。
どちらもけが人はなかった。
現場は建設中の相鉄・東急直通線「新横浜トンネル」のほぼ真上。
トンネルは地上から18~19mの深さで、1回目の陥没現場付近は発生の6日前、2回目の現場付近は2カ月前にトンネルの掘削が終わっていた。
鉄道・運輸機構は、1回目の陥没発生を受けてトンネル工事を中断。
大学教授ら専門家9人による「地盤変状検討委員会」を設置し、原因の究明を進めてきた。
検討委の龍岡文夫委員長(東京大学名誉教授)によると、シールドトンネル工事による陥没は、切羽と呼ばれる掘削面の上が崩れて地表が陥没するケースが一般的だ。
だが、2回の陥没は、どちらもすでに掘削が終わった区間で起きた。
当初から委員の間では、陥没現場の地下に空洞があったとの見方が出ていたものの、空洞ができた理由については意見が分かれていた。
6月24日に開いた最初の検討委会合では、「以前から(陥没現場の地下に)空洞があったのではないか」との意見もあったという。
だが、その後、地質調査が進むにつれ、すでに掘削したトンネルの左右と、これから掘削する前方の地盤は異常がない一方で、トンネルの真上に位置する「上総層」と呼ばれる砂を多く含む地層は傷んでいることが判明。
数値が高いほど地盤が固いことを示す「N値」は、本来100以上のところ、トンネルの上は50以下と弱くなっていた。
これらの分析から、検討委は、工事以前から空洞があったとはいえないと判断。
シールドトンネル工事が陥没を招いたとの結論に達した。
現場付近の地盤について龍岡委員長は、固い泥岩層が薄く、砂層が主体で、「非常にいやらしい地盤」と指摘。
砂層は、地中で安定した状態なら、非常に固く強いものの、空隙が生じて水にさらされると流れる性質があるといい、空隙が広がってバランスが崩れ、崩落したのではないかとの見方を示した。
【土砂を多く取り込みすぎた】
工事記録の解析では、陥没地点付近の工事の際に、本来、掘削する分よりも多くの土砂を取り込んでいたことが判明した。
龍岡委員長によると、新横浜トンネルのシールドトンネル工事は、泥水を送り込んで掘削面を安定させながら掘り進める「加圧泥水式」という方式で、掘削した土砂は泥水とともに排出される。
送り込んだ泥水と戻ってきた泥水の量や含まれる土砂の密度を比較することで、どれだけの土砂を取り込んだかがわかるという。
この工事記録を分析した結果、陥没現場付近の長さ10~14mにわたって、少しずつ余分に土砂を取りすぎていたことが判明。
送り込む泥水に含まれる土の密度が十分でなかったために掘削面が安定せず、本来掘るべき量以上に土砂を取り込んだとみられる。
また、過剰に取り込んだ土砂の量は、陥没現場の空洞の体積とおおむね一致した。
土砂を取りすぎていたことが工事中に判明しなかった点について、龍岡委員長は「突然、大崩壊が起きたわけではなく、限定的な量の(土砂の)取り込みを連続して行っていたので、とくに異常はないと判断したようだ」と説明する。
また、土砂を取り込みすぎた場合は、「グラウト」と呼ばれる、セメントをペースト状にしたものを注入して隙間を埋めるが、陥没現場付近では、結果的に注入量が足りていなかったこともわかった。
一般的に充填する量の2倍程度を注入していたものの、龍岡委員長は「今から見れば、もっと入れるべきだっただろう」と指摘する。
本来掘るべき量を上回る土砂を周囲から取り込んでしまい、さらに隙間へのグラウトの充填も足りていなかったことで、空洞が生じて陥没に至ったとみられる。
施工管理が適切だったかどうかについて、鉄道・運輸機構は、検討委から具体的な陥没発生のメカニズムや再発防止策などの最終的な報告を受けたうえで判断したいとの意向を示す。
ただ、委員の間では「より注意すべき場所だったものの、作業のレベルに問題があったわけではない」という見方が多いようだ。
一方、今回の陥没事故は、複雑な地盤でのトンネル工事にさまざまな知見を残すことにもなりそうだ。
「事故について詳細に解析する機会はまれ。今回の事象を踏まえ、今後は1ランク上がった管理方法が普及してもいいのではないか」と龍岡委員長は話す。
https://news.yahoo.co.jp/articles/634c65f2687a3e7d03f4c5d402d9c034127081d3
(2020年9月3日 修正5;追記)
2020年9月3日1時35分にYAHOOニュース(神奈川新聞)からは、再発防止策をとって工事が再開されたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は2日、現場の車線規制を解除し、中断していた相鉄・東急直通線の新横浜トンネルの掘削工事を再開した。
直通線の2022年下期開業には影響が出ない見通しという。
事故は6月12日と同30日に発生し、同12日以降は工事を中断。
検討委員会が陥没原因を掘削工事による土砂の取り込み過ぎと結論付けたことを受け、同機構は再発防止策を検討していた。
これまでに、掘削済み区間約2750メートルのボーリング調査と充塡(じゅうてん)措置などを実施。
今後掘削する約550メートル間は、土砂の取り込み過ぎが生じた場合は速やかな再充塡などの対策を実施するという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/418a003f1861fe978ec2536aad4435d055d09bda
(2020年9月5日 修正6; 追記)
2020年9月4日20時30分にYAHOOニュース(Response)からは、再発防止策の詳細が下記趣旨でネット配信されていた。
公表された再発防止策によると、掘削が完了している区間については、環状2号線直下区間で地盤に穴を開けて行なう「探り削孔(さっこう)調査」を実施し、地盤が弱い箇所に充填材を注入し強化した。
その他の掘削済み区間については、陥没箇所とは地層が異なること、トンネルが深い箇所に位置することから、陥没の危険性はないとしながらも、慎重を期すために過去の掘削データを再検証。
その結果、「空隙(くうげき)」と呼ばれる、地層のすき間が発生していないことが確認されたという。
工事実施前から地盤変状などの監視を行なってきた地盤変動監視委員会による、より詳細な計測でも、同様のことが確認されているとしている。
鉄道・運輸機構では、今後掘削を進める横浜アリーナ手前付近~新横浜駅間については、地盤の空隙が生じないための対策を施すとしており、すでにボーリング調査により地質状況を把握。
続いて、シールドマシン掘削面付近の土圧の適切な管理、土砂取り込み量の正確な把握、「裏込め注入」と呼ばれる、空隙を埋めるためのモルタル材注入における適切な管理を行なうとしており、土砂を取り込み過ぎた場合には、トンネル内から速やかに充填材を再注入するとしている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/677d52e0d3000c556776d7db629369c2fcaebd71
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。