2016年6月17日付で毎日新聞東京版夕刊から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
「渋消(しぶしょう)式」を見習え−−。
群馬県渋川市の渋川広域消防本部(通称・渋消)に、全国から消防関係者の視察が殺到している。
人気の理由は、出火元から周辺建物への被害の広がりを表す「延焼率」が、全国平均の約20%に対し2%という低さにある。
過去の苦い経験をバネに研究を重ね、工夫を凝らした訓練の様子は、支援する市民が動画サイトに投稿するほど。
火消したちの熱い思いが、渋消人気を支えている。
渋消は、管内に観光地の伊香保温泉を抱え、隊員は本部、本署、4分署で計165人。
人口減小や高齢化で地域の防災力が低下する中、少ない人員でいかに効率良く消火し、延焼を防ぐかを研究し、ホースの出し方から伸ばし方、防火靴の履き方まで、無駄な時間を徹底して省く「時短」に取り組んだ。
道具も工夫を凝らし、年配の隊員でも走りながらホースを伸ばせるよう、車輪が付いた独自開発のキャリーバッグも使っている。
管内約1500カ所の消火栓や防火水槽についても、場所だけでなく、栓の管の太さや水圧、蓋の形状まで把握。
119番が入って地図を広げた時点で、どのホースをどうつなげば最も効果的に消火できるか、瞬時にシミュレーションできる。
青山消防長は、「現場で誰一人として無駄な動きをしない」と胸を張る。
延焼防止にこだわる理由の一つが、2009年3月に市内の有料老人ホーム「たまゆら」で入居者10人が犠牲になった火災だ。
市街地から遠く、違法な増築が繰り返されているなど悪条件が重なったとはいえ、全半焼した3棟のうち、延焼先の2棟で9人が死亡した。
この経験から、「延焼させたら負け」という意識が署員に根付いた。
渋消の延焼率は、11年は20.6%だったが、12年は11.4%、13年は2.1%と飛躍的に向上。
全国平均19.9%(消防庁調べ、14年)と比べ突出しており、消防専門誌で13年1月に特集が組まれると、他の自治体の消防から視察希望が殺到した。
以来、毎年冬に研修会を開くようになり、視察を合わせて、離島を含む40都道府県から、延べ198団体1221人が参加。
青山消防長は、「技術も大事だが、隊員一人一人が自ら考えて行動する職場風土も伝えたい」と意気込む。
魅せられたのは、消防関係者だけではない。
福島県浪江町で東日本大震災に遭い、実家のある渋川市に戻って農業を手伝う川田さん(47)は、訓練の様子を撮影した動画14本を「渋川広域消防応援動画」として、ユーチューブに投稿した。
「震災を経験し、人を助けるのはやっぱり人の力だと痛感した。渋消の一番の魅力である隊員の人柄や前向きな姿勢を伝えられたら」と話している。
[延焼率]
出火元から1〜5mの範囲にある建物への延焼度を示す値。
範囲内のすべての建物のうち、全半焼した棟数の割合で算出する。
例えば、周囲に8棟あり、2棟が全半焼した場合、延焼率は8分の2で25%。
出典
『群馬・渋川広域消防本部 「渋消式」時短火消し注目 老人ホーム火災教訓 延焼防止重点』
http://mainichi.jp/articles/20160617/dde/041/040/068000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。