2021年2月9日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事が図解付きでネット配信されていた。
8日午前11時ごろ、高知県足摺岬の沖合で、海上自衛隊の潜水艦と民間商船が衝突した。
潜水艦は訓練中で、海中から浮上する際に商船とぶつかった。
潜水艦の乗組員である海自隊員3人が打撲や擦り傷の軽傷を負ったが、商船側にけが人はいないという。
海上保安庁は業務上過失往来危険の疑いもあるとみて、事故原因を調べている。
海自によると、事故は足摺岬から南東約50キロで起きた。
潜水艦は海自第1潜水隊群(広島県呉市)所属の「そうりゅう」(全長84メートル、全幅9・1メートル、基準排水量2950トン)で、訓練中だった。
水深の深い場所から浮上し、船体は潜ったままアンテナなどがある「マスト」を海上に出し、航行した際、商船と衝突した。
潜水艦を浮上させる際は潜望鏡やソナーで周囲を確認する手順になっている。
岸信夫防衛相は8日夜の臨時記者会見で、そうりゅうは事故当時、潜望鏡で商船を見つけて回避しようとしたが間に合わなかったとし、「大変残念な事故。安全の担保に努めたい」と釈明した。
そうりゅうは事故でマストの損傷や艦橋のゆがみが生じた。
アンテナも損傷して通信手段が一時閉ざされ、そうりゅうからの事故の連絡は発生から3時間20分後だった。
事故を受け、政府は官邸に情報連絡室を設置した。
加藤勝信官房長官は記者会見で、海保が商船に連絡したところ、商船側は「衝突した振動はなく、船体にダメージはないと思われる」と回答したことを明らかにした。
海保関係者によると、商船は香港船籍の貨物船という。
そうりゅうは世界最大のディーゼル潜水艦。
乗組員の定員は約65人だが、海自は事故当時の乗組員数を公表しなかった。
https://mainichi.jp/articles/20210209/ddm/001/040/134000c
2月8日18時38分にNHK広島からは、潜水艦は潜望鏡を水面に出そうとする時が最も事故が起きやすいなどといった元海将のコメントなどが、下記趣旨でネット配信されていた。
8日午前11時ごろ、高知県足摺岬の南東、およそ50キロの沖合で海上自衛隊の呉基地所属の潜水艦、「そうりゅう」と付近を航行していた民間の商船が衝突しました。
海上自衛隊によりますと、商船の乗組員にけがはないとみられるということです。
一方、潜水艦の乗組員3人が軽いけがをしたということです。
また、潜水艦は8日、高知県沖で訓練を行っていて、水面に浮上する途中で、マストなどと商船がぶつかったとみられるということで、海上自衛隊が当時の詳しい状況を調べています。
【潜水艦「そうりゅう」とは】
防衛省によりますと、潜水艦「そうりゅう」は、全長84メートル、排水量は2950トンで、平成21年に就役し、海上自衛隊呉基地を拠点とする「第1潜水隊群」に所属しています。
魚雷発射管を6基搭載し、定員は65人です。
高い操作性を保つため、船体後部の「かじ」の形がアルファベットのエックス形になっていて、航行中の静かさが特徴だということです。
海上自衛隊は複数の潜水艦を運用し、高い隠密性を生かして東シナ海での警戒監視などの任務にあたっています。
【衝突した商船は】
海上保安庁の関係者によりますと、海上自衛隊の潜水艦と衝突した船は、香港船籍の「オーシャン アルテミス」(およそ5万トン)だということです。
積み荷は9万トンあまりの鉄鉱石で、中国人21人が乗っていたということです。
船の位置情報を公開しているウェブサイト「IHIジェットサービス」によりますと、この船は、岡山県に向かって今月5日の午後、中国の山東省の青島(チンタオ)を出港したということです。
そして、8日午前0時ごろに鹿児島県沖を通過したあと、事故現場を航行していました。
【過去の海上自衛隊潜水艦事故】
海上自衛隊の艦艇と民間の船舶が衝突する事故は、これまでもたびたび起きています。
最近では去年3月、東シナ海の公海で警戒監視のために航行していた護衛艦「しまかぜ」と中国の漁船が衝突し、漁船の乗組員がけがをしました。
おととし6月には、広島県三原市の沖合で、掃海艇「のとじま」と北九州市の海運会社が所有する貨物船が衝突し、けが人はいませんでしたが、掃海艇が一部浸水するなど双方に被害が出ました。
平成21年10月には関門海峡で護衛艦「くらま」と韓国籍のコンテナ船が衝突して護衛艦が炎上し、護衛艦の乗組員6人が軽いけがをしました。
平成20年2月には、イージス艦「あたご」が千葉県の房総半島の沖合で漁船と衝突し、漁船に乗り込んでいた親子2人が死亡しました。
そして昭和63年7月には、潜水艦「なだしお」が神奈川県の横須賀市沖で遊漁船と衝突し、釣り客と遊漁船の乗組員合わせて30人が死亡する事故が起きています。
【海上自衛隊 元海将は】
海上自衛隊の元海将で、潜水艦の艦長も務めた経験もある金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、「マストには潜望鏡があり、潜水艦は、潜望鏡を水面に出そうとする時に周囲の状況の確認が難しくなるため、最も事故が起きやすい。隊員は当然、そのことを認識しているので、ソナーなどで何度も周囲の安全を確保しながら、慎重に作業する。ソナーが故障したことも考えられるが、故障でないなら、隊員の練度やチームワークに問題がなかったのか、確認する必要がある」と指摘しています。
そのうえで、「日本の潜水艦の性能や隊員の操縦技術は世界でも高く評価されており、ささいな事故も起こさないよう極めて慎重に運用してきた。こうした事故はあってはならない」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20210208/4000010942.html
2月9日19時50分に朝日新聞からは、全ての通信手段が使用不可になる事態は想定外だったなど、下記趣旨の記事が事故後の艦の写真付きでネット配信されていた。
海上自衛隊トップの山村・海上幕僚長は9日の定例会見で、そうりゅうが事故から3時間超、外部と連絡できなかったことについて「非常に問題がある」と述べ、衛星携帯電話などの新たな通信手段を導入する方針を明らかにした。
事故では艦上部のアンテナなどが損傷。
無線や船舶電話など全ての通信手段が使用不能になり、携帯電話が使える海域まで移動するのに時間がかかったため、事故の把握が遅れた。
山村氏は「全部使えなくなる想定はなかった。反省すべきで、想定外というのは許されない」と話した。
https://www.asahi.com/articles/ASP2963TKP29UTIL03C.html
2月10日22時58分に産経新聞からは、民間商船の船首付近に複数の擦った跡や亀裂があったなど、下記趣旨の記事が船首付近の潜水写真付きでネット配信されていた。
第5管区海上保安本部(神戸市)は10日、民間商船を調べた結果、船首付近に衝突時にできたとみられる複数の擦った跡や亀裂があったと発表した。
同本部は前日に続き、10日も午前9時半から民間商船が停泊する神戸港沖で、潜水士が損傷部位の目視確認などを実施。
海面から8~13メートル下の船首付近に黒色の擦った跡が複数認められ、そうりゅうの船体に使用されている塗料が付着した可能性があるという。
船首付近では約20センチの亀裂も確認され、海水の漏れも見つかった。
https://www.sankei.com/affairs/news/210210/afr2102100020-n1.html
2月10日20時32分にNHK兵庫からは、凹んだ部分に入ったヒビから船内に海水が滲んでいたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
潜水士が損傷の状況を調べたところ、海面からおよそ8メートルから13メートル下の船首の付近に、ぶつかった際できたとみられる凹みや擦り傷などが確認できたということです。
また、凹みの部分にはひびが入り、船内に海水がにじんでいたということです。
海上保安本部は今後、業務上過失傷害と業務上過失往来危険の疑いで捜査を進める方針で、損傷部分の塗料の調査や乗組員の聞き取りなどを行うことにしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20210210/2020012018.html
(2/2へ続く)
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。