2013年9月21日8時29分に京都新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
台風18号で京都市伏見区小栗栖の民家300戸以上が山科川の支流の氾濫で浸水したのは、支流の水を山科川に逃がす排水ポンプが一時停止し、再稼働できなかったのが主な原因だったことが20日、市の調査で分かった。
市からポンプの管理を委託された業者は、作業を2人で行う決まりに反して1人で行っていた。
その作業員がけがで倒れたため、ポンプを再稼働できなかった。
停止したのは、市小栗栖排水機場の2機のポンプ。
普段は稼働していないが、大雨で山科川の水位が上昇した時に、支流の畑川に逆流しないよう、水門を閉鎖して畑川の水をポンプで山科川に排出する。
台風が接近した15日は、午後11時半前までに2機のポンプが稼働した。
しかし16日午前2時50分までに、何らかの原因で停止した。
本来なら、山科川の水位が一定量を超えた15日午後8時半前の段階で作業員を2人に増やすことになっていたが、1人のままだった。
作業員は、ポンプに詰まった流木などを取り除く場所で頭を負傷し、意識を失って倒れたという。
住民から浸水の連絡を受けた市は、16日午前4時前に排水機場に電話した。
しかし応答はなく、業者に様子を見に行くよう指示。到着した作業員が午前6時47分にポンプを再稼働させた。
市は、なぜ1人で作業を続けたのかは調査できていないという。
住民によると、畑川の氾濫で小栗栖森本町一帯の道路は午前3時半ごろには、深いところで2m以上冠水した。
市防災危機管理室は「ポンプが稼働すればここまでひどくならなかった」としている。
畑川には水位計は設置されておらず、住民の通報があるまで、市は氾濫を把握できなかった。
自宅が床上浸水した町内会長大久保さん(69)は、「ポンプの管理だけでなく、畑川の氾濫の発見も遅れており、市も業者も職務怠慢だ」と憤っている。
出典URL
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20130921000016
その後、2013年11月3日付で毎日新聞大阪版朝刊から、作業員のけがなどに関する下記趣旨の記事が、浸水範囲図付きでネット配信されていた。
今年9月の台風18号の豪雨で川が氾濫し、290戸の浸水被害が出た京都市伏見区小栗栖とその周辺で、市が管理する排水ポンプが停止したことが被害の主因となったことが、市の調査などで判明した。
3日にある検証委員会の最終会合の意見を受け、市は責任を認め、被害を補償する方針。
市によると、ポンプのトラブルによる自治体の被害補償は異例。
市によると、雨が強まった9月15日夜、水門を閉めて運転を開始したが、翌16日午前2時50分までに2台あるポンプが相次いで停止。
ポンプ場内で1人で監視していた委託業者の作業員は、「たまったごみの除去中に角材のようなもので頭部を打ち、一時的に気絶してしまった」と説明しているという。
市が設置した検証委員会は「水量はポンプ能力を超えておらず、稼働していれば被害はほとんどなかった」と結論付ける見通しだ。
委託業者は8カ所のポンプ場の管理を請け負い、契約では、稼働時は2人が監視することになっていた。
ところが、広範囲の豪雨で人手が足りず、1人だったという。
浸水域には民家だけでなく事業所もあり、休業補償も含めると「相当な額になる」(同市土木管理部)とみられる。
市は先月末、補償額算定のための対策チームを発足させ、詳細な被害状況の調査をしている。
出典URL
http://mainichi.jp/area/news/20131103ddn041040018000c.html
(ブログ者コメント)
頭部を打って気絶した作業員は、ヘルメットを着用していたのだろうか?
はたまた、この職場で着用は義務づけられていたのだろうか?
そういった点が気になったが、報じられた記事は見つからなかった。
(2024年6月27日 修正1 ;追記)
2024年6月26日19時54分にYAHOOニュース(京都新聞)からは、監視役の作業員は眠り込んでいた、市が業者に請求した損害賠償額が全額認められたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(新情報に基づき、タイトルも修正した)
2013年9月の台風18号通過時、京都市伏見区で広範囲に浸水被害が発生したのは、同区の小栗栖排水機場のポンプ停止が原因だったとして、京都市が当時の委託業者などを相手取り、約11億3100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、京都地裁であった。
松山裁判長は業者側の責任を認め、請求通りの賠償を命じた。
市側は、浸水被害者や保険会社への保障など市が負担した経費の賠償を求めていた。
ポンプの維持管理業務を委託されていたOサービス(京都市右京区)側は、ポンプの停止は不慮の事故が重なったためで、浸水被害との因果関係も不明だとして争っていた。
判決によると、O社は、2人体制で行う運転監視業務を従業員が1人で行っていたところ、その従業員が眠り込み、約4時間にわたってポンプが停止した。
松山裁判長は判決理由で、O社が交代要員を確保する義務に違反していたと指摘。
当時の雨量やポンプの排水能力などから判断して、浸水被害はポンプの停止が原因だったと認定した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8aea1dacc024e8b6fd77371ad5fe8b58ce109275
6月26日18時1分にNHK京都からは、作業員は設備の操作方法を十分理解していなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
裁判で市は、浸水被害は、排水施設の業務委託をしていた業者の操作ミスなどが原因だったとして、業者に賠償を求めていました。
26日の判決で、京都地方裁判所の松山裁判長は「浸水は、排水施設のポンプの停止が原因だと認められる。従業員は設備の操作方法を十分理解しておらず、代表取締役は業務を遂行する知識や技能を教育する体制の構築を怠った」などと指摘して、市の訴えをおおむね認め、業者側に11億3000万円余りを支払うよう命じました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20240626/2010020355.html
(ブログ者コメント)
判決内容に「眠り込み」とあるが、当初は「頭を打って気絶」という報道。
また、「操作ミス」というのも当初の報道にはなかった言葉だ。
そこで調べた結果、検証報告書に「ケガと疲労で4時間倒れていた」、「停止させたポンプを自動運転に復帰させるため操作盤の復帰ボタンを押したが、操作機の復帰ボタンを押さないと復帰しないシステムだった」などと書かれていた。
報告書の該当記述は下記参照。
『小栗栖排水機場周辺における浸水被害 検証報告書』
(平成25年11月5日 小栗栖排水機場周辺における浸水被害検証委員会)
・・・
(p23/45)
午前2時20分 1号ポンプ停止
午前2時50分 2号ポンプ停止
午前3時ごろ? 委託職員が洪水対策作業中に事故に遭い,気を失う
午前6時40分 ポンプが動いているか確認しに来た別の委託職員が倒れている
職員を発見。
午前6時47分 1号ポンプ2号ポンプ運転再開
(p26/45)
(3)ポンプ停止の原因(実地検証)
①ポンプ停止に係る新たな供述
・1号ポンプについては,除塵機のベルトコンベアーに引っかかったポリバケツを撤去するために,委託職員Aが16日午前2時20分に非常停止ボタンを操作し停止させた。
・2号ポンプについては,16日午前2時20分に1号ポンプを停止させたことで自動的に稼働した2号ポンプを停止させるために,委託職員Aが16日午前2時50分に停止させた。
※騒音の少ない電動の1号ポンプを夜間に優先して稼働させるため,ディーゼル式の2号ポンプを一旦停止させた。
・委託職員Aが上記により停止させた1号,2号ポンプを自動運転に復帰させようとして,16日午前2時54分に,3階中央制御室の操作盤で復帰ボタンを押した
(本実地検証では,本人は2階で操作したか3階で操作したかの記憶が定かではなかったが,自動運転に復帰していないことから,3階での操作であったと推定される)。
・しかしながら,2階の操作機の復帰ボタンを押さないと自動運転に復帰しないことから,実際には運転を停止した状態のままであった。
②ポンプ停止の原因
今回のポンプ停止の原因は,次の2点と考える。
・委託職員Aが午前2時20分に非常停止させた1号ポンプ及び午前2時50分に非常停止させた2号ポンプについて,3階中央制御室の操作盤の復帰ボタンを押したことで,実際には自動運転に復帰していないにもかかわらず,復帰できたものと思い込んでいたこと。
・そのような状況の中で,ゴミ処理中の不慮の事故によるけがと疲労により待機室で4時間弱倒れていたこと。
また,本来2名体制であるべきところが1名体制であったことから,約4時間にわたりポンプの再稼働ができなかった。
・・・
https://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/cmsfiles/contents/0000159/159261/houkokusho.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。