2021年6月28日20時17分に毎日新聞から下記趣旨の記事が、過去の被害写真や都道府県別の被害危惧ため池リスト付きでネット配信されていた。
すぐにでも防災工事を実施しないと大雨などで決壊し被害を及ぼす恐れのある「危険なため池」が全国に少なくとも5059カ所あることが、毎日新聞の都道府県アンケートで明らかになった。
農業用ため池の危険性は見過ごされがちだが、決壊による人的被害も相次いでいる。
本格的な大雨シーズンを前に、国内に約16万カ所ある身近な存在に潜むリスクを探った。
「農業用に普段から使っていた。まさか決壊するなんて誰も
想像していなかった」。
福岡・大分両県で死者・行方不明者42人が出た2017年7月5日の九州北部豪雨で山あいのため池が決壊し、3人が亡くなった福岡県朝倉市山田地区の元自治会長、久保山さん(男性、69歳)は振り返る。
線状降水帯による大雨で、集落の上部にある「山の神ため池」(貯水量約7万立方メートル)の上の斜面が崩れたのは5日の夜だった。
大量の流木が、ため池の排水設備をせき止め、堤防が耐えきれなくなり決壊。
濁流は、その下にあった別のため池の一部も壊し、ふもとの集落で3人が土砂にのみ込まれた。
豪雨で決壊するなどしたため池は、市内108カ所中、4割超の47カ所に上る。
1年後の18年7月に起きた西日本豪雨でも、広島県福山市の高台にある二つのため池が決壊、土石流がふもとの住宅を襲い、3歳女児が亡くなった。
九州大の矢野真一郎教授(河川工学)によると、犠牲者が出た福岡と広島のため池は、複数のため池が棚状に連なる「重ね池」だった。
連鎖的に決壊し被害が拡大する恐れがあるが、いずれも住民の間でリスクは周知されていなかった。
19年10月に東日本で死者100人以上が出た台風19号でも、宮城県白石市の「重ね池」が決壊し、約20戸が浸水した。
だが、一般に知られていないだけで、ため池の決壊は以前から各地で起きていた。
農林水産省によると、09~18年度に計9663カ所が被災し、被害額は計957億円。
このうち決壊は395件あり、原因は豪雨が98%、地震が2%だった。
人的被害が相次いだことで、国もようやく「危険なため池」の把握に乗り出した。
ため池の決壊で8人が犠牲になった東日本大震災後、仮に決壊すれば周辺に被害が出る恐れのある「防災重点ため池(現在は防災重点農業用ため池)」を約1万1000カ所選定。
しかし、女児が亡くなった広島県のため池が対象になっていなかったことから、18年に基準を見直し、今回のアンケートで、21年3月末時点で5万1205カ所に上ることが分かった。
19年7月には、ため池を巡る初めての管理法である「農業用ため池の管理・保全法」を制定。
所有者らに都道府県への届け出を義務化する制度を始めた。
国はさらに、都道府県に対し、今年3月末までに全ての防災重点農業用ため池について、ハザードマップを作製するよう求めた。
ただ、アンケートで判明した作製済みのため池は3万379カ所で、防災重点農業用ため池の59%にとどまる。
一方、国の防災白書(21年)によると、各種ハザードマップの市町村別の整備状況は、河川の洪水(98%)、津波(92%)、土砂災害(90%)。
国や自治体も、ため池防災に目を向けるようになったとはいえ、対策は緒に就いたところだ。
【築造時期、所有者不明…実態把握難しく】
ため池の災害対策が進まなかった背景には、築造時期が、古くは江戸時代以前にさかのぼるために、権利関係が複雑で、所有者すら不明のため池が多く、自治体が手を付けづらいという事情もある。
ため池は大きな河川や降水量に恵まれない瀬戸内地方を中心に西日本に多く、農林水産省によると、7割は江戸時代までに作られたか、築造時期が不明だ。
18年の同省の聞き取り調査では、約3割は所有者が不明だった。
19年制定の「農業用ため池の管理・保全法」で実態把握が進んだとはいえ、20年3月末時点でも、同法で届け出が必要になった防災重点ため池のうち、10府県の計1608カ所は所有者不明などで届け出がない。
届け出が必要ない、それ以外のため池になると、今も実態把握は難しいままだ。
今回のアンケートで、ため池防災で課題と思うことは何か、五つの選択肢(複数回答可)を挙げて聞いたところ、大阪府や岩手県など24府県が「ため池が古いため権利関係が複雑」と回答。
新潟県や和歌山県など12府県は、使われなくなったため池を廃止しようにも「所有者・管理者が不明で手間がかかる」と答えた。
国は同法で、所有者が不明の場合、市町村が管理者となることを認めたが、マンパワーや予算に限りがある自治体が全て管理するのは現実的ではない。
とはいえ、手をこまねいたまま被害が起きれば、当然、行政の責任が問われることになる。
西日本豪雨で亡くなった広島県福山市の女児の両親は今月7日、「ため池の安全管理を怠った」として、決壊したため池を管理していた市などに対し、5900万円の損害賠償を求めて提訴した。
九州大の小松利光名誉教授(河川工学)は、「ため池は、水害対策の中で後回しにされてきたが、近年は線状降水帯などで豪雨災害がひどくなっており、ため池の被害も顕在化してきた。国や自治体は対策を急ぐ必要がある」と指摘する。
【災害防ぐ取り組みも】
防災重点農業用ため池256カ所を抱える福岡市は、今年初めて、ため池の廃止工事に着手した。
城南区にある貯水量約1万9000立方メートルの農業用ため池は、水利組合の18人が長年管理してきたが、農家の減少と高齢化で、草刈りなど日常的な管理も困難になっていた。
かつては水田だった周囲には宅地が広がるが、ため池自体は木々に覆われた小高い丘にあり、存在を知らない住民もいる。
こうした事情も踏まえ、水利組合が市に廃止工事を要請していた。
組合の代表で兼業農家の中村さん(男性、68歳)は、「仲間だけでの管理は限界。決壊したら大変なことになる」と語る。
所有者や管理者がはっきりしているため池は、廃止するのが安全への近道だ。
だが、実際はそう容易ではない。
3人が犠牲になった福岡県朝倉市のため池は、農業用水としての利用は減少していたが、地域の防災用に使われていた。
住民らは豪雨後、廃止も検討したが、存続の声が多く断念。
市が壁面をコンクリートで補強する防災工事を実施し、今年6月、利用を再開した。
そうした中、各地で増えているのが、ため池管理の知識を持った外部の専門家が、ため池の管理者らの相談に乗ったり、現地調査や技術指導をしたりして災害を防ぐ、「ため池サポートセンター」だ。
農業用ため池が全国最多の兵庫県が16年に初めて開設。
アンケートでは、33道府県が開設済みか21年度中に開設予定と回答し、検討中も6県あった。
全国すべてのため池の位置や基本構造をデータベースに登録し、地震発生直後や豪雨のピーク前に、決壊が予測されるため池がある自治体に知らせる防災システムも、20年4月から全市町村に導入された。
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発し、今月からは農家など自治体以外の管理者もスマートフォンで確認できるようになった。
同機構の担当者は、「災害に弱いため池を知ることで、日常の管理に生かしてほしい」と活用を促している。
https://mainichi.jp/articles/20210628/k00/00m/040/203000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。