2023年6月10日12時30分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
福岡県飯塚市の中学校で6月2日午後、硫化水素の実験をした。
市教育委員会によると、2年生31人が参加したという。
実験では、まず、鉄と硫黄を混ぜ合わせて加熱し、硫化鉄を作る。
次に、硫化鉄を一部取り出し、試験管に入れ、薄めた塩酸をかけると、硫化水素が発生する。
授業後、「気持ち悪い」と訴える生徒が相次いだ。
10人が救急搬送されたが、いずれも軽症だった。
実験は理科室で実施され、ドアや窓はすべて開け放っていた。
薬品の分量にも問題はなく、硫化水素は直接臭いを嗅ぐのではなく、手であおいで嗅ぐように指導していたという。
【秋田、愛知、茨城でも】
硫化水素を発生させる中学校の理科の実験中に気分が悪くなり、病院へ救急搬送される事案が全国で相次いでいる。
飯塚市のほか、5月半ばから6月はじめにかけ、秋田県にかほ市、名古屋市北区、茨城県牛久市や筑西市でも救急搬送があり、5校で計44人。
生徒はいずれも中学2年だった。
マスクをしている生徒もおり、ある市教委の関係者は「マスクをしていると、臭いがわかりづらく、気体を吸いすぎてしまう危険性も否定できない」と話す。
中学校の学習指導要領解説では、2種類の物質を反応させる実験によって、異なる物質ができることの理解を求めている。
その例として挙げられているのが、金属が硫黄と結びつく反応だ。
ただ、指導要領には「硫黄を用いた実験では有害な気体が発生することもある」とも明記されている。
【なぜ実験が必要なのか】
「リスクがあったとしても、実施した方がいい実験はある。硫化水素はその一つだ」と埼玉大学の小倉康教授(理科教育学)は言う。
なぜ、実験が必要なのか。
鉄と硫黄が反応すると、明るく輝く。
「驚きと感動が詰まっている。理科への興味をそそられる生徒もいるはずです」
さらに、硫化水素の臭いを覚えることで、「命を守る行動ができる」という。
硫化水素が発生すると、温泉地で嗅ぐような卵が腐ったような臭いがする。
濃度が低ければ危険はないが、高くなれば命の危険もはらむ。
「オール電化の住宅が増え、ガスの臭いや火の怖さを知らない子どもたちも増えてきた」と小倉教授は指摘する。
【人員や設備の充実を】
理科の実験で事故を誘引する理由として小倉教授が挙げるのが、学校の人員と施設の不足だ。
いずれの学校も、教員1人が約30人の生徒を指導していた。
元教員や大学院生らを理科アシスタントとして雇う小中学校への補助制度はあるものの、すべての学校には配置されていないと小倉教授。
「中学校では危険な実験もあるので、複数の目が必要だ」
また、理科室に強制換気の設備がない学校も少なくないという。
「換気システムがあれば、様々な実験ができる。実験を無くせば事故は防げるが、理科離れはさらに進むだろう。人員や設備の充実が期待される」
https://www.asahi.com/articles/ASR674STXR67UTIL01Y.html
6月15日20時15分にYAHOOニュース(九州朝日放送)からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
6月、福岡県内で中学校での理科の実験の際、気分が悪くなって大勢の生徒が病院搬ばれるという事故が相次ぎました。
そもそも、なぜ硫化水素の実験が必要なのでしょうか。
化学や科学、教育の観点から専門家に話しを聞きました。
(文字情報は上記のみ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4102481dc2027a390757b26e7a69eb1ba8412c90
(ブログ者コメント)
以前、同種事例紹介時に「、実験の必要性とリスクを考えると、そろそろカリキュラムから外す時期にきているのではないだろうか?」とコメントしたことがある。
それが今回、この報道で認識を新たにした。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。