2016年11月9日付で毎日新聞東京版朝刊から、発災時の状況に関し、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
地下約25mの作業現場に、土砂混じりの水が勢いよく噴き出した。
「ここから離れろ!」「ドーン」。
8日早朝、福岡市の博多駅前で起きた道路陥没事故。
大規模な崩落は、何らかの理由で粘土層を突き抜けた地下水が招いたとみられ、脱出はわずか15分前だった。
工事関係者によると、午前5時ごろ、市地下鉄七隈線の延伸工事に当たっていた作業員9人に緊張が走った。
崩落の兆候を示す水漏れが、現場のトンネル上部から始まったからだ。
線路を敷く空間をつくるために、硬い岩盤層を削っては、崩落を防ぐためにコンクリートを吹き付ける作業の最中。
トンネルの上には水がたまりやすい砂の層があり、トンネルにしみ出すことはあったが、噴き出すことはなかったという。
やがて、水に土砂が混じり出す。
作業員は間もなく現場から離れ、地上へつながる階段やエレベーターがある100m以上離れた「立て坑」を目指した。
その直後、「ドーン」のごう音。
工事に携わる男性(23)は、崩落の様子を「隕石が落ちたようだった」と振り返る。
9人は、間一髪で難を逃れた。
しかし、地上の駅前通りの崩落はやまない。
破断した下水管から飛び出す水が周囲を浸食。当初2カ所だった穴は午前7時25分ごろにつながり、通りを断絶、歩道や信号機ものみ込まれた。
注ぎ込む下水、基礎をむき出しにしたビル……。
午前8時40分ごろには、長さ約30m、幅約27m、深さ約15mの巨大な穴が出現した。
ガス漏れもあり、現場には汚物をまき散らしたような臭いが立ち込めた。
[事故の経過]
4:25ごろ JR博多駅前の市道交差点付近で、掘削作業中のトンネル天井部から土砂が剥げ落ちる
5:00ごろ トンネルに水が流入。作業員が避難
5:10ごろ 工事関係者がフェンスを置き、周辺道路を封鎖
5:14 工事関係者から110番
5:15ごろ 地表の道路2カ所が陥没
5:16 約800戸が停電
5:20 県警が周辺の通行規制を開始
7:25ごろ 陥没箇所がつながり、大きな穴に
8:40ごろ 陥没が長さ約30m、幅約27m、深さ約15mに拡大
9:45 市が、博多区の一部に避難勧告
10:10 周辺の商業ビルなど8棟19戸へのガス供給を停止
11:20 市長が記者会見し、市営地下鉄の延伸工事が原因になった可能性を指摘、「管理責任は市にある」と陳謝
13:30ごろ 市が埋め戻し作業を開始
出典
『博多陥没 脱出15分後「ドーン」 地下鉄作業員、間一髪』
http://mainichi.jp/articles/20161109/ddm/041/040/040000c
11月8日23時44分に朝日新聞からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
市などの説明では、陥没現場は地下水を含む砂や泥などの堆積層の下に硬い岩盤があり、地下約25mの岩盤層にトンネルを掘り進んでいた。
まず幅9m、高さ5mの半円状のトンネルを掘り、幅15m、高さ7mまで徐々に広げていた。
ところが、8日午前4時25分ごろ、岩の表面がぽろぽろとはがれる「肌落ち」と呼ばれる異状に作業員が気づいた。
コンクリートを吹きつけて対応したが、落ちる勢いに追いつかず、午前5時ごろには、トンネル上部の岩盤層で遮られるはずの地下水も漏れ出した。
止めきれないと判断した作業員9人が地上に退避して、すぐに陥没が始まった。
市交通局は、「何らかの原因で、想定よりもろかった岩盤が突き破られ、地下水がトンネルに流れ込んだ可能性がある」と説明した。
出典
『地下鉄延伸工事で大規模陥没、岩盤見込み違いか 博多』
http://www.asahi.com/articles/ASJC85KNXJC8TIPE04B.html
11月9日3時56分に朝日新聞からは、トンネル掘削工法に関する、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
トンネルの掘削法には主に、周囲を補強しながら硬い岩盤を掘り進む「ナトム工法」、軟らかい地層に円筒形の掘削機を押し込んで壁面を固めながら掘り進む「シールド工法」、地表から直接掘り進める「開削工法」がある。
ナトム工法の費用は、シールド工法の半分以下とされる。
現場では、深さ約25mの岩盤層を、ナトム工法で掘り進んでいた。
市交通局によると、岩盤層の上には粘土層や地下水を含む砂の層があることがわかっており、トンネルの上に岩盤層が厚さ2mほど残るようにして掘削する計画だった。
ところが、掘り進めるうちに、岩盤層の上部の「福岡層群」という地層が大きく上下に波打ち、計画通りでは、一部で岩盤層が1mほどになることが判明。
地下水が漏れないよう、トンネルの天井部を1m下げるよう、今年8月に設計を変更していた。
それでも、事故は起きた。
七隈線の建設技術専門委員会のメンバーの三谷泰浩・九州大教授(岩盤工学)は、「福岡層群には、触るとぼろぼろになるような軟らかい石炭のような層が含まれる。これが陥没の引き金になった可能性がある」と指摘する。
ナトム工法では、トンネルの周囲に鉄筋のボルトを挿し、壁面にコンクリートを吹き付けて補強しながら岩盤を掘り進む。
その作業中に石炭のような層を傷つけ、崩れ始めたのでは、とみる。
これが「アリの一穴」のようになり、岩盤の上にある堆積層が順に崩れ、最終的に地表近くの地下水がトンネルまで流れて、大規模崩落につながった可能性があるという。
一方、谷本親伯・大阪大名誉教授(トンネル工学)は、「あれほど大きな陥没をしたということは、ナトム工法が向いていなかったのではないか」と指摘する。
一般に、軟らかい地盤や地下水の多いところでは、シールド工法が使われるという。
出典
『軟弱な地層、市の対応甘く 博多陥没、過去2度同様事故』
http://www.asahi.com/articles/ASJC85T1VJC8TIPE04R.html
(2/3に続く)
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。