静岡県に住む女性の靴に毒物の化学薬品を塗り、殺害しようとしたとして、警察は女性の同僚で、山梨県の会社員の男を殺人未遂の疑いで逮捕した。
女性は足の指を切断する手術を受けたという。
警察によると、男は否認しているという。
警察によると、男は去年12月上旬、勤めている静岡県内の会社で、同僚の40代の女性の靴の内側に毒物に指定されているフッ化水素酸の液体を塗って女性を殺害しようとした疑いが持たれている。
足に痛みを感じた女性が病院を受診し、その後、薬品で足の一部が壊死していることがわかり、病院が通報したという。
女性は足の指5本すべてを切断する手術を受け、全治3か月の大けがをした。
警察によると、男は会社の業務で使う化学薬品の取り扱いを担当し、女性に好意をもっていたとみられるということで、警察でいきさつを詳しく調べている。
静岡県工業技術研究所によると、この薬品はガラスの加工のほか半導体の洗浄などに使われている。
岡本上席研究員は「この薬品は毒物に指定されており、金属製の容器に鍵をかけて保管して持ち出されないように管理する必要がある。」と話している。
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http://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/3033507131.html?t=1364507543961
3月29日7時38分に読売新聞からは、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
捜査関係者などによると、女性は昨年10月にも、勤務後にブーツに履き替えた際、しばらくして右足に痛みを感じ、病院で治療を受けたという。
女性は全治1か月以上の重傷で、職場復帰した直後、今回の事件の被害に遭ったという。
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また、4月4日付の読売新聞静岡版からは、フッ化水素酸の危険性に関する詳しい記事などが、下記趣旨でネット配信されていた。
日本中毒情報センター(本部・茨城県つくば市)によると、フッ化水素酸は、触れると体の表面に被害がとどまる硝酸や硫酸などとは異なり、体内に素早く吸収されて低カルシウム血症を引き起こす。体表の2・5%が触れただけで死亡した例もあるという。
捜査関係者によると、被害者の女性は靴を履いた際、「湿っているなと感じた」程度だったが、約20分後に痛みを感じ出したという。
フッ化水素酸に詳しい専門家は、濃度が50%以上のフッ化水素酸の場合、触れた瞬間に激痛が走るが、痛みを感じるまである程度の時間が経過していることから、「比較的薄めだったのではないか」と分析する。
実際、これまでの警察の捜査では、勤務先にあるフッ化水素酸のうち45%程度のものが、通常の使用からは考えられない不自然な量の減り方をしていたことがわかっている。
このため専門家は、「犯罪実行者はフッ化水素酸の特徴を知ったうえで、時間差があり、薬物による症状との判断が困難な状況にして、犯行の発覚遅れを狙ったのでは」と指摘している。
警察は、フッ化水素酸の性質に詳しい容疑者が、発覚を遅らせようと濃度の薄いものを使った可能性もあるとみて、調べを続けている。
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(ブログ者コメント)
ブログ者は、フッ化水素酸には強い腐食性があると知ってはいたものの、これほど強いとは思ってもみなかった。
kis-netには、有害性について下記記載がある。
○毒物。通常50~60%程度の溶液になっている。弱酸だが毒性、腐食性が激しい。
○目、鼻、のどを強く刺激する。蒸気を吸入すると気管支、肺、のどが侵され、一時的に声がでなくなる、肺は肺水腫を起こし、重いと呼吸麻痺を起こして死亡する。慢性中毒は全身衰弱をきたす。液が付着すると目、皮膚に障害を与える。
○事故時保護具概要;周辺空気と無関係の(重装備の)呼吸防護器具,全身防護服を着用する。
他のMSDS数点を調べても同程度の記載だ。
しかし、この程度の記載では、今回の事例にみられるほどすさまじい腐食性があることは、なかなか伝わってこない。
フッ化水素酸を取り扱う場合は、くれぐれもご用心。
(2013年4月22日 修正1 ;追記)
2013年4月7日12時0分にmsn産経ニュースから、フッ化水素酸の腐食性に関する更なる情報が、下記趣旨でネット配信されていた。
昨年12月5日、女性は、普段通りに研究所から出てスニーカーに履き替え、車を運転して帰宅しようとした。左の靴が「ぬれているな」と感じてはいた。それはやがて足のかゆみとなり、20分後にそれは耐え難い激痛に変わった。
女性は途中にあった病院に駆け込んだが、左の足指は骨まで壊疽を起こしていた。医師は壊疽の進行を食い止めるため、メスで指先を5本とも切り取らざるを得なかった。
通常、指を切断する際には大きな抵抗を感じるものだが、「骨まで軽く切れた」ほどだったという。
実は、女性が足に激痛を感じたのは、今回が初めてではなかった。同年の10月にもブーツを履いた右足に激痛を感じ、病院に飛び込んだ。
捜査関係者は「12月のときよりは症状が軽かったものの、やはり病院で足指の先端を切断している。彼女は両足の指10本すべてを切断するはめになった」と話している。
靴に塗るだけで、女性の足をわずか数十分で壊死させたフッ化水素酸とは、一体どのような“毒薬”なのだろうか。
化学熱傷の治療に詳しい医療関係者によれば、フッ化水素酸は、ガラスやゴム、皮革などを溶かすため、磨りガラスなどガラス製品の加工や、焦げ付きにくいフッ素樹脂製フライパンを作る際などにも使われる一般的な薬品だという。
危険性は濃度によって異なり、50%以上の濃度だと触れただけで激痛がするが、それ以下の濃度でも、皮膚の表面のタンパク質を通して骨まで瞬時に浸透し、壊死させるという。
また、フッ化水素酸に含まれるフッ素イオンは血液中からカルシウムを奪い、「テタニーショック」と呼ばれるけいれんを起こして死に至らしめる。
このため、身体のわずか1%以下の面積がフッ化水素酸に触れただけでも、死に至ることがあるという。
この関係者は、女性が痛みを感じたのが靴をはいてから約20分ほどたってから、という“遅発性”に注目する。
「10月に使われたものも12月に使われたものも、濃度が40パーセント程度だった可能性が高い。12月の方が症状が重かったのは、気温が低いためにフッ化水素酸が揮発せず、靴の中に多く残留していたためではないか」と指摘する。
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その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。