2020年7月28日19時54分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
在日米軍基地や工場周辺の地下水などが、発がん性も指摘される有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)に汚染されている実態が環境省の全国調査で明らかになった。
国はPFOS、PFOAについて規制を強化する方針だが、課題は山積する。
【輸入や製造、原則禁止の方向 既存製品の規制なし】
環境省が6月に公表した、全国計171地点の地下水などの調査結果によると、PFOS、PFOAの含有量は1都2府10県の37地点で国の暫定的な目標値(1リットル当たり50ナノグラム)=ナノは10億分の1=を超えた。
最も高い大阪府摂津市の地下水からは、目標値の約37倍の1855ナノグラムを検出。
化学メーカーの工場などが集まる首都圏や阪神地域などのほか、普天間飛行場(沖縄県)など、泡消火剤を保管する米軍基地周辺地域にある川や湧水(ゆうすい)などで汚染が目立った。
PFOS、PFOAを含む素材は化学的に安定し、水や油をはじく性質を持つことから、焦げ付かないフライパンといった調理器具や泡消火剤、半導体などに使われてきた。
中でも泡消火剤は、少量でも短時間で消火できる「最強の消火剤」(業界関係者)とされる。
ところが、長期間にわたって環境中に残存する有機汚染物質などを規制するストックホルム条約の締約国会議は2009年、PFOSの製造や使用、輸入の制限を決定。
PFOAも19年に物質そのものの利用を原則禁止することを決めた。
国内では化学物質審査規制法(化審法)で18年からPFOSの製造・輸入を全ての用途で禁止に。
PFOAについても、政府は今年度内にも同様の措置を取る方向で検討している。
しかし、これまでに出回った製品の使用を制限する法律や規制はなく、代替物質がない製造済みの一部製品は、廃棄せず使い続けることになる。
【「最強の消火剤」代替物質なく、回収ルールもなし】
特に、泡消火剤は代替物質がなく、消火活動に支障が出る恐れもある。
ある大手消火剤メーカーは、「これほど消火に優れた物質はなく、代替できる物質の開発も進んでいない。非常時のためにも、規制されるまではPFOA含有の消火剤を製造し続けるしかない」と、対応に苦慮する。
環境省などによると、PFOSを含む泡消火剤は、16年時点で国内に少なくとも計約280万リットルの保有が確認されている。
保管場所の内訳は、
▽消防施設約140万リットル
▽自衛隊関連施設約41万リットル
▽空港約8万リットル
▽駐車場など約91万リットル。
PFOA含有の泡消火剤の把握は進んでいない。
泡消火剤の回収に関するルールはなく、処分方法は企業の自主的な判断に委ねられている。
熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は、「不適切な処分や不法投棄で環境中に物質が放出される恐れもあり、焼却の方法によっては有害物質ダイオキシンの類似物質が発生するリスクもある。国は回収・無害化処理の制度化を積極的に進めるべきだ」と指摘する。
【米国は健康被害を認定 日本も実態把握方針】
1940年代以降に米化学メーカーなどが開発したPFOSとPFOAは、自然界ではほとんど分解されず、長期間にわたって残存する性質を持つため、「永遠の化学物質」と呼ばれる。
いずれも、人体に取り込まれれば、排出されずに蓄積し続ける。
国際がん研究機関(IARC)はPFOAを「発がんの可能性がある物質」に分類。
PFOSも、動物実験で健康影響が認められたとの研究報告がある。
発がん性など、人の健康影響を裏付ける確定的な医学的知見はないが、工場周辺の河川や地下水などから高濃度で検出される例は海外でも報告されており、影響を懸念する声は根強い。
米ウェストバージニア州の住民ら約3500人は2001年、大手化学メーカー「デュポン」などを相手取り、健康被害を訴える集団訴訟を起こした。
同州にあるデュポンの工場では、長年、製造するフライパンのフッ素樹脂加工にPFOAを使っていた。
工場排水は河川に流出し、飲用水も汚染。
因果関係は不明だったが、周辺住民には下血や腎臓がんなどの健康被害が相次いでいた。
訴訟の過程で実施された工場周辺住民約7万人を対象とした疫学調査では、PFOAの平均血中濃度が米国人平均の約20倍に達した。
17年に和解が成立。
デュポン社などは排水と健康被害の因果関係を認め、6億7070万ドル(約706億円)の和解金を支払った。
このケースは、世界でPFOAの製造規制が進む大きなきっかけとなった。
体内に蓄積しにくく規制のない代替物質への転換が進み、現在製造中のフライパンなどの調理器具には、ほとんど使われていない。
環境省と厚生労働省は今年に入り、2物質について水道水や地下水に含まれる暫定的な目標値を設定。
健康影響の知見集積を進める「要監視項目」に位置づけた。
環境省は、これまでの調査で目標値を超えた地下水などを誤飲しないよう、井戸の所有者らに注意喚起する一方、今年度はさらに範囲を広げて調査し、実態の把握を目指す方針だ。
約20年前から北海道に住む妊婦とその子どもの疫学調査をしている岸玲子・北海道大特別招聘(しょうへい)教授(環境リスク評価)によると、妊婦のPFOS血中濃度が高いほど胎児の出生時体重が軽くなる傾向があったという。
発達障害などにつながるかどうかははっきりしないが、「子どもの成長にどんなリスクがあるか長期的に調べる必要がある」と指摘する。
長年にわたり国内外で水質調査を実施してきた小泉昭夫・京都大名誉教授(環境衛生学)も、「人への毒性評価が難しくても、国はがん患者の登録データを活用して健康影響調査を進めるべきだ」と警鐘を鳴らす。
【PFOS、PFOAを巡る経過】
2001年5月 毒性が高く難分解性・生物蓄積性を持つ有機汚染物質の製造・使用を原則禁止するストックホルム条約採択
02年8月 日本、条約を締結
09年5月 PFOSが条約の規制対象に
10年4月 改正化学物質審査規制法(化審法)で、PFOSの国内製造・輸入が一部用途を除き禁止に
18年 化審法政令改正で、PFOSの国内製造・輸入が全ての用途で禁止に
19年5月 PFOAが条約の規制対象に
19年8月 環境省審議会、一部用途を除きPFOAの国内製造・輸入の禁止を答申
https://mainichi.jp/articles/20200728/k00/00m/040/166000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。