2022年1月31日2時0分に日本経済新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
労働力人口が減っていく日本は、一人ひとりの生産性向上とシニアや女性の労働参加が欠かせない。
処方箋の一つが、職種によって偏りのあるテレワークの拡大。
アサヒグループホールディングス(HD)は工場の監視工程を遠隔化し、作業効率の5倍向上を目指す。
「テレワーク格差」を埋める模索が始まった。
【遠隔地の工程監視も】
タンクを見下ろすガラス張りの一室。
ずらりと並ぶモニターに温度や圧力の数値が表示される。
アサヒビール最大の生産拠点、茨城工場(茨城県守谷市)は1月下旬から、生産現場のテレワーク化に取り組む。
製造工程に供給する電気や蒸気のデータは、生産設備に有線でつないだ計器を確認していた。
その一部を無線で飛ばし、遠隔監視する実証をする。
まずは工場内で監視するが、今後、オフィスや従業員の自宅のパソコンなどで見られるようにする。
2025年までに国内8工場を同様の仕組みにし、全ての工場のデータをオンラインで一元管理できるよう目指す。
茨城県の作業員が北海道の工程を監視することも視野に入れる。
狙いは人手不足への対応だ。
国内の主要事業会社は、従業員の3割が50代以上。
バブル期の大量採用世代も定年が近づく。
アサヒビールは21年4月、再雇用の上限を65歳から70歳に引き上げた。
ただ、生産部門の若手確保は簡単ではない。
シニアを含む人材の生産性を高める必要がある。
監視工程は24時間365日、3交代で担当者が張り付かなければならない。
深夜勤務があり、働き手の身体的負担も重い。
効率化の余地は大きい。
複数拠点の作業を1人でできれば、1人当たりの生産性は高まる。
【50人を10人程度に】
テレワーク化の責任者であるアサヒグループジャパンの田中SCM部長(48)は、「完全なテレワークが実現すれば、50人の監視工程の人員を10人程度に減らせる。シニアの働く場所も広げられる」と話す。
アサヒは19年、長距離通勤者が多いオーストラリアの工場で、緊急時などに管理職層が生産工程のデータを在宅で監視するシステムを導入した。
それが製造部門のテレワーク化に活用できると注目され、国内工場への展開が決まった。
システムのハードルは高くない。
大きな投資も不要という。
ただ、不正アクセスへのセキュリティー対策や、通信障害時に現場とどう連携するかなどが課題となる。
緊急時の対応に必要な現場の人員配置も検証課題となる。
そのため、品質リスクが相対的に少ない電力供給の監視工程から始める。
安全性が確認できれば、生産設備の運転などに遠隔化を広げるか検討する。
工場部門でも、場所を選ばない働き方を広げたい考えだ。
テレワークの職種間格差は大きい。
ヤフーなどホワイトカラー中心の大手企業は在宅勤務が標準になったが、工場はテレワークが広がっていない。
アサヒも、事務職の在宅比率は5~7割だが、製造現場は基本的に出勤。
今回の取り組みは、格差解消の一歩となる。
【在宅勤務の可能性広げる】
テレワーク化が遅れる職種のひとつ、販売職。
ケイアイスター不動産は21年6月、戸建て住宅販売子会社に「ロボット部」を設けた。
スタートアップのタイムリープ(東京・千代田)の遠隔接客システムを使い、首都圏の住宅展示場約10カ所で専用ディスプレー越しにオンライン接客する。
同社の社員の3割は女性。
不動産販売は顧客のスケジュールに合わせる必要があり、労働時間が不規則になる。
子供のいる女性などに在宅勤務の可能性を広げ、人材の引き留めを狙う。
坂口さん(女性、31歳)は21年5月に育児休暇から復帰し、ロボット部で働く。
出産前は埼玉県の拠点の店長として車で走り回る日々。
勤務時間の半分を移動に費やしていた。
移動に時間を割かれることが少なくなり、「育児との両立が容易になった。キャリア継続に自信を持てた」と話す。
日本は主要7カ国(G7)で労働生産性が最も低い。
要因の一つは、女性の労働力を十分に生かせていないことだ。
職場の支援がないため、出産を機にフルタイムの正社員をあきらめ、低賃金の非正規雇用に転じる女性は少なくない。
販売など、女性の多い職種のテレワーク化は、生産性の底上げに結びつく。
ロボットを使った遠隔勤務の支援サービスを手掛けるスタートアップのテレイグジスタンス(東京・中央)には、人手不足に悩む物流業などから導入の相談が増えているという。
富岡最高経営責任者(CEO)は、「エッセンシャルワーカーに、場所にとらわれない働き方を提供できる」と話す。
問題に直面しつつも、課題を乗り越えるテレワークの成功事例は、着実に芽生えている。
それを共有することは、日本の生産性革新の可能性につながる。
【職種間の格差大きく】
パーソル総合研究所(東京・港)が21年夏、国内の約2万人を対象に行った調査では、テレワークの平均実施率は27%だった。
職種別で見ると、経営企画(53%)や商品開発・研究(51%)などのホワイトカラー職は半数を超えるが、製造職(4%)や販売職(3%)は1割に満たない。
テレワークを行っていない人に理由を聞いたところ、「テレワークで行える業務ではない」(47%)が最も多かった。
業種別の格差も大きい。
同じ調査では、情報通信業(60%)が突出して高い。
対面サービス中心の卸売り・小売業(20%)や宿泊・飲食サービス業(14%)は低かった。
従業員1万人以上の大企業(45%)と同10~100人未満の中小零細企業(15%)でも大きな開きが出た。
IT投資の水準が影響していそうだ。
一方、テレワークが進む業界でも、生産性向上を阻む課題が見えてきた。
内閣府が21年秋、約1万人に「テレワークのデメリット」を尋ねたところ、「社内での気軽な相談・報告が困難」(36%)が最多で、「画面情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」(30%)が続いた。
米アドビが21年春、日米英など7カ国約3400人に実施した調査では、「テレワークの方がオフィス勤務より仕事がはかどる」とした人は、日本で42%。
世界平均(69%)を下回り、調査国の中で最低だった。
アドビの別の調査では、「在宅勤務で同僚とのコミュニケーションが取りにくくなった」と答えた人は米国は14%、日本は55%だった。
タスクが明確な米国と、職務が限定されず「報告・連絡・相談」が重視される日本との働き方の違いが影響していそうだ。
テレワークの幅と質の向上が求められている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1404Q0U2A110C2000000/?n_cid=NMAIL007_20220131_A&unlock=1
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。