2020年9月17日19時9分にNHK岩手から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
16日午後4時半ごろ、滝沢市の盛岡農業高校で、部活動中に、陸上部の2年生の男子生徒が投げたハンマー投げのハンマーが、ソフトテニス部の2年生の男子生徒2人にあたりました。
このうち、ハンマーの鉄球部分があたった16歳の男子生徒は頭から出血し、意識不明の状態になっていて、岩手県高度救命救急センターで治療を受けています。
また、ハンドル部分があたった17歳の男子生徒は病院に搬送されましたが、首の打撲などの症状で、16日のうちに帰宅したということです。
警察が事故の状況を詳しく調べています。
高校によりますと、陸上部には顧問が3人いますが、月に1度の職員会議の際には顧問不在で活動することもあったといい、16日も生徒だけで練習していました。
盛岡農業高校のグラウンドにあるハンマー投げの練習場とテニスコートは、20メートルほど離れ隣接しています。
通常、ハンマー投げの練習の際には、高さ5メートルほどの金網で囲われたフェンスのなかから、グラウンドに向かってハンマーを投げていました。
練習の際には大声で周囲に知らせてからハンマーを投げていて、今回も声かけを行っていたということです。
しかし、ハンマーは正面のグラウンドの方向ではなく、左側にあるテニスコートの方向に飛び、コートの手前あたりに立っていた男子生徒2人にあたったということです。
高校によりますと、これまでにこの高校でハンマーが他の生徒にあたってけがをした記録はないということです。
盛岡農業高校の千葉副校長は、「一刻も早い生徒の回復を祈っています。事故は予想していない方にハンマーが飛んだことでおきたと認識しています。当時の状況を調べるとともに、ハンマーがそれた場合でも事故を防ぐことができるよう、安全対策を再検証したい」と話しています。
ハンマー投げは、ヘッドと呼ばれる金属製の球と、ワイヤー、ハンドルの3つで構成されるハンマーを、遠心力を利用してより遠くに投げる陸上の投てき競技の1つです。
日本陸上競技連盟のホームページなどによりますと、ハンマーは重さの合計が、男子では、一般が7.26キロ、高校生が6キロ、女子は一般と高校生とも4キロあるということです。
危険防止のために設置する囲いは、高さや強度、間口の幅などが細かく規定されています。
部活動中にハンマー投げのハンマーが生徒にあたる事故は、過去にも全国でたびたび起きています。
2008年には都立高校で、2010年には神奈川県の私立高校で起き、それぞれ生徒が頭の骨を折る大けがをしたほか、2017年には群馬県の県立高校で頭にハンマーがあたった男子生徒が死亡しています。
これらの事故ではいずれも陸上部の顧問の教諭が安全管理を怠っていたなどとして、業務上過失傷害や業務上過失致死の疑いで書類送検されました。
日本陸上競技連盟では相次ぐ事故を受けて、2013年に陸上競技における「安全対策ガイドブック」をまとめていて、この中でハンマー投げが含まれる投てき種目について、投げる前に声で知らせ、聞こえているかをしっかり確認し、周りに人はいないか直前にも確認するよう求めています。
ただ、顧問の教諭ら指導者が常にその場にいることが必要かどうかは規定がなく、各学校現場に委ねられているということです。
岩手県保健体育課は、今回の事故を受けて、17日、県立学校あてに安全管理の徹底を求める文書を緊急で送ったということです。
県保健体育課の担当者は、「県として、これまで投てき種目に絞って注意喚起を行ったことはないが、事故の状況を把握したうえで、投てき種目や器具を使った競技については、何らかの通知や指示を出さなければならないと考えている」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20200917/6040008634.html
9月17日13時4分に読売新聞からは、コート内で会話していた2人のうち1人の顔に鉄球が直撃したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
同校グラウンドで陸上部の2年の男子生徒(17)が練習中に投げたハンマーが、隣接するテニスコートのフェンス(高さ約2メートル)を飛び越え、コート内で会話をしていたソフトテニス部の2年の男子生徒2人に当たったという。
鉄球部分が顔に直撃した生徒(16)は、搬送時は意識不明で現在も入院中。
鎖などの金具が当たった生徒(17)は軽傷で退院した。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200917-OYT1T50229/
9月18日9時15分に毎日新聞からは、顧問が3人とも職員会議で不在だった、顧問不在時は投擲しない決まりだったが、これまでにも不在時に投擲していたなど、下記趣旨の記事が位置関係を示す見取り図付きでネット配信されていた。
当時は陸上部の顧問3人が不在だったことが17日、学校への取材で分かった。
同校は「安全管理に不備があった」と認め、詳しい原因の調査や対策の徹底に当たるとしている。
事故は16日午後4時半ごろに起きた。
陸上部の男子生徒(17)が高さ6~7メートルの金網に囲まれた練習場から投げたハンマー(重さ6キロ)が、約20~30メートル離れた隣のテニスコートで練習するソフトテニス部の男子生徒2人に当たった。
ハンマー投げの練習場とテニスコートの間は、高さ約2メートルの金網で隔てられていたが、ハンマーはそれを越えて生徒に当たった。
2人は病院に搬送されたが、鉄球部分が頭に当たった生徒(16)は出血して意識不明の状態といい、集中治療室で治療を受けている。
ハンマーの持ち手部分が首などに当たった別の男子生徒(17)は17日から登校しているという。
同校では原則、顧問不在時は投てき競技をしないという決まりがあったが、事故のあった16日は月に一度の職員会議の日で、顧問不在で練習していた。
職員会議の日は以前も、顧問が付き添わないことがあったという。
当日は、投げる本人やテニスコート近くに立つ陸上部の女子マネジャー2人が「いきます」「危ないです」などと声を出し、周囲に注意を促していた。
マネジャーによると、ハンマーは低い軌道で飛んで高さ2メートルの金網すれすれを越え、後ろ向きだった生徒2人に当たったという。
同校の千葉副校長(56)は、「安全管理に不備があったことは否めない。けがをした生徒や家族に申し訳ない。一刻も早く、良くなってほしい」と回復を願った。
今後については「詳細を把握して検証する。顧問不在時には投げないことを徹底するほか、金網を更に高くしたり、部活動の曜日を調整したりといった事故防止対策を取りたい」と話した。
県教育委員会は17日、全県立高校に、部活動中の安全対策の徹底を求める通知を出した。
【17年には群馬で1人死亡】
ハンマー投げなど投てき種目による学校での事故は、全国各地で起きている。
2017年には群馬県藤岡市の県立高校のグラウンドで、部活動中の陸上部の男子生徒が投げたハンマーが頭に当たったサッカー部の男子生徒(当時17歳)が死亡した。
この事故でも、当時、陸上部の顧問が不在だった。
08年には東京都足立区の高校で男子生徒が、10年には神奈川県鎌倉市の高校で女子生徒が、それぞれ頭の骨を折る大けがを負った。
日本スポーツ振興センター(JSC)によると、学校で事故が起きた際に顧問などからの申請に基づいて給付金を支給した事例だけでも、投てき種目で死亡や障害が残るような事故は05~18年度に計14件あった。
https://mainichi.jp/articles/20200918/k00/00m/040/020000c
(ブログ者コメント)
〇以下はNHK映像の2コマ。
〇2017年に群馬県で起きた事故については、本ブログでも
紹介スミ。
本ブログでは、それ以外にも、ハンマー投げや砲丸投げ練習
時の事故事例を数件、掲載している。
(2021年10月25日 修正1 ;追記)
2021年10月23日21時13分に読売新聞からは、顧問だった教諭2人が書類送検された、事故後は他校で練習しているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
県警は、当時、陸上部顧問だった教諭2人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。15日付。
捜査関係者によると、顧問の教諭2人は昨年9月16日、必要な安全対策を怠ったまま部員らに練習させ、生徒2人にけがを負わせた疑い。
事故当時、教諭2人は職員会議で練習に立ち会っていなかった。
事故後、陸上部ではグラウンドでのハンマー投げの練習をやめ、現在は安全設備の整った他校で週1回の練習を行っている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211023-OYT1T50106/
10月18日13時6分にNHK岩手からは、学校は事故後、部活の安全マニュアルを作成したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
生徒2人はいずれも回復し、通常どおり学校生活を送っているということです。
学校では事故後、教員が立ち会えない場合は道具は使わずに危険性の低い練習を行うことにするなど、部活動の安全マニュアルを作成したということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20211018/6040012326.html
※1年前、2021年10月30日11時0分に朝日新聞からは、競技連盟は「陸上競技安全ガイド」と題する動画をネット上で公開しているなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
・・・
岩手陸上競技協会理事で、約40年にわたり県内の高校でハンマー投げの指導にあたってきた高橋さん(73)は、防護ネット整備の難しさを指摘する。
盛岡農では、投てき場所に高さ5、6メートルの防護ネットが設置されており、ハンマーは正規の飛び出し口を通って大きく左方向にそれて飛んでいったとみられる。
高橋さんは、「本来は、ハンマーが飛び出す箇所に、さらにネットを2枚置いて、今回のような事故を防ぐのが望ましい。ただし、防護ネットは全体で数百万円もするので、県立高が手軽に買い替えできるものではない」と話す。
また事故当時、陸上部の顧問は職員会議のため不在だった。
高橋さんは、現在も外部コーチとして黒沢尻工業高校で指導にあたっているが、必ず指導者がいるときに投てきをするよう徹底しているという。
ただ、「具体的な指導マニュアルが共有されているわけではない。定期的に講習会などを開く必要があるのではないか」と指摘する。
◇
日本スポーツ振興センターによると、重大な被害があったとして災害共済給付をした事例の中で、ハンマー投げなどの投てき種目での事故は2005~18年度の14年間で16件あった。
これとは別に群馬県の県立高校では17年、陸上部員が投げたハンマーが頭にあたったサッカー部員が死亡する事故が起きた。
このとき同県教委が設置した第三者検証委で委員長を務めた、東京学芸大の渡辺正樹教授(安全教育学)によると、他部の生徒が被害にあった点、指導者が不在だった点などで、盛岡農の事故と共通するという。
渡辺教授は、「何度も大きな事故が起き、そのたびに対策を取ろうとしているが、行き届いていない」と指摘する。
部活動では、他部とグラウンドを共用せざるを得ない場合が多いことから、時間をずらして利用するなどの工夫が必要としている。
また、同じ競技の生徒たちが近隣の高校に集まって合同練習する取り組みも進められているという。
日本陸上競技連盟は「陸上競技安全ガイド」と題する動画をネット上で公開している。
投てき種目については、
▽練習場所の範囲を示すためにコーンを立てて境界線を示す
▽投てき時に声で合図する
▽回転しながら投げるため、思わぬ方向に飛ぶと想定する
▽防護ネットが正しく設置されているか確認する
▽用具が滑りやすい状態ではないかチェックする
といった注意点を、分かりやすく解説している。
https://www.asahi.com/articles/ASNBY6X83NBYULUC014.html
(2021年12月30日 修正2 ;追記)
2021年12月28日16時16分に産経新聞からは、教諭2人は不起訴になったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
盛岡地検は28日、業務上過失傷害容疑で書類送検された当時陸上部顧問だった教諭2人を不起訴処分(起訴猶予)とした。
岩手県警は今年10月、必要な安全対策を取らなかったとして教諭2人を書類送検していた。
鉄球部分が当たった生徒1人は一時意識不明となり入院したが、現在は登校できているという。
https://www.sankei.com/article/20211228-XKLAOPQBGBNNZI4D5M6EZJG6GM/
12月29日5時42分に読売新聞からは、不起訴理由など、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
けがをした生徒本人や家族の感情、再発防止策が取られている点などを考慮したという。
同校によると、陸上部では事故を受け、グラウンドでのハンマー投げの練習をやめ、現在は安全設備の整った他校で週1回練習を行っているという。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211228-OYT1T50159/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。