2021年11月27日2時0分に日本経済新聞から下記趣旨の記事が、栄養循環イラストなど付きでネット配信されていた。
日本最大の内海、瀬戸内海で異変が起きている。
沿岸の都市から流れ出る生活用水や工場廃水の規制強化の結果、水質汚染の原因となる窒素やリンが減る一方で、魚や貝のエサとなるプランクトンが栄養不足で育ちにくくなっている。
「水清ければ魚すまず」の状況に、再生に向けた取り組みが広がろうとしている。
瀬戸内海に面する兵庫県明石市の沖合は、明石鯛や明石ダコをはじめ、約100種類もの魚が水揚げされる全国有数の漁場だ。
同県の漁獲量の約3割を占めていたイカナゴは、2000年代前半までは年1万5000~3万トン程度で推移していたが、現在は2000トンを下回る。
全国上位の生産量を誇るノリの養殖も、2000年ごろから黒く色づかない「色落ち」が続く。
イカナゴは夏は砂に潜って「夏眠」をし、冬に産卵をする。
夏眠に入る前に栄養分を十分に蓄える必要があるが、1990年代後半から肥満度が低下している。
1匹当たりの産卵量も、30年前から30%減った。
栄養不足に陥っている恐れがある。
兵庫県の水産技術センター(明石市)は、2015年度から5年間の現地調査などで、主要漁協のイカナゴの稚魚「シンコ」の漁獲量と海水中の窒素などの濃度に明瞭な関係があることを明らかにした。
思い当たることが一つある。
排水規制だ。
「海域の貧栄養化がイカナゴの減少やノリの色落ちの原因と考えられる」と、反田実技術参与は話す。
ほどほどの窒素やリンは、海の肥やしとなっていた。
「このままでは続けられない」。
ノリ養殖に深刻な影響が出ている。
地元から要望を受けた明石市は対策に乗り出した。
二見浄化センターは、独自に窒素濃度を上げようと「08年から、汚水を浄化する微生物の働きを、あえて抑制している」。
兵庫県は19年に条例を改正した。
「全窒素が1リットルあたり0.2ミリグラム以下、全リンが同0.02ミリグラム以下の海域は生物生産性が低い海域であり、一般的には漁船漁業には適さない」とした日本水産資源保護協会の基準をもとに、全国に先駆けて海域の窒素やリンの下限値を新たに設けた。
同県では22年にも、下水処理場や工場などからの栄養分の確保策などを定めた「栄養塩類管理計画」と、国の方針に基づき汚濁を減らす「第9次総量削減計画」をまとめる。
「管理計画がアクセル、削減計画がブレーキ。バランスが難しい」(環境管理局水大気課)。
国も21年6月に瀬戸内海環境保全特別措置法を改正し、排水規制による「きれいな海」からきめ細やかな管理による「豊かな海」へと方針を転換した。
企業も動く。
水炊き料理店を展開するトリゼンホールディングス(福岡市)のトリゼンオーシャンズ(同)は、沿岸の養殖業向けに海の「肥料」を開発した。
養鶏場で出た鶏のふんが原料で、乳酸菌や酵母を加えて発酵させた。
今までは森や平地の栄養分が川を通じて海に流れ込むしくみがあったが、「今は循環がうまくいっていない」と福岡製造・開発部長は指摘する。
18年から広島県尾道市でアサリの稚貝を育てる実験をしたところ、肥料を干潟にまいた区画では、生存率が約2割高まった。
広島県のカキの養殖業者などが導入した。
ただ、広島大学環境安全センターの西嶋渉教授は、「瀬戸内海に流入する窒素やリンは、陸からよりも、太平洋の影響が大きい」と指摘する。
1980年代の瀬戸内海における栄養塩を養分とする植物プランクトンの濃度を5段階に分けて海域を分析すると、濃度が高かった大阪湾や広島湾は2000年代後半にかけて大幅に下がったが、もともと濃度が低かった海域ではほとんど変化しなかった。
環境省などによると、ブリ養殖が盛んな香川県では赤潮に対する懸念が高いなど、各府県で姿勢も異なる。
積極的な兵庫県も、「結果がみえるのは5年先」と水産技術センターの反田技術参与は指摘し、「どんな海が良いかは利害関係者によって違う。合意形成が大事だ」と話している。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE158890V11C21A1000000/
(ブログ者コメント)
瀬戸内海環境保全特別措置法の改正については、下記記事参照。
(2021年6月12日掲載)
『2021年6月4日報道 瀬戸内海がきれいになり過ぎて漁業に悪影響がでてきたため、栄養塩を総量規制から外し海域ごとに管理できるようにする「改正瀬戸内法」が国会で可決成立した』
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/11713/
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。