2022年5月17日18時36分に読売新聞から下記趣旨の記事が、輸入量と単価の推移グラフ付きでネット配信されていた。
水道水の検査に欠かせないヘリウムが品薄となり、調達できない自治体が相次いでいる。
世界的な供給不足に、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物流の混乱が追い打ちをかけた。
各自治体とも予備を確保しており、水道水に影響は生じていないが、国は工業用を水質検査に回すよう業界に要請することも含め、対策の検討を始めた。
【カビ臭物質検出】
水道水は水道法で定期的な検査が義務づけられており、定められた水質基準をクリアしなければならない。
ヘリウムは水のカビ臭の原因となる物質や農薬などを検出する分析機に使われ、水道水から成分を分離する際に必要となる。
大阪市は3月、半年分にあたるガスボンベ11本を競争入札で調達しようとしたが、応札はゼロだった。
予備はあるが、油の流出など、水源が汚染される事故が発生した場合、検査する水の量が一気に増え、足りなくなる可能性があるという。
水質の分析機は維持管理上、終日、ガスを流し続ける必要がある。
市は、検査していない時は窒素ガスに切り替え、節約している。
担当者は「十分に検査できなくなるかもしれず、価格が高くなっても何とか確保したい」と話す。
全国20政令市と東京都のうち、大阪市のほか、名古屋、新潟、静岡、浜松、岡山の5市が計画通り調達できていない。
岡山市では、今年度分を契約した業者が納入できなくなっており、担当者は「予備は半年持つかどうか。こんなことは初めてで、どう対応していいか困っている」と漏らす。
調達できた自治体も、負担は増している。
神戸市は今年度分を確保したものの、購入額は昨年度の1・8倍に膨らんだ。
【露侵攻で物流混乱】
日本は米国とカタールを中心にヘリウムを全量輸入している。
中国を中心に需要が伸び、不足する傾向にあったが、昨年から続く世界的な海運の停滞に、ロシアの軍事侵攻に伴う物流の混乱が拍車をかけた。
国内取扱量最大手の岩谷産業(大阪市)は計画の8割程度しか調達できず、長期の契約先に供給を絞っている。
2位の大陽日酸(東京)は半分に満たず、4月から取引先への納入量を一律50%に制限している。
原則1年ごとに予算編成しなければならない自治体の事情も、調達を難しくしている。
工業用は長期契約を結ぶことが多く、ある供給業者は「契約が優先され、自治体の入札に応じる余裕はない」と明かす。
水道を所管する厚生労働省は、「水道水は最低限の生活を支えるインフラ。検査できない事態は避けなければならず、対応を検討する」としている。
【国内用途6割が工業用】
ヘリウムは元素の中で最も沸点が低く、他の物質と反応しない特徴を持つ。
半導体や光ファイバーの工場では、余計な化学反応を防ぐために使われている。
日本産業・医療ガス協会によると、国内のヘリウムガスの用途は工業用が6割超を占め、水質検査を含む分析用は1割、バルーン・飛行船用は3%程度という。
ヘリウムは、米国やカタールなど、一部のガス田からしか産出されていない。
輸入価格は年々上昇しており、昨年は1キロ・グラムあたり平均8100円超と、10年前の3倍に達している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220517-OYT1T50170/
(ブログ者コメント)
〇ヘリウム不足については、本ブログでも3年前に紹介したところだが、それ以降、事態は加速度的に悪化している模様だ。
『2019年11月5日報道 全量を海外から輸入しているヘリウムの供給量が急減し価格急上昇、原因は米国での買い占めや世界的な需要増大など、関係学会は安定供給を求め緊急声明を出した』
https://anzendaiichi.blog.shinobi.jp/Entry/10174/
〇ネット調査結果、ガスクロのキャリアガスとしては条件次第で窒素も使えるという提案が分析機器メーカーから発信されていた。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。