2018年5月19日11時21分に朝日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
千葉県と山口の中学校で、今月、理科の実験中に生徒が体調を崩して病院に運ばれる事故が相次いで起きた。
実は、同じような事故がこれまでにも全国各地の中学校で発生。
事故防止のため、県教委が実験方法の見直しを求めたケースもある。
実験は毎年5~6月に行われることが多く、現場の教員からも改善を求める声が上がっている。
事故が起きているのは、鉄と硫黄の混合物を加熱して硫化鉄を作り、それに塩酸を加える手順の実験。
混合物を加熱する際に二酸化硫黄が、塩酸を加えると硫化水素が、それぞれ発生する。
いずれの気体も有毒で、高濃度だと命に関わる。
事故の多くは、気体を吸い込んで起きたとみられる。
11日には千葉市立千城台西中、山口県下関市立豊洋中で事故が発生。
生徒計10人あまりが救急搬送された。
16日にも千葉県野田市立木間ケ瀬中で7人が搬送された。
昨年は、埼玉、長野、大阪、広島の各府県の中学生数10人が病院に運ばれた。
症状は、のどの痛みや吐き気などで、いずれも軽かったが、過去には硫化水素中毒と診断されて入院したケースもあった。
報道された事例など、過去3年間に少なくとも10都府県で起きている。
実験は中学2年のカリキュラムとなっており、例年5~6月に行われることが多い。
全5社の検定教科書には、実験例とともに、手であおいでにおいを確認することや、換気をよくすることが記されている。
文科省は事故件数をまとめていないが、相次ぐ事故を受け、昨年改訂の学習指導要領解説に「適切な実験の方法や条件を確認する」との文言を付け加えた。
埼玉、長野、広島の3県では、昨年5月、複数の中学校で事故が起きたことを受け、県教委が市町村教委に通知を出した。
教員が実験を行うよう検討することや、換気について留意するよう求めている。
教師歴40年の前橋市立第七中学校の富田教諭(61)は、昨秋、理科教育の民間組織「科学教育研究協議会」が発行する雑誌「理科教室」に、この実験の危険性について投稿した。
「実験自体の安全性が問題視されてこなかったのは、重症化した事例がなかったせいではないか」と警鐘を鳴らす。
富田教諭は、事故に結びつきやすい要因として、理科室で実験が続いて有毒な気体が室内にこもったり、実験の過程で二酸化硫黄を吸った後に硫化水素をかぐことで、相乗作用を及ぼしたりすることで体調不良になる可能性を指摘する。
事故を無くすために、場合によっては、一般的な空調設備しかない中学校の理科室での生徒による実験は取りやめ、教師が実験を示してみせる、実験の動画を見せる、においの確認は微量で体験させる、などを提唱。
「発生する気体が及ぼす影響は、生徒によって違う。持病があったり風邪だったりする場合は、特別な配慮も必要だ」と話している。
出典
『中学の理科実験、体調不良で搬送相次ぐ 有毒の気体吸い』
https://www.asahi.com/articles/ASL5C5G65L5CUHNB009.html
(ブログ者コメント)
〇この事例は、本ブログでも過去に10件ほど紹介スミ。
あまりにも同じようなトラブルが続くため、昨年5月、特段のものでない限り事例紹介しないと宣言したほどだ。
(今年は5月に3件続いたため掲載)
〇過去記事のコメントでも触れたことだが、この実験の必要性と万一の事態になった場合のリスクを評価すると、そろそろ、カリキュラムから外すなど抜本的対策を考えるべき時にきているのではないだろうか?
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。