2014年1月10日1時52分に毎日新聞から事故の第1報が、下記趣旨でネット配信されていた。
9日午後2時5分ごろ、四日市市の石油化学製造「三菱マテリアル」四日市工場で爆発があった。
同社社員ら男性作業員5人が死亡。他に男性12人がけがをして、うち1人はやけどなどで重傷。
警察は、業務上過失致死傷容疑で捜査する。
同社は10日から、同工場を全面操業停止にする。
同社などによると、死亡したのは同社社員のTさん(48)、Fさん(34)、Oさん(36)と、協力会社「南部組」(四日市市)の社員のfさん(25)、nさん(42)の計5人。
消防によると、いずれも爆風で即死状態という。重傷は、三菱マテリアル社員のYさん(39)。
消防によると、爆発したのは、円筒形で金属製の熱交換器(直径0.9m、長さ6m、重さ4.3トン)。約300本のチューブが通り、中を通った原料を冷やしたり、温めたりする。
同工場は、水素ガスとトリクロロシランという化合物を混合させ、半導体の材料などにする多結晶シリコンを製造している。
交換器は、昨年11月にメンテナンスのため、プラントから取り外された。
この日、水素精製施設から30m離れた屋外にクレーンを使って運び出され、つった状態で朝から約20人で洗浄作業中だった。
午前中に一方のふた(約250kg)を取り外し、午後からもう一方を取り外すため、24本のボルトを抜き、ふたを外した数秒後に爆発したという。
ふたは約10m飛んだ。
会社関係者によると、水と窒素ガスをチューブ内に注ぎ込み、爆発を防ぐ処置をしながら作業をしていたという。
交換器は1〜2年ごとに、チューブ内に付着する不要な無機化合物を取り除く作業を行っているという。
消防によると、同工場では2012年2月にも装置の洗浄作業中に、排水にたまった内容物とアルカリ水が反応して爆発が起き、洗浄場の排水溝のふたが飛ぶ事故があった。けが人はなかったという。
現場は四日市コンビナート内の臨海部。最も近い民家までは約1km。
出典URL
http://mainichi.jp/select/news/20140110k0000m040076000c.html
以下、関連情報のポイントのみ、ジャンル分けして紹介する。
なお、プロバイダー字数制限の関係上、URLは主要記事のみ添付する。
[作業内容に関する情報]
(1月10日0時56分 朝日新聞)
熱交換器は、内部に可燃性の不純物「クロロシラン類」が付着するため、昨年11月27日にプラントから取り外し、屋外に移動させてメンテナンスの作業を実施していた。
(1月9日21時30分 朝日新聞)
9日夜、記者会見を開いた猿渡工場長は、「(爆発は)予期しえたもので、十分な対応策をとって洗浄作業を行う工程だった」と説明した。
ふたを外した時に爆発する可能性があるため、窒素を筒の中に流し込むなどして、空気と触れない状態を保ってふたを開けるなどの作業手順が決められていたという。
(1月10日14時00分 毎日新聞)
同社が、爆発した熱交換器のふたを取り外す際の具体的なマニュアルを作らず、内部が安全な状態かどうかの判断を現場作業員の感触などに委ねていたことが分かった。
工場幹部も不備を認め、「誰もが分かる基準が必要だったと反省している」と話している。
事故は、円筒形の熱交換器のチャンネルカバーと呼ばれるふた部分を取り外す作業の最中に起きた。
交換器は内部に約300本のチューブが通され、シリコン製造の過程で主原料の化合物「トリクロロシラン」の残留物が付着する。
トリクロロシランは引火性が高いため、1カ月以上、加湿窒素ガスを器内に注入し、爆発を防ぐ処置をしている。
しかし、その後に器内の状態が安定したかどうかを判断する目安として温度計などの機器は使わず、素手で熱交換器に触り、「冷えていれば取り外しても問題ない」と判断するなど、現場作業員の個人の感覚や経験に頼っていたという。
遠藤副工場長は、「器内の温度計測は技術的に限界があり、加湿窒素ガスを入れ続けた時間と、熱が下がっているかの感触で判断した」と説明した。
「三宅淳巳・横浜国立大学大学院教授(安全工学)の話」
今回のような危険を伴う作業の場合、熱交換器の中の温度、圧力、化学物質の状態をモニタリングしたうえで、ふたを外すなどの工程をマニュアル化するのが一般的だ。素手で交換器に触ることのみで温度を確認するというのは、安全管理のあり方としては考えられない。通常とは異なるメンテナンス作業に対する危険度の認識が十分だったかが、今後の検証のポイントとなる。
http://mainichi.jp/select/news/20140110k0000e040165000c.html
(1月10日23時5分 読売新聞)
同社は10日、爆発した水冷熱交換器を7年10か月洗浄していなかったと明らかにした。
同工場では2010年2月、別の交換器の洗浄の際、化学物質の残留物で作業員がやけどをする事故が起きて以降、洗浄の頻度を増やすことを検討していたという。
工場には熱交換器を洗浄する際のマニュアルはあるが、どの程度の温度まで下がれば安定状態になるのか、窒素をどれくらいの濃度まで注入すれば良いのかといった数値の基準は書かれておらず、作業員の経験則に従って行われていたという。
(1月11日12時8分 msn産経ニュース)
工場側は「使用状況によって熱交換器内部の汚れ具合も違うため、内部の加湿窒素の流れが悪くなったら洗浄していた」としており、洗浄タイミングも経験則で見計らっていたと説明。
遠藤副工場長は10日、「工場全体として、期間をベースに洗浄していくよう考えていかなければいけない」と話した。
熱交換器の洗浄作業をしていた場所の近くに、火花が出る恐れのある発電機が置かれていた。
(1月12日4時0分 毎日新聞)
熱交換器のふたを取り外す際の判断材料とする圧力計の数値について、明確な基準がないことが、同社への取材で分かった。
事故直前の圧力計の数値も記録が残っていないことが判明。
ずさんな安全管理体制での作業だったことが、改めて浮き彫りになった。
同社によると、圧力計は器内部の気圧を示す計器で、ふたの頭頂部に取り付けられている。
同工場は、器内が安全な状態になったかどうかを判断する手段の一つとして圧力計の数値を確認していたとしているが、ふた取り外しの手順書には、作業開始を認める具体的な数値などの基準は記載されていなかった。
また、9日の作業開始時の数値についても、会社側として把握できないでいるという。
同工場では安全確認の際、温度計を使わず、複数の作業員が素手で交換器に触って熱を測り、安全かどうかを判断していたことが既に判明している。
同社の矢尾社長は11日の記者会見で、「私自身、もう少し科学的な方法がなかったかと思う」と、安全管理の不備を認めた。
(1月14日19時1分 NHK津)
この工場ではおととし、別のプラントで設備のメンテナンスを終えた後に発生した水素が爆発して排水溝のふたが吹き飛ぶ事故が起きたほか、4年前にもメンテナンス中に別の設備で火災が起きて作業員1人が首にやけどを負っていたことが分かった。
しかし、2度にわたる事故の後もマニュアルの見直しなど設備本体について爆発や火事の再発を防ぐ具体的な対策は取られなかったという。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。