2013年10月25日付で読売新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
国交省は25日、JR北に対し、社内の安全管理体制の強化を求める追加の改善指示を行った。
同社が来年度の予算で安全確保に必要な額を配分することなどを求めている。レール異常の放置などトラブルが9月に起きてから、同社に改善指示が出されるのは2回目。
太田国交相は、同日午前の閣議後の記者会見で、予算編成のあり方にまで踏み込んだ改善指示とする理由について、「(JR北海道は)本社が現場の状況を把握しておらず、現場の要望が考慮されていない。現場の提案を十分聴取し、安全を確保するための適正な予算編成を行うよう指示する」と述べた。
その上で、「引き続き、JR北の安全問題の全体の分析を続けたい。追加の特別監査は必要ならやる構えだ」と述べ、さらに調査や指導を徹底する考えを強調した。
同省の滝口鉄道局長は同日午後1時過ぎ、同社の小山総合企画本部長を同省に呼び、改善指示書を手渡した。
指示書を受け取った小山本部長は「安全確保に全社一丸となって取り組みます。ご指導をお願いします」と述べた。
改善指示では、経営幹部でつくる安全推進委員会が、多発するトラブルに十分対応できていないとして、機能の強化を求めた。
このほか、枕木の老朽化への対応が統一されていない問題については、枕木の状態を1本ずつ確認して管理を徹底するよう指示した。
出典URL
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20131025-OYT8T00678.htm?from=popin
また、2013年10月26日0時52分に毎日新聞から、解説的な記事が下記趣旨で、他の指示事項とともにネット配信されていた。(他の指示事項は転載省略)
レールの異常放置問題で25日、国交省から再び改善指示を受けたJR北海道。
わずか1カ月足らずで2度の改善指示に、幹部は「非常に重く、厳粛に受け止めている」と謝罪したが、経営不振が安全対策に影響している実態が表面化。再生には険しい道が待ち受けている。
「経営的に潤沢な予算が組めない現状があった。結果的に現場の声を軽視していた」。同日夜、札幌市の本社であった記者会見。「『資材が足りず、人も不足している』などの現場の声が反映されていない」と指摘した改善指示について、萩原経営企画部長はこう釈明し、資金難で安全対策がおろそかになっていたことを認めた。
豊田・常務鉄道事業本部長は「来年度は安全に関してしっかり予算を付けたい」と説明したものの、1987年の発足以来、営業赤字が続く中、安全対策への投資をどこまで拡大できるかは不透明だ。
出典URL
http://mainichi.jp/select/news/20131026k0000m040113000c.html
それに加え、2013年10月30日11時11分に毎日新聞から「記者の目」というコラムで、国鉄分割民営化の問題にまで踏み込んだ解説記事が、下記趣旨でネット配信されていた。(長文につき大幅カット)
なぜこれほどまでに問題が相次ぐのか。私は、脆弱な経営基盤が原因の根本にあると考える。
資金と要員不足の両面で、この会社はもはや限界にきている。
鉄路の再生、万全の安全確保のためには、公的支援をさらに施すしか解決策はない。
枕木には白いペンキで「×」や「△」の印。ひび割れが目立ち、一部は表面がめくれ上がっている。雑草が伸び、レールを固定する「犬くぎ」が5cmほど浮き上がっていた。「犬くぎが簡単に手で抜けるほど、枕木が朽ちていることもある」。ある保線社員の言葉を思い出した。
北海道の保線作業は過酷を極める。冬は氷点下20℃以下の寒さと雪氷との闘いだ。地中の水分が凍って土が盛り上がると、レールに凹凸が生じる。なだらかにしなければ脱線につながる。ふぶけば視界も悪くなり、人身事故の危険性も高まる。「乗客の命を守るため、自分たちも命がけで体を張っている」
現場では、傷んだ線路を補修するためのヒト、モノ、カネの不足が深刻だった。複数の保線社員は「金がないから、その場しのぎで先送りするしかない」「人が足りず、検査も補修も追いつかない」「声を上げても上司に握りつぶされる」と証言した。その結果が、レールの異常放置の常態化だった。
JR北海道の何が問題なのか。
民営化を控えた国鉄末期から採用を抑制した結果、「いびつな年齢構成が技術継承を断絶した」との声も漏れるが、この問題はJR各社が抱える共通の悩みで、言い訳にすぎないだろう。
民営化をめぐる方針の違いから、対立する労働組合の存在を指摘する論調もある。だが、複数の組合員は「所属労組によってあつれきがあるのは事実だが、仕事は仕事」と証言しており、問題の本質ではないと感じる。
やはり最大の問題は、脆弱な経営基盤だ。問題をさかのぼれば、政治が主導した分割民営化の失敗に行き着く。
多くの赤字路線を存続させる一方、赤字を補填する経営安定基金を設けたが、低金利時代になって得られる利ざやは減っている。国鉄時代を知るベテラン社員は「JR北海道は分割民営の敗戦処理を強いられた」という。
一連の問題が発覚してから、政府もJR北海道への批判を強めるが、自立経営ができないことは最初から分かっていたはずだ。むしろ株主であるのに、見て見ぬふりをしてきた国も同罪ではないか。
単に経営陣を刷新するだけでなく、国には安全対策に使途を限定するような形でも、経営安定基金を積み増しするような公的支援の拡充を求めたい。
それには当然のことだが、JR北海道が旧弊を断ち切り、自ら生まれ変わる必要がある。
「今回の問題は、10年を超える歳月の間にできた仕事のしくみに原因がある。責任は過去の経営幹部にある」。元取締役の一人は自戒を込めて語っている。
にもかかわらず、いまだに取締役を降りた相談役や顧問が「秘書、車付き」のままでは、社会の納得は得られない。
北海道で代わりの鉄道事業者はいない。そのことにあぐらをかいては、再生は不可能だ。
出典URL
http://mainichi.jp/opinion/news/20131030k0000m070113000c.html
(ブログ者コメント)
○JR北のトラブル多発問題、本質的には毎日新聞「記者の目」の指摘どおりなのだろう。
○JR北のケースはさておき、一般的に言えることは、経営が厳しくなると真っ先に削られる予算の一つが安全対策費だということだ。
それは、安全対策費は対投資効果が見えにくいため、不要不急の出費だと思われがちなことが一つの原因だ。
必要な安全対策費は、いくら経営が厳しくても出さなくてはいけない。
それは分かっているのだが、どの項目を「必要な安全対策」と評価するか、いざ予算を決める段になると、頭を悩ませてしまう。
永遠の課題だ。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。