2020年12月8日18時46分にNHK兵庫から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
悪天候のため、ハワイ沖を航行中、積み荷が崩れて2割以上が海に転落した大型コンテナ船が8日、点検などのために神戸港に入港しました。
会社によりますと、乗組員にけがをした人はおらず、今後、荷物の積み直しを行うことにしています。
神戸港に入港したのは日本の大型コンテナ船「ワン アパス」で、8日正午ごろ、神戸市東灘区にある六甲アイランドに接岸しました。
船の運航会社によりますと、コンテナ船は中国からアメリカに向けて太平洋のハワイ沖を航行中の先月30日、悪天候に見舞われて、甲板の上に積んでいたおよそ7000個のうち2割以上にあたる1816個が海に落ちたということです。
落ちたコンテナの一部には花火や電池、それに液体エタノールなどの危険物が入っていたということですが、回収されたという情報はこれまで入っていないということです。
コンテナ船の乗組員は全員、けがはないということです。
運航会社によりますと、コンテナ船には適正な数のコンテナを載せていたということで、会社では積み荷が崩れた原因を調べるとともに、船体や積み荷を点検してコンテナの積み直し作業を行うことにしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20201208/2020010981.html
(ブログ者コメント)
〇関連情報調査中、10年前に空荷のコンテナ100本が荷崩れを起こし、それが日本海運史上、まれにみる大規模荷崩れだった、という記事が見つかった。
当該情報から考えると、今回の事故は、中身の入ったコンテナが荷崩れした、わが国最大の事故だった可能性がある。
(2011年1月23日9時59分 神奈川新聞)
『“史上最大”のコンテナ荷崩れ、ミナトの絆で復旧完遂/横浜』
今月12日、航海中にコンテナ約100本が倒壊するという大規模な荷崩れを起こした超大型コンテナ船が横浜港に入港した。
一部は今にも海に落下しそうな危険な状態で、「日本海運史上、これほどの荷崩れは初めて」(横浜港関係者)。
未曽有の事態を前に、港の男たちは周到な準備をして挑み、困難を極めた復旧作業を短時間でやり遂げた。
正月明け早々、横浜港・南本牧ふ頭で荷下ろしを担う三菱倉庫南本牧営業所の石原所長(男性、50歳)は、コンテナ船からメールで送られてきた写真に息をのんだ。
船尾側のコンテナはドミノ倒しのように右舷側に傾き、一部は海上に突き出ている。
太平洋は荒天で激しい白波が立っていた。
写真や乗組員からの情報を手掛かりに、石原さんはコンテナ船を運航する海運会社をはじめ、横浜港関係者と作業手順の検討を重ねた。
最初に右舷から突き出て海に落下しそうなコンテナを取り除いてから、倒れたコンテナを引き起こして荷揚げする方法が決まった。
13日午前8時、復旧作業開始。
しかし、突き出たコンテナが動かない。
覆いかぶさったコンテナが重しになっていた。
次の寄港地へ、出港予定は翌14日の午前4時。
残り時間は少ない。
約30人の港湾荷役作業員を率いて現場指揮に当たった藤木企業の下田副監督(男性、43歳)は、作業手順の入れ替えを決断する。
突き出たコンテナをワイヤロープでつって支え、崩れたコンテナを上から順に引き上げていく。
コンテナを海に落とせば、ふ頭の港湾業務はストップしてしまう。
作業員たちは「絶対に事故は起こさない」と誓ってクレーンを操った。
「ベテラン作業員にとっても初めての作業。安全への思いは誰もが同じだった」と下田さん。
崩れたコンテナの多くは歪み、大きく裂けたものや、ぺしゃんこになるなど原形をとどめない状態のものも。
ワイヤロープを使った荷揚げでは「コンテナ船の就航前から貨物船の荷揚げに携わっていたベテランが、現場で適切なアドバイスをしてくれた」という。
13日深夜、作業終了。
コンテナ船は無事出港した。
ほぼ目標通りの短時間で終え、石原さんは「海運会社をはじめ、作業会社や横浜海上保安部などが連携して対処できたのは横浜港ならでは」と話す。
下田さんは「仲間同士の絆が強い横浜港だからできること。事故なくやり遂げたことを誇りに思う」と振り返った。
◆米ロサンザルスを昨年12月30日、横浜に向けて出港したコンテナ船(9万7933トン)で、太平洋を航行中に強風と波の揺れで船尾側に積まれたコンテナ約100本が横一列に右舷側へ倒壊。
一部は海に落下しそうな状態のまま、12日午前に横浜港・南本牧ふ頭に入港した。
大手海運会社が所有する世界最大級のコンテナ船の一つで、20フィート換算で9千本を搭載可能。
北米西海岸から日本、アジアを経由し、欧州に向かう国際基幹航路を運航している。
荷崩れしたコンテナはいずれも空荷だった。
https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-82666.html
〇あんなにもうず高く積まれたコンテナ。
単に積まれているだけでは、ちょっとの揺れでも崩れそうだと感じ、積み方を調べたところ、ラッシング装置という、大きな枠に固定しているということだった。
以下は、ラッシング装置を備えた最新式コンテナ船の写真。
https://www.jasnaoe.or.jp/soy/2017.html
〇一方、コンテナ荷崩れ原因に関する、以下の記事もあった。
『Gard Insight 海上コンテナの落下事故の原因と防止』
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原因 荒天 座礁、沈没、衝突などによってコンテナが船外へ落下するような不慮の事故は別にして、通常の航海中に荷崩れを招く原因で最も多いのは、荒天による影響です。
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荷崩れの原因としてより多いのは、CSM に規定されているコンテナの段積みや列の重量制限や、段積みの高さ制限を遵守しなかったことによるものです。
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用船者は当然、積み付 けが最適化されることを期待する一方で、船員は過密なスケジュールに影響を与えるのを躊躇する場合があるのです。
特に大型コンテナ船に関係するラッシングの問題。
大型船などの大規模なラッシング装置の場合、CSM に照らしてチェックすることが難しい上に、仮にコンテナのいくつかが喪失しても船舶にはほとんど危険はなく、自分たちには関係ないといった意識を船員が持つ可能性があります。
船舶が大型であるほど、ラッシング装置の保守対象が多くなり、また、荷役作業者もラッシング装置の取り扱いに慎重さを欠いてしまう可能性があります。
こうしたメンテナンスの不備や手荒な扱いに起因する装置の不良が事故の原因になるのです。
・・・・・
(2024年3月1日 修正1 ;追記)
2024年2月29日10時43分にYAHOOニュース(共同通信)からは、船長の進路変更で、揺れが激しくなりやすい角度からウネリを受けるようになったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
運輸安全委員会は29日、2020年に日本船籍の貨物船「ONE APUS(ワン・アパス)」(14万6694トン)が米ハワイ沖を航行中、荷崩れが起きて大量のコンテナが海に落下した事故の調査報告書を公表した。
船長の針路変更で、揺れが激しくなりやすい角度から波浪(うねり)を受けるようになり、船が大きく傾いたと指摘した。
報告書によると、貨物船は20年11月30日深夜から翌12月1日未明にかけて激しく揺れて傾き、荷崩れが2回生じた。
コンテナ7016個中1841個が海に落ち、983個が甲板上で倒壊。
船長と乗組員計24人にけがはなかった。
貨物船は阪神港神戸区に緊急入港した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a27d9d3d6dd1693c237da2f123faa753d32d5935
(ブログ者コメント)
事故報告書(2/54ページ)には原因として「船長は横揺れを軽減しようと進路を変更したが、結果的に進路を誤った。それは夜間で海象状態を適切に把握できなかったためと考えられる」という趣旨の記述がある。
https://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2024/MA2024-2-1_2022tk0001.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。