2015年12月18日23時21分に毎日新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
厚生労働省は、18日、顔料の原料を製造する国内の化学メーカーの工場従業員と退職者の計5人がぼうこうがんを発症したと発表した。
5人は、北陸地方の工場で化合物「芳香族アミン」を取り扱ったという。
芳香族アミンの一種「オルト−トルイジン」がぼうこうがんの原因物質と指摘されていることから、厚労省は、オルト−トルイジンを扱う約40事業所を対象に、防毒マスクの着用など、従業員への暴露防止対策と健康管理状況を調査する。
また厚労省は、18日、芳香族アミンを取り扱う化学メーカーの業界団体、日本化学工業協会と化成品工業協会に対し、加盟社に注意喚起するよう要請した。
特に、オルト−トルイジンを扱った労働者や退職者には、ぼうこうがんに関する健康診断の受診を勧めるよう求めた。
厚労省や化学メーカーによると、メーカーは今月3日、北陸地方にある工場の従業員約40人のうち47〜56歳の男性4人と、約12年前に退職した43歳の男性1人がぼうこうがんを発症したと、労働局に報告した。
5人の勤務歴は7年半〜24年で、昨年2月〜今年11月の診察で判明した。
工場では、オルト−トルイジンのほか、発がん性が指摘される
▽オルト−アニシジン
▽2、4−キシリジン
▽パラ−トルイジン
▽アニリン
の計5種類の芳香族アミンを使用。
ドラム缶に入った芳香族アミンの液体をポンプを使って反応器に移し、他の物質と合成して「中間体」と呼ばれる染料や顔料の原料を製造していた。
発症した5人は、いずれも製造作業に従事していた。
化学物質を取り扱う事業者は、労安法に基づき、空気中の濃度が有害な程度にならないようにするなど、適切な管理が求められる。
化学メーカーは、「防じん・防毒マスクはして換気もしていた」と説明している。
芳香族アミンは、他の物質と組み合わせることで多様な色が合成できる化合物で、染料や顔料の原料として使われる。
国内では、1920年ごろから工場で使われるようになり、合成して作る染料は色調が安定しており、安価なために広まった。
しかし、芳香族アミンが原因でぼうこうがんを発症したとみられるケースがあり、72年に一部の芳香族アミンの製造・輸入は禁止された。
今回の5種類については製造・輸入禁止の対象ではなく、厚労省は今後の規制について、専門家に協議を依頼する。
(中釜斉・国立がん研究センター研究所長の話)
オルト−トルイジンをはじめとする芳香族アミンの一部はヒトの細胞のDNAにくっつきやすく、発がん性があることが古くから知られている。
オルト−トルイジンは自然界にもごく微量に存在するが、ぼうこうがんを引き起こすほどの高濃度暴露はまれ。
この物質を取り扱う工場でも、マスクを着用するなどの対策を取っていれば通常は防げるはずだ。
5人がどのような職場環境に置かれていたか、詳しく調べる必要がある。
出典URL
http://mainichi.jp/articles/20151219/k00/00m/040/079000c
12月21日8時40分に福井新聞から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
この工場は、M社(東京)の福井工場と、20日、分かった。
同社の社長は、取材に「法令は順守していたが、対策が十分だったのか調べている」と話した。
社長によると、工場は1988年設立。ぼうこうがんを引き起こすとの指摘がある物質「オルト―トルイジン」を扱っていた。
作業工程では、マスクや手袋、帽子を着け、換気装置もある。
5人は主に、液体のオルト―トルイジンからつくった粉末状の物質の袋詰めをしていた。
機械の保守点検時に粉末が舞うこともあった。
医師の診断では、他の従業員の健康に問題はなかった。
同社の他工場でもぼうこうがんの発症例はないが、退職者の健康状態も調べるという。
この問題をめぐっては、厚労省が18日に発表。同省によると、5人は40~50代の男性で、昨年2月~今年11月にかけてぼうこうがんと診断された。
今月3日、工場から所管の労働局に相談があって発覚した。
工場側は、この物質の危険性を認識し暴露防止措置を取っていたが、同省は「どこかで漏れがあったと判断せざるを得ない」としている。
5人には労災申請を勧めている。
福井工場に勤務し、ぼうこうがんを発症した従業員ら5人のうち、坂井市内の男性(56)が20日、福井新聞の取材に応じ、「何度も会社側に危険性を訴えたが、対応してくれなかった」と怒りをあらわにした。
この男性は、18年余り、福井工場に勤務。
オルト―トルイジンからつくった粉末状の物質を袋詰めする作業や、機器の修理の際に機器にこびりついた粉末の結晶をへらで落とす作業に従事し、「作業が終わると顔が(粉で)真っ白になった」と振り返る。
オルト―トルイジンは、化学物質「芳香族アミン」に分類される。
工場では、芳香族アミンの動物への発がん性を指摘する文書が約4年前に従業員に配布され、この男性は「みんなびっくりした」と話し、「そのときから粉じんにさらされていることを上司に言い続けてきたが、会社は『今まで通りやれ』と言うだけだった」と憤った。
男性は、今年11月にがん発症が分かった。
発症とオルト―トルイジンの因果関係は認定されていないが、「どんな結果になろうと、訴えを無視し続けたのが一番許せない」と話す。
出典URL
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/86012.html
12月21日23時11分に産経新聞westからも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
支援している労働組合の化学一般関西地方本部(大阪市)は21日、福井市内で会見し、1人が同日労災を申請し、ほかの2人も近く申請すると明らかにした。
会見には、労災を申請した従業員らが出席。
取り扱っている物質の危険性などを示す安全データシートについて、「会社は20年前にリスク管理室を設置したのに、工場に渡されたのは4年前だった。もっと早く出してほしかった」などと訴えた。
出典URL
http://www.sankei.com/west/news/151221/wst1512210103-n1.html
以下は、関連報道。
(2015年12月18日21時40分 朝日新聞)
5人が膀胱がん発症 染料のもとを製造する事業場で勤務
http://www.asahi.com/articles/ASHDL5DV9HDLULFA02G.html
(2016年1月18日 修正1 ;追記)
2016年1月16日付で毎日新聞東京版から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
発症した従業員2人と2人が加入する化学一般労働組合連合が15日、早急な労災認定などを厚生労働省に要請した。
従業員は、「危険性を知らされず、夏は半袖のTシャツで作業した」と証言した。
要請書では、早期の労災認定のほか、精神的、経済的不安の軽減や事業所で有効な防止対策が取られるまで作業停止を指導することを求めた。
記者会見した従業員の一人は乾燥の工程で12年半働いたといい、「狭い乾燥機の中で(作業でできた)結晶を削り取る作業を行った。夏は半袖のTシャツを着て作業をして露出部分が多く、(体に)結晶が付着した」などと話した。2人ともがん発症の危険性については「知らされていなかった」と証言した。
出典URL
http://mainichi.jp/articles/20160116/ddm/012/040/025000c
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。