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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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20211123631分にYAHOOニュース(東洋経済)から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。

100年前の「丹那トンネル」工事が、南アルプスリニアトンネル工事に対する深刻な懸念の実例だと、川勝平太静岡県知事は1026日の会見で紹介した。

詳しい説明をした県担当者は、当時の函南町長の言葉を引用して、丹那トンネル工事による大量湧水の流出を踏まえ、「リニア工事中に失われた水は戻らない」などの結論にした。

背景には、リニア工事中の山梨県外への水流出について、知事は「水1滴も県外流出は不許可」の姿勢を崩さないことにある。

「工事中の人命安全確保」を優先するJR東海に対して、「トンネル湧水の全量戻しが当然」の論拠として「丹那トンネル」を持ち出したのだ。

ところが、丹那トンネル工事に関する当時の資料を確認すると、県担当者は事実を故意に貼りあわせ、印象操作を行ったことがわかった。

「トンネル湧水の全量戻しが当然」(川勝知事)を後押しするための“事実歪曲”だが、決して許されることではないだろう。

 

【突発湧水の危険性】

静岡、山梨県境付近は大規模な断層による約800mもの破砕帯があり、突発湧水によるトンネル工事の危険性が指摘される。

県境付近の工事について、JR東海はトンネル掘削をする際、静岡県側から下向きに掘削していくと、突発湧水が起きた場合、水没の可能性が高く、作業員の安全確保が図れないため、山梨県側から上向きに掘削する工法を会議で説明した。

ただ、「上向き工法」の場合、工事期間中の約10カ月間に300立方mから500万立方mの水が山梨県側へ流出することになる。

リニア工事による大井川中下流域への水環境をテーマに、国の有識者会議は2年近くの議論を重ね、JR東海がトンネル湧水全量を大井川に戻すことで、工事中の山梨県側への流出期間を含めて、「中下流域の表流水への影響はほぼなし」、また、中下流域の地下水の涵養源は近隣の降雨と表流水であり、「中下流域の地下水への影響はほぼなし」などの中間報告案を委員全員が了承、次回の有識者会議で結論がまとまる予定だった。

有識者会議の結論に対して、川勝知事は「トンネル湧水の全量戻しがJR東海との約束であり、全量戻しをできないのであれば、工事中止が約束」などと、会議の議論そのものを否定した。

工事期間中でも水1滴の県外への流出は許可できない立場を崩さず、“命の水”を1滴でも戻すことができないのであれば、リニア工事は中止あるいはルート変更が必要と要求していた。

これに対して、有識者会議は、JR東海の対策による中下流域の表流水、地下水への影響があるのかどうかを議論の中心としてきた。

中下流域の表流水への影響はないとして、工事中の山梨県側からの上向き工法は容認した一方、知事の求める「全量戻し」についても、JR東海に指示した。

この結果、工事完了後、山梨県内のトンネル湧水をポンプアップして、山梨県側へ流出した300万立方mから500万立方mを静岡県側へ戻す提案をJR東海は行った。

時間はかかるが、これでも、知事の求める「湧水の全量戻し」には違いない。

JR東海によれば、人命安全を確保するために機械による無人化工法の検討を行ったが、現在の技術レベルでは、作業員の立ち合いを避けることはできず、また、突発湧水の予見は非常に難しいという。

 

【丹那トンネル工事の「真実」とは】

1029日、リニア工事で初めての死亡事故となった、岐阜県瀬戸トンネル事故でも、専門家は「作業員が現場にいる状況は避けられず、このような事故が発生するリスクは必ず存在する」と指摘した。

どう考えても、「人命の安全確保」が優先されるべきだが、静岡県は「失われた水は戻らない」として、「工事中のトンネル湧水全量戻し」を強硬に主張、その論拠に「世紀の難工事」丹那トンネルの事例を挙げた。

県担当者は、『丹那隧道工事誌渇水篇』(鉄道省熱海建設事務所編、1936)を調べたところ、トンネル工事中に丹那盆地の湧水枯渇66カ所、地下水位がトンネル付近の130mまで低下、想定外の突発湧水があり、流出した水量は芦ノ湖3杯分の6億立方mに及ぶなどと説明した。

県担当者は、『丹那トンネル開通・函南駅開業50周年記念誌』(1984)を引用、「多くの人は、水は再び復すると期待していた。失った水は戻らない。お金で解決せず、(トンネル)湧水をポンプアップして丹那に戻す方法を講ずべきだった」という、当時の函南町長の言葉を紹介した。

まるで、函南町長の言葉は、現在のリニア工事への懸念をそのまま表現したかのようだった。

ところが、同記念誌をあらためて確認すると、当時の函南町長が「丹那盆地」の永久に失った水と問題にしたのは、工事期間中に流出した芦ノ湖3杯分の6億立方mのことではなく、トンネル工事後、50年たっても依然としてトンネル内に流れ出ていた湧水10万トン(日量)のことだった。

本来なら、丹那盆地に湧き出る10万トンはトンネル内の湧水となり、熱海側に流れ出る4万トンは行政区域の違いで手の出しようがないが、函南町内の丹那トンネル「西口」の田方平野に流れ出ている6万トンをポンプアップして丹那盆地へ戻す方策もあった。

函南町長の「永久に失った水」が工事後の湧水であるならば、リニア南アルプストンネル工事の場合、トンネル内の湧水全量をポンプアップして導水路トンネルを使って、大井川に戻す方策をJR東海が示している。

もし、現在ならば、函南町長が“後悔の念”を抱くことはなかっただろう。

それなのに、県担当者は「50年後の県民が後悔しないようJR東海と対話を尽くしたい」などと述べ、函南町長の言葉を、工事中の湧水流出に対応するような結論に使った。

「失われた水は戻らない」として、県担当者は「『トンネル湧水の全量戻し』は当然」などと述べたが、工事中と工事後では意味合いが全く違う。

これでは、故意に事実を歪めていることになる。

丹那トンネルの場合、掘削前に東京帝大地質学教授ら著名な専門家に地質調査を依頼したが、「盆地の下部は硬い岩で工事に気に掛けることはない」、「地質構造上危険な恐れなし」と断定。
当時は、実際の活断層や温泉余土という特殊な地質を明らかにできなかった。

そもそも、工事は水を抜くことが目的であり、水抜きトンネルの総延長は丹那トンネルの約2倍にも達している。

丹那盆地の渇水の主な原因は、温泉と粘土の混じった温泉余土を取り除いてしまったことである。

温泉余土は粘土の一種で水を通さない。

盆地東側の滝知山(649m)周辺に温泉余土が広がり、西側の丹那盆地では豊富な湧水に恵まれていた。

温泉余土が、その地下水を遮る役割をしていたのに、トンネルを掘り抜くことで、巨大な貯水池に横穴を開けてしまい、すべての湧水がトンネル内に流出してしまった。

温泉余土という特殊な地質を解明できず、芦ノ湖3杯分の6億立方mもの湧水が流出したのである。

 

【丹那トンネルの「教訓」とは?】

県担当者は、16年の歳月を掛け、1934年に完成した「丹那トンネル」と並行する、東海道新幹線「新丹那トンネル」について、全く言及しなかった。

1964年の東京オリンピック開会に間に合わせるよう、45カ月という短い工期で新丹那トンネルを完成させたのは、丹那トンネルの経験を生かし、また最新の地質調査、掘削技術によるものだった。

何よりも、丹那トンネルの「悲劇」は、3度の大事故が起こり、67人の犠牲者(公式発表)、その後の調査で112人の犠牲者が判明していることだ。

リニア南アルプス工事で、静岡県内の犠牲者を1人も出すべきではないことのほうが、「丹那トンネルの教訓」となるだろう。

静岡県は、丹那トンネル工事による渇水状況を題材に、学校などを対象に出前講座などを開くとしている。

「『トンネル湧水の全量戻し』は当然」などとする資料だけでは、「丹那トンネルの教訓」を伝えることにはならないだろう。

静岡県は1018日、有識者会議の結論のとりまとめに疑念や懸念があるとする意見書を国交省に送った。

この文書では「全量戻し」の認識が、「県民の理解を得られない」などと記している。

国、JR東海は、「県民の理解を得る」ためには、正確な情報を伝えるべきだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3c27477c2e84e5c67f070f279fe0c86290c44a66

 

(ブログ者コメント)

これまで、静岡県知事がなぜ、頑なに反対しているのか分からなかったが、今回の報道が正だとすれば、反対のための反対なのかな?・・・という気もした。

ちなみに、この知事、御殿場市コシヒカリ発言が問題になり、今月24日、御殿場市民が出した辞職請願が県議会で可決されたが、その後、当の御殿場市長は、政治問題にすべきではないとコメントしている。

なにはともあれ、工事安全が最優先だ。

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
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