2021年2月6日12時0分に産経新聞westから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
兵庫県庁の本庁舎(神戸市中央区)で貯水槽の排水弁を閉め忘れたため約1カ月にわたって水道水が流れ続け、多額の水道料負担が生じていたことが6日、分かった。
通常時より余分に請求された金額は約600万円。
年間水道料の半額近くに及ぶ損害で、“水に流せぬ”事態となった。
同県によると、閉め忘れがあったのは県庁西館地下にある貯水槽。
一昨年の11月初め、管轄する神戸市水道局から「検針で水道の使用量がものすごいことになっている」と連絡があり、県庁内の複数の貯水槽を見回ったところ、西館貯水槽で漏水が起きていたことが判明した。
その1カ月前の10月初め、委託業者が年1回の点検で貯水槽内の水を抜き、清掃・消毒を実施。
終了後に底部の排水弁を閉じるのを忘れ、県側も最終的に見落としていたという。
貯水量は15トンで、使用分は自動的に水道水が補われる仕組み。
排水弁が開けっ放しだったため水がたまらず、水道水が補給され続ける事態となった。
流出分相当の水道代は約600万円。
通常なら2カ月分で平均200万円余のため、半年分を無駄にした計算になる。
県庁本庁舎の年間水道料は平成30年度が約1400万円だったが、令和元年度は約2100万円に増加した。
県はこれを受け、点検後の確認の徹底や異常な流量が発生していないか、月2回、水道メーターをチェックするなど、再発防止に取り組んでいる。
県は、「もちろん故意ではないが、水道代は税金であり、申し訳ない」としている。
https://www.sankei.com/west/news/210206/wst2102060005-n1.html
2月9日9時26分に朝日新聞からは、弁を閉める作業を引き受けた職員が閉め忘れた、その職員は半額を弁済した、流れ出た水は9000トンあまりだったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
県管財課によると、外部業者が貯水槽内部を定期清掃した際、50代の職員が排水弁を閉める作業を引き受けたのに、失念したという。
貯水槽は一定量がたまると水の供給が止まる仕組み。
ただ、弁が開いていたため、総量9千トンあまりの水が流れ出たという。
県はいったん全額を税金で納付したが、監査からの指摘を受け、この職員に半額を請求し、すでに納付された。
管財課は「損害を出してしまい申し訳ない」としている。
再発防止のため県は、毎月2回の巡回点検を始めたほか、定期清掃時の職員の立ち会いを1人増やして2人態勢にしたという。
https://www.asahi.com/articles/ASP29328GP28PIHB00F.html
2月8日13時35分にNHK兵庫からは、作業に立ち会った職員が「後で排水弁を閉めておく」と言ったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
清掃は、県の委託を受けた業者が行いましたが、立ち会った担当の職員が「あとで排水弁を閉めておく」と伝えたあと、閉めるのを忘れていたということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20210208/2020011968.html
2月8日17時39分に産経新聞westからは、職員は「後(のチェック)は私が行う」と言って業者を帰した、300万円は判例などをもとに算出した金額など、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
点検に立ち会った50代の男性職員が「あと(のチェック)は私が行う」と業者を帰しながら、排水弁を閉め忘れていたといい、県は職員の責任は重いと判断。
昨年11月に訓告処分にするとともに、裁判例などをもとに県が半額について職員個人に賠償を請求し、同年内に約300万円を支払った。
https://www.sankei.com/west/news/210208/wst2102080015-n1.html
2月8日21時8分に神戸新聞からは、職員は「水をためる残りの作業をしておく」と伝えたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
委託業者が年1回の定期清掃をした際、立ち会った50代の男性職員が「水をためる残りの作業をしておく」と伝えたが、排水弁を閉め忘れた。
2月9日17時11分にYAHOOニュース(AERAdot)からは、職員が300万円弁済したことに対する弁護士の見解などが、下記趣旨でネット配信されていた。
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このニュースが報じられると、県には「職員がかわいそうだ」など、さまざまな声が寄せられたという。
ネット上でも、「職員は全額を賠償するべきだ」、「責任は組織にある」、「個人事業主のような扱いだ」などと、賛否が飛び交っている。
果たして、ミスが確実にあったとはいえ、いち職員に対して、300万円を弁償させる判断は妥当なのか。
企業法務に詳しい弁護士法人「クローバー」代表の村松由紀子弁護士によると、使用者(会社)が被用者(従業員)に賠償請求できる根拠として、1976年の最高裁の判例がもとになっているという。
会社は損害を与えた従業員に対して、「相当と認められる限度の金額」の賠償を請求できるという最高裁判断だ。
村松弁護士は今回の兵庫県の対応について、「職員の加害行為がどのようなものか」、「県が予防措置を取っていたか」がポイントだと語る。
「職員については、閉め忘れという単純なミスで特に害意があるものではないという点。県の予防措置については、この職員ひとりで立ち会いをさせていたことや、1カ月後に水道局からの指摘があるまで水道メーターの異常に気づかなかったという点を考慮すると、300万円という金額は過大だと思います」
さらに、村松弁護士は、県が請求額の参考とした裁判例の解釈にも疑問を呈した。
兵庫県が参考にした裁判は以下のようなものだ。
争点のひとつとなったのは、東京のある都立高校でプールの排水バルブを閉め忘れたまま給水を行ったため、100万円余りの余分な水道代が発生したという過失に対して、教職員ら7人がそのほぼ半額を弁償したことの妥当性だ。
原告である都民は、独自に損害額を算定した上で「都は教職員らに全額を請求すべきだ」と主張したが、裁判所は「賠償額は半額を限度とするのが相当」と判断し、請求を棄却したというものだ。
村松弁護士はこう語る。
「この裁判例は、《プールの排水バルブ閉め忘れにつき教職員らが損害額(水道料金)の半分を負担した》という点が似ているように思えます。
ただ、これは、その数年前に都内の学校でプール水の流失事故が起き、再発防止に努めている中で起きた事故です。
また、その損害額は100万円余りであり、負担者は教職員7名だったという点でも違いがあります」
表面的には似ている事案に見えるが、社会的な背景も負担の度合いも、今回のケースとは異なるというのだ。
「一般企業で、単純なミスをした社員一人に300万円を請求することはまずありませんが、兵庫県の場合は、損失額を税金で支払うことについての県民感情も考慮して、金額を決定したのだろうと思います。
ただ、貯水槽の様子や水道メーターを数日後にチェックするなどの対応を県が取っていれば、ここまで大きな損失額にはならなかったはずです。
県民感情を考えると、『弁償なし』ということにはできないでしょうが、一個人に300万円を支払わせるというのは、乱暴ではないかと感じます」
ミスは許されないとはいえ、仕事につきものでもある。
わが身に置き換えて考えると、怖い話だ。
https://dot.asahi.com/dot/2021020900063.html
(ブログ者コメント)
〇2月11日朝の日テレワイドショーで、この事例が取り上げられ、以下のイラストを使って状況が説明されていた。
〇学校プールの排水栓や給水栓の閉め忘れ事例は本ブログでも何回か紹介したことがあるが、貯水槽事例は珍しい。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。