2021年2月8日22時40分に新潟日報から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京電力柏崎刈羽原発所員が原発中央制御室に不正な方法で入室した問題で、制御室に通じる防護区域のセキュリティーを担当する複数の警備員が、この所員をIDカードの持ち主とは別人だと疑いながら、通過させていたことが8日、分かった。
この所員を通過させるために、IDの識別情報の書き換えまで行われていた。
東電の核物質防護体制のずさんさが浮き彫りになった。
原発を再稼働させる資格があるのかを厳しく問われるのは必至だ。
同日、原子力規制委員会の事務局、原子力規制庁が明らかにした。
規制委は同日開かれた臨時会合で、この問題について、東電による自主的な改善は望めず、規制委の関与の下で改善を図るべきだと判断。
東電に結果を報告し、追加検査を行うとした。
規制庁によると、中央制御室勤務の所員が昨年9月20日、IDカードの紛失を報告せず、勤務日ではなかった別の所員のIDカードを無断で持ち出した。
中央制御室につながる複数の出入り口で、警備員がIDカードにある顔と違うことに疑いを持ったり、本人認証でエラー警報が出たりしたにもかかわらず、通過させていた。
さらに、警備担当の所員が独断でIDの識別情報を書き換え、問題の所員がIDを使えるようにした。
その後も、別の警備員が違和感を抱いて声を掛けたが、問題の所員はIDの持ち主の名前を名乗るなどして、中央制御室に入った。
規制庁は、何号機の中央制御室だったかや、どのような認証をすり抜けていたかなどの詳細について、「核セキュリティー上、明らかにできない」とした。
所員が不正入室した理由については、「職務を遂行したいとの思いが強かったようだ」と説明した。
一方、東電は8日夜、長岡市で開いた、再稼働を目指す7号機の安全対策に関する住民説明会で、不正入室した所員が20代で、同原発での勤務経験が約6年の男性社員だと明らかにした。
ただ、問題の詳細は公表しなかった。
東電の橘田新潟本社代表は説明会の冒頭、この問題で規制委の関与の下での改善を図るべきと評価されたことについて、「重く受け止めている。内容を確認して早急に対処したい」と述べた。
https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20210208597713.html
2月9日付で毎日新聞東京版からは、自分のIDカードが見当たらなかったため無施錠の同僚ロッカーからカードを持ち出したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東電柏崎刈羽原発の所員が他人のIDカードで中央制御室に不正入室した問題で、規制委は8日、複数の警備員が所員に疑念を持ったにもかかわらず、制御室に通じる防護区域の出入り口を通過させていたと明らかにした。
警備員の一人は所員に声を掛けたが、所員は他人の氏名を名乗って通過した。
規制委は、東電による自主的な改善が望めないと判断し、追加検査で所員らの行動などを調べる。
規制庁によると、出勤したこの所員は自分のIDカードが見つからず、無施錠の同僚のロッカーからカードを持ち出した。
防護区域の警備員は、所員の顔とカードを見比べて疑いを持ったが、入るのを許可。
本人確認ができずエラー警報が出たのに、別の警備員も身分確認を徹底せず、出入り口の扉を開け、独断でカードの認証情報を所員のものに修正させた。
https://mainichi.jp/articles/20210209/ddm/012/040/079000c
(ブログ者コメント)
ブログ者も現役時代、社員証を紛失したことがある。
それは、放射線取扱主任者として設備変更申請を提出する必要が生じた時のことだ。
申請するには科学技術庁(当時)に行く必要があるが、入庁には社員証の提示が必要とのこと。
運転免許証ではダメだと言われた。
社員証など、ン10年、使ったことがない。
急ぎ、会社と自宅の机の中などを探してみたが、どうしても見つからない。
そこで仕方なく再発行を依頼したが、再発行には始末書が必要とのこと。
給料に反映するわけでもない放射線取扱主任者を拝命したばかりに、書かなければいけない始末書。
割り切れない気もしたが、それがないと申請できないので、やむなく始末書を書いた・・・そんなこともあったなあと、この記事を書いていて思い出した。
ちなみに紛失した社員証は、退職時の書類整理時にヒョッコリ出てきた。
やんぬるかな・・・。
(2021年3月13日 修正1;追記)
2021年3月11日付で新潟日報から、不正入室の詳細な経緯が明らかにされたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「無断でロッカーからIDカードを持ち出した」
「警備員はIDカードと社員の顔を見比べ、疑念を抱き
つつも、入域を許可した」
東京電力柏崎刈羽原発の所員が原発中央制御室に不正に入った問題で、原子力規制庁は8日、不正入室の経緯を明らかにした。
説明からは、テロ対策上も厳重な管理が求められるはずの中央制御室の入室で、ずさんで危機意識を欠いた対応が重なっていた実態が浮かび上がった。
規制庁の説明を基に不正入室を再現した。
■無断で別社員のカード持ち出し
2020年9月20日、中央制御室に勤務する社員Aは、自分のIDカードが見つからなかったため、非番の社員Bのロッカーを開け、無断でカードを持ち出した。
紛失の報告やIDの無効化など必要な手順は踏まなかった。
社員Bも中央制御室の勤務員だったが、ロッカーに鍵をかけてはいなかった。
その後、社員Aは中央制御室に通じる、二つの「関門」でそれぞれ警備担当者に対し、社員Bの名前を名乗った。
いずれも警備担当者が、社員Aの顔とIDカードの顔写真との違いに疑念を抱いたが、通過させた。
■認証エラー、しかし
二つ目の「関門」となる防護区域出入り口。IDカードの認証が複数回エラーになったが、警備担当の社員Cが出入り口を開けた。
この社員Cは、権限がないのに独断で、社員Aが出入り口を通れるようカードの識別情報の登録も変更した。
その後、社員Aの顔に見覚えがある警備員が違和感から声を掛けたが、Aは社員Bの名前で押し通し、中央制御室までたどり着いた。
この日の勤務を終えた社員A。
自分のロッカーの奥に自身のIDカードが落ちているのを見つけた。
無断で借りたIDカードは社員Bのロッカーに戻した。
翌21日、社員Bが自分のIDカードで防護区域に入ろうとした際、識別情報の登録が変更されていたためエラーが発生。
前日も対応した社員Cが不審に思い、事情を聞いたことから問題が発覚した。
東電は同日、原子力規制庁に報告した。
【解説】適格性「合格」に疑念
・・・・・
https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20210209597764.html
3月10日18時3分に朝日新聞からは、社員に対する警備員の忖度があったなどと分析した報告書が規制委に提出されたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
東京電力は10日、柏崎刈羽原発(新潟県)で社員が他人のIDカードを使って不正に中央制御室に入った問題の再発防止策をまとめた報告書を原子力規制委員会に提出した。
社員に対する「警備員の忖度(そんたく)」などがあり、「厳格な警備業務を行い難い風土」が一因になったと分析した。
対応策として、警備業務に関する管理職を新たに配置するなどの体制強化を掲げた。
報告書は、不正入室の背後に、核物質防護のルールの理解不足などに加え、社内風土の問題があったと指摘。
東電は会見で、警備員は「運転員は社員の中でもレベルが高い」との意識から不審に感じても強く言えず、運転員も警備業務を尊重する気持ちが不足していた、と説明した。
さらに、テロなど外部からの脅威に重点を置いた「性善説に立った対策だった」(橘田常務・新潟本社代表)として、社員の不正による「内部脅威」への意識が足りなかったと認めた。
規制委は今後、追加の検査で東電の対策が十分かを確かめる。
https://www.asahi.com/articles/ASP3B5W1HP3BULBJ011.html
3月10日18時33分にNHK新潟からは、管理職が警備業務の実態を把握していなかったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
報告書によりますと、原因は厳格な核物質防護を行うための規則や設備が不足し所員の理解が不足していたこと、管理職が警備の業務について現場の実態を把握できていなかったことなどを挙げています。
そして、再発防止策として、核物質防護に関する施設に入るための認証装置を追加し、社員教育のカリキュラムを改め、所員と幹部が少人数で定期的にミーティングをすることなどを示しています。
新潟本社の橘田代表は、「重大な事案として大変重く受け止めており、問題の深層にある要因は、管理者が現場で働くメンバーの課題や悩みをつかめていなかったことだ。対策を着実に実施し、安全性の向上に努めて参ります」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20210310/1030016090.html
(ブログ者コメント)
調べたところ、警備業務は警備会社に委託されている模様。
https://www.jnss.co.jp/company/facilities.html
とすれば、警備員にとって所員はお客様。
所員から強弁されると抵抗できなかったのかもしれない。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。