(1/2から続く)
5月14日付で毎日新聞東京版からは、事故の波紋が広がっているなど、下記趣旨の解説記事がネット配信されていた。
園児2人が死亡、1人が重体、保育士を含む13人が重軽傷を負った大津市の事故を受け、滋賀県は14日、現場の交差点を調べ、車が乗り上げた歩道に金属ポールを立てるなどの安全対策を検討する予定だ。
全国の保育園でも散歩ルートの確認や見直しの動きが広がる一方、歩行者を守るガードレールの設置は自治体に委ねられており、課題も残る。
事故から5日たった13日。
現場となった大津市大萱(おおがや)6の滋賀県道交差点から200mほど南にある園児らが通うレイモンド淡海(おうみ)保育園(同市萱野浦)は、受け入れを再開した。
職員が見守る中、園児らは保護者に手を引かれながら園内へ入っていった。
事故は8日午前10時15分ごろ発生。
同市一里山3、無職、S容疑者(52)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で送検=の乗用車が右折し、対向車線を直進してきた無職女性(62)=同法違反(過失致傷)容疑で現行犯逮捕後に釈放=の軽乗用車と衝突。
軽乗用車は歩道に乗り上げ、信号待ちをしていたIちゃん(男児、2歳)とHちゃん(女児、2歳)が死亡、男児(2歳)が意識不明の重体となり、保育士を含む13人が重軽傷を負った。
事故を受け、行政も対策を進める。
大津市は9日、市立と民間の保育園、幼稚園など計180カ所に対し、散歩コースの危険箇所を改めて点検するなど、安全管理を徹底するよう通知した。
点検に市職員が同行することも計画している。
13日には緊急対策会議を開いて、今後の方針を確認した。
一方、現場の道路を管理する県は、当面の措置として、事故時の衝撃を和らげる緩衝具「クッションドラム」6個を交差点の歩道などに設置した。
事故現場も含め、県が管理している1日あたりの交通量が1万台以上の交差点について今月中に安全を確認し、必要な対策を打ち出す方針だ。
【柵設置は自治体判断】
「日本は、諸外国に比べ、歩行者が犠牲となる割合が非常に
高い」。
警察庁の栗生長官は9日の記者会見でこう述べ、通学路のガードレール設置などの安全対策を関係機関と進める考えを示した。
警察庁によると、各国の2016~18年のデータを比較したところ、日本は交通事故死者の約36%を歩行者が占めるが、イギリスは約25%、アメリカとフランスは約16%、ドイツは約15%となっている。
かつて警察庁科学警察研究所で交通事故の鑑定や分析をした山梨大大学院の伊藤安海教授(安全医工学)は、国内の道路について、「1964年の東京五輪に合わせ、歩行者の安全よりも車が走りやすい道づくりが優先された」と歴史的背景を挙げ、その後も、ガードレールの設置や、車がスピードを出しにくい道路にするなどの安全対策は広がっていないと分析する。
ガードレールを含む防護柵の設置基準について、国交省は「歩行者の危険度が高い」などと定めているが、道路の幅や沿道の状況、交通量などはそれぞれ異なるため、明確な基準を設けるのは難しいという。
設置は道路管理者である自治体に委ねられており、同省の担当者は、「一律に設置すると、点字ブロックや車いすの利用者などには不便になる可能性がある。周辺の交通状況を総合的に判断するしかない」と話す。
文科省は、12年4月に京都府亀岡市で児童ら3人が死亡した事故を受け、全国の通学路を対象に緊急点検を実施。
横断歩道やガードレールがないような危険箇所が計7万4483カ所確認された。
18年3月末までに約97%で通学路の変更や路肩の拡幅などの安全対策がとられたが、土地の買収が難航するなどの理由で対策が進んでいない箇所もあるという。
また、通学路以外の幼稚園や保育園の経路は対象外だ。
一方、警察庁によると、昨年に全国で直進車と右折車の死亡事故は130件あった。
右折車の運転手が「まだ直進車は来ない」と考えて右折を始め、衝突するケースが目立つという。
伊藤教授は、「交差点が混雑している場合、焦って右折発進してしまうことも多い」と指摘。
右折車両を感知器で検出し、青信号を延長する技術もあり、「信号を守れば右折できるという安心感があれば、運転手は無理をしなくなる」と話す。
伊藤教授は、「運転手の安全への認識と信号の技術、ガードレールなどの防護柵を組み合わせれば有効だ」と指摘する。
【園外活動、悩む保育所】
全国の保育所では、散歩ルートの安全確認と見直しの動きが広がっている。
「この五差路は直進か左折かが分かりにくい。ウインカーを出さずに左折する車も見かけるので、注意しないと」。
横浜市の認可保育所「キッズパオ日吉あおぞら園」では13日、保育士らが散歩に使う主な道を歩き、危険はないか確認した。
「いつも通っている道でも、季節や工事によって状況が変わる」と平本園長。
危険箇所を色分けしたシールを地図に貼り、保護者にも公開するという。
運営会社のマミーズファミリー(本社・松山市)は全国に40園を展開。
キッズパオ日吉を含む34園には園庭があるが、日常的に散歩をしているため、15日までの再点検と報告を指示した。
東京都文京区の別の私立保育所もルートの検証をする予定で、園長は「ガードレールのある交差点は交通量が多いし、遠回りをすると歩く時間が長くなってしまう」と頭を痛める。
認可保育所には、児童福祉法に基づき、子どもの数に応じた屋外遊戯場整備が義務付けられている。
しかし、公園などを代替地とすることも認めており、厚労省は2011年に「移動の安全が確保されていれば、必ずしも保育所と隣接する必要はない」と通知した。
国の12年度調査では、全国の93%の認可保育所が、園庭だけで遊戯場の面積基準を満たしていたが、待機児童対策で増設が急がれる都市部では様相が異なる。
民間団体「保育園を考える親の会」が全国主要100都市で調査したデータによると、基準を満たす園庭を持つ施設の割合は、15年度の80.3%から18年度は73.8%に低下。
東京23区では12区が5割以下で、特に施設が急増した地域で「園庭なし」が多かった。
また、認可外施設には、そもそも遊戯場の確保義務もない。
一方、地域交流や交通ルールを学ぶ観点から、園外での活動は必要だとする声も強い。
長男(1歳)を都の認証保育所に預ける目黒区の堀田さん(女性、21歳)は、「事故に遭わないかの心配はあるが、外には毎日出掛けてほしい」と訴える。
NPO法人「保育の安全研究・教育センター」の掛札代表理事は、「保育園の散歩中の交通事故死は、私が知る限り、近年起きていない。今回は『巻き添え事故』で、理由なく散歩を自粛するのは過剰反応だ。ガードレールがない歩道が大半であることや、園庭がなくても保育園設置が認められることこそ問題ではないか」と指摘する。
【複数の歩行者らが巻き込まれた主な事故】
2006年9月
埼玉県川口市で、脇見運転のワゴン車が保育園児の列に突っ込み、園児4人が死亡、保育士と園児計17人が重軽傷
2011年4月
栃木県鹿沼市で、登校中の児童の列にクレーン車が突っ込み小学生6人が死亡
運転手はてんかんの持病を隠していた
2012年4月
京都府亀岡市で、無免許の少年の車が集団登校中の列に突っ込み、児童2人と妊娠中の保護者の計3人が死亡、7人が重軽傷
2016年10月
横浜市港南区で、認知症の高齢男性が運転する軽トラックが集団登校の列に突っ込み、小学1年の男児が死亡、7人が重軽傷
2018年5月
神奈川県茅ケ崎市で、高齢女性が運転する車が横断歩道を渡る歩行者ら4人をはね、自転車の女性が死亡
2019年4月19日
東京都豊島区のJR池袋駅近くで、高齢男性が運転する車が暴走
3歳の女児と母親が死亡、8人が重軽傷
2019年4月21日
神戸市中央区のJR三ノ宮駅前で、市営バスが横断歩道を渡っていた歩行者をはね、2人が死亡、6人が重軽傷
出典
『クローズアップ 遅れた歩行者安全策 大津事故で各地見直し』
https://mainichi.jp/articles/20190514/ddm/003/040/038000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。