2023年7月27日14時30分に紀伊民報から、トンネルの断面図など付きで下記趣旨の記事がネット配信されていた。
12月開通予定だった県道長井古座線「八郎山トンネル」(和歌山県串本町上田原―那智勝浦町中里、711メートル)で、ずさんな工事が発覚した。
全体的に、壁や天井部のコンクリートが薄かったり空洞があったりして、地震によっては最悪崩落の恐れもあったという。
工事書類も改ざんされていたといい、県は26日付で請負業者のA組(和歌山市)とH組(田辺市)を6カ月の入札資格停止処分とした。
串本町と那智勝浦町を結ぶ県道長井古座線のバイパス道にあるトンネル。
2社の共同企業体(JV)が県から約20億4千万円で請け負い、2020年9月に着工。
22年9月に完成し、県に引き渡された。
トンネルは、「吹付コンクリート」の内側に「覆工コンクリート」を施工する。
県が別に発注した業者が照明灯を設置しようとし、天井部の「覆工コンクリート」に穴を開けたところ、「吹付コンクリート」との間が空洞になっているのが分かった。
その後の調査で、工事の初期は正常だったが、それ以外の少なくとも50カ所以上に空洞があった。
また、厚さは30センチ必要だったが、全体の7~8割で薄く、3センチしかない所もあったという。
県への完成書類は、基準を満たした数値になっていた。
放置した場合、最悪、地震で崩落したり、経年劣化で天井や壁のコンクリートが剝がれ落ちやすくなる恐れがあったという。
県の業者への聞き取りによると、現場ではコンクリート不足を認識しながらも対策を取らず、施工を進めていたことが分かった。
ただ、当初から意図的だったかどうかは分からないという。
県は工事の段階ごとに業者からの連絡を受けて現場確認することになっているが、覆工コンクリートでは68回必要なところ、正常に施工されていた初期の3回しか実施されなかった。
近く、専門家を含めた「技術検討委員会」を設置し、詳しい原因を究明した上で工法を決定し、業者の費用負担で補修工事を実施する。
開通時期は未定。
A組が実施した県内の他のトンネルは定期検査で問題はなかったが、改めて調査する可能性があるという。
【信頼関係にひび】
27日、記者会見した県の福本・県土整備部長は、「全国的にも、これほどの規模の施工不良は聞いたことがない。建設業者との信頼関係にひびが入る。非常に残念だ」とした。
段階確認を3回しかしなかったことについては、「業者から依頼があるべきだが、県としても責任がある」とし、「供用が大幅に遅れ、県民に深くおわび申し上げたい」と謝罪した。
https://www.agara.co.jp/article/293352
7月27日19時10分に産経新聞からは、県が天井をレーダー調査したところ多数の施工不良が判明した、業者は工事不備を把握していたのに虚偽報告したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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県がトンネル天井部分(幅8メートル)を全長にわたってレーダー調査したところ、多数の施工不良が判明。
コンクリート壁は厚さ30センチ以上が必要だが、調査範囲の約7割で基準を満たさず、最も薄いところは10分の1の約3センチしかなかった。
壁内部の約50カ所で空洞も確認された。
事業者側が工事完成時に県へ提出した書類では、規定通りの厚さが確保されていると記載。
県の調査では、事業者側は工事の不備を把握していたにも関わらず、虚偽の報告をしていたとみられるという。
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https://www.sankei.com/article/20230727-OFGQO3XS5VNJPBTXAOACX2UQDA/
7月27日20時21分に毎日新聞からは、型枠との隙間にコンクリートを流し込む工法だった、業者は工期短縮を理由の一つに挙げているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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工事は内部にかまぼこ型の型枠をはめこみ、地山との隙間(すきま)にコンクリートを流し込む工法だったが、不十分な充てん作業で空洞が発生した可能性があり、厚さ不足は掘削不足や測量の誤りなどが考えられるという。
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県によると、トンネル全体の強度は鉄骨などによって保たれているが、内壁の施工不良により風化や地震などによるひび割れでコンクリートが落下しやすくなるという。
県は専門家を交えた技術検討委員会を立ち上げ、補修工事の方法を決める。
一方、県の規定では、県発注工事では業者から工程完了ごとに申請を受け、職員が現場で確認するが、内壁工事では68回のうち3回しか確認せず、施工不良を見落としたという。
A組は毎日新聞の取材に、「コンプライアンスの意識不足で、現場担当者が『1日でも早く供用するため工期短縮をしたかった』と考えたと聞いている。社としてチェックできなかった」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20230727/k00/00m/040/130000c
(2023年9月11日 修正1 ;追記)
2023年9月8日20時3分に産経新聞からは、掘削の測量記録がほとんど残っていなかった、レーザースキャナーなどを十分活用していないなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
原因究明のため県が設置した外部有識者らによる検討委員会の初会合が8日、串本町の県水産試験場で開かれた。
終了後の記者会見で、委員長の大西有三・京都大名誉教授(岩盤工学)が、工事を請け負った業者側に掘削の測量記録がほとんど残っていないことを明らかにした。
今後の審議に影響するとみられる。
大西委員長は掘削の測量記録について「レーザースキャナーや写真測量があるのに十分活用していない。これだけデータが残っていないのは珍しい」と指摘。
福本部長は「測量をちゃんとやっていないと思われるような聞き取り状況。細かい現場でのメモすら残っていない」とし、「現場の管理がここまでなされていないのは驚きを隠せない」と述べた。
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https://www.sankei.com/article/20230908-I4QR5YF22JMLFH4JPBSDNHRBQA/
(2023年11月20日 修正2 ;追記)
2023年11月19日7時2分にYAHOOニュース(mBS NEWS)からは、H鋼が設計位置からずれている場所もあった、検討委員会ではほぼ全てのコンクリートを剥がして確認する必要ありなどの意見が出ているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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和歌山県によりますと、請負業者は完成後、「覆工コンクリートの厚さは設計以上に確保されていた」という内容の書類を提出したということですが、県の聞き取りに対して、「検査で薄いことは把握していた」と回答したといい、書類を設計値以上に書き換えたことを認めたということです。
県は「業者が適切な対応を怠り、厚さが不足するような粗雑な工事を行った」と指摘し、2業者に対し、6か月の入札参加資格停止の措置をとっていました。
県は今回の問題が発覚後、専門家による「技術検討委員会」を設置しました。
今年9月から議論が行われていましたが、11月10日に行われた第2回の会議では、県の調査で側壁のコンクリート壁の厚さが30センチ以上必要にもかかわらず、6センチしかない部分があったことが確認されたほか、トンネル内で6か所のコンクリートをはがし調べたところ、H型鋼が設計位置からずれていたこともわかったということです。
コンクリートを上塗りした場合は、法律で定められたトンネル断面の車が通る空間が維持されない可能性があるということです。
検討委員会では「施工時の測量がずさんで、ミスに気付いているのに修正せず、もとに戻していない」「ほぼすべてのコンクリート壁をはがして、安全性の確認が必要」となどの指摘が上がったということです。
県は工事を請け負った業者と協議し、費用は負担させる方針としています。
現場は、串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネルで長さ711m。
地震などの災害時には、海沿いの国道42号の迂回道路として、重要な意味合いを持つ県道として整備中で、トンネルは今年12月に供用予定でした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/414f169d336cfabcba76a4fba794e06ca768200c
11月20日9時22分に読売新聞からは、県は136回検査すべきところJVからの連絡がなかったという理由で最初の6回しか検査していなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
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県の「土木工事共通仕様書」は、県はトンネル工事の際、コンクリートの厚さを検査するよう定めている。
今回のトンネルの場合は約10メートル打ち付ける前後に1回ずつ、計136回の検査が必要だったが、県は最初の6回しか検査していなかった。
県の福本・県土整備部長は、「(検査回数が少ないのは)JV側から連絡がなかったためだが、その少なさに気がつかなかったのは県の落ち度だった。十分に検査をしていれば、厚さ不足は生じなかった可能性がある」と述べた。
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https://www.yomiuri.co.jp/national/20231120-OYT1T50061/
(2023年12月23日 修正3 ;追記)
2023年12月20日19時50分に産経新聞からは、ほぼ全ての支保工が正確な位置にないことも確認された、検討委は技術力不足と倫理観欠如を指摘したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
県が設置した同トンネル技術検討委員会は20日、県自治会館(和歌山市)で第3回委員会を開いた。
トンネル内部を支えるアーチ状のH型鋼「支保工」(約700カ所)のほとんどが正確に設置されていないことが調査で判明したとして、「掘削以外の工事を全面的にやり直す」との方針を決めた。
工期は約2年の見込みという。
同トンネルの工事では、天井のコンクリート壁の厚さ不足などが判明。
コンクリート壁6カ所はがし、支保工をチェックしたところ、設計位置からずれて設置されていることも分かった。
その後の調査で、ほぼ全ての支保工が正確な位置にないことを確認した。
検討委が示した復旧方針は「内部のコンクリートをはがし、すべて新しい支保工を所定の位置に正確に設置し直す」としており、掘削以外のほぼ全ての工事をやり直すことになる。
施工不良の原因については、測量の管理不足でずれが生じたほか、コンクリート壁の厚さや支保工の設置位置の確認不足があったことなどを指摘。
検討委委員長の大西有三・京都大名誉教授は、「測量機械などの使用方法を理解していない技術力不足があり、コンクリートを設計通りの厚さにしていないなど倫理観の欠如がある」などと話した。
県の担当者は、「ずさんな工事状況が確認された。粗雑な工事で遺憾。開通を心待ちにしていた地元の方に申し訳ない」と述べた。
県は、工事を請け負った共同企業体のA組(和歌山市)やH組(同県田辺市)を今年7月から6カ月間、入札参加資格停止にした。
今後の工事費用は両社に負担させるという。
https://www.sankei.com/article/20231220-Z5YTWW2XDBM7NMFYRTR73WDVME/
(2024年1月19日 修正4 ;追記)
2024年1月18日6時10分に産経新聞からは、経験豊富な現場所長に権限が集注していた、所長は工期が遅れると叱責され何とかしろと言われるからなどと説明、内部通報制度はホコリを被っていた・・などとする社内調査結果が説明されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
工事を請け負った共同企業体のA組(和歌山市)が17日、同社で記者会見した。
社内調査の結果、工事当初から施工不良が重ねられたとし、開通後の利用者への安全に対する意識はなかったとの認識を示した。
同社は補修工事の実施で特別損失が約20億円発生する見通しという。
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社内調査では、県内でのトンネル工事17件の実績がある現場所長に権限が集中した問題を指摘。
▽掘削後に厳密な計測を行わず、現場所長の目視だけだった
▽内部のコンクリートの厚さ不足を認識していた
▽トンネル内部を支えるアーチ状のH型鋼「支保工」(約700カ所)のほとんどが正確に設置されなかった
などの施工ミスを重ねながら、報告書には虚偽の記載を続けていたという。
この際、開通後の利用者の安全について考慮することはなかったという。
現場所長は施工不良を重ねた理由を、
「叱責される」
「工期が遅れる」
「赤字にしたくない」
「お前がなんとかしろといわれる」
などと説明したとしている。
施工不良を知る現場の社員らが内部通報しなかった理由については、
「内部通報制度があることを知らなかった」
「現場所長の判断が絶対である」
「現場所長を超えて通報できない」
との回答が大半で、松川社外取締役は「内部通報制度がほこりを被っていた」と反省の弁を述べた。
再発防止策として、
▽コンプライアンス順守意識の醸成
▽上下の意見交換ができる風土の醸成
▽内部通報制度の説明
▽工事の品質を管理する品質検査員の創設
などを挙げた。
実施した工事について県と同社が再点検を行う。
池内会長は、「一から『誠実施工』の理念で信頼回復に努めたい」と話し、経営陣は辞任せず、コンプライアンスの改善に取り組む姿勢を見せた。
施工不良を受け、同社は昨年8月に西口社長と池内会長を役員報酬20%カット(3カ月)としたのをはじめ、現場所長の降格など計8人に懲戒処分を行った。
https://www.sankei.com/article/20240118-ICOUZS47BZLSVNXBQI7ZJVOOVE/
1月18日10時0分に朝日新聞からは、発端は測量の管理不足で誤差が生じたことなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
工事を請け負ったA組が17日、会見を開いた。
ずさんな工事の原因について、同社の説明では、測量の管理不足で誤差が生じ、掘削の進行方向にズレが生じたことが発端という。
そのため、トンネルを支えるアーチ状の鋼材「支保工(しほこう)」は設計とは違う位置に設置された。
コンクリートの厚さ不足にもつながったとしている。
https://www.asahi.com/articles/ASS1K6Q3RS1KPXLB001.html
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。