2021年4月16日4時11分にNHK NEWS WEBから、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
15日午後5時すぎ、新宿区下落合にあるマンションの地下駐車場で天井の石こうボードの張り替えを行っていた作業員の男性6人が中に閉じ込められました。
1人は自力で外に出て無事でしたが、警視庁によりますと、残りの5人のうち30代から50代とみられる4人が死亡したということです。
また、もう1人も意識不明の状態で病院に搬送され、手当てを受けています。
現場の駐車場には二酸化炭素を放出するタイプの消火設備があり、現場に到着した東京消防庁が測定したところ、20%を超える濃度の二酸化炭素が検出されたということです。
これは通常の空気中の濃度の数百倍に当たり、総務省消防庁によりますと、10%以上になると数分以内に意識がなくなり、放置すれば死に至ることもあるということです。
警視庁は、消火設備が何らかの原因で誤作動した可能性があるとみて16日、現場検証を行って詳しい状況を調べることにしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210416/k10012977561000.html
4月15日20時59分にNHK首都圏からは、2日間で実施予定だった工事の初日だったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場のマンションには、地下駐車場での作業について住民に知らせる案内文が貼られていました。
それによりますと、作業の内容は天井ボードの張り替えで、マンションの管理組合から依頼を受け、15日と16日の2日間にわたって行われることになっていました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210415/1000063063.html
4月16日12時14分に読売新聞からは、噴出器の1つからガスが放出されていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。(ブログ者コメント;噴出器の一つだけから放出されるということがあるのだろうか?)
地下駐車場の天井部分には、消火用の二酸化炭素ガスを放出する消火設備があり、複数ある噴出器の一つからガスが放出されていた。
現場責任者の男性は発生当時、地上にいたが、突然、警報音が鳴り響き、地下に6人いた作業員の1人が駆け上がってきた。
作業員が「二酸化炭素が放出された」と話したため、男性が地下に向かって「おーい」と呼び掛けたが、応答はなかった。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210416-OYT1T50140/
4月16日17時23分にNHK首都圏からは、自力で外に出た作業員はハシゴのそばにいたため脱出できた、避難アナウンスは流れていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
二酸化炭素の放出は、消火設備が作動してから20秒以上間隔をあけなければならないと法律で定められていて、メーカーによりますと、作動させると、通常は警告音とともに「火事です。消火剤を放出します。危険ですので避難してください」というアナウンスが流れるということです。
駐車場の地下部分に一般の人が入ることはありません。
今回のように工事やメンテナンスを行う場合、作業員はマンションの1階の管理人室にある出入り口から、およそ4メートルのはしごを使って地下まで下りるということです。
二酸化炭素が放出された時、地下にいた6人のうち30代の作業員だけがはしごの近くにいたため、なんとか地上に脱出することができました。
自力で逃げた作業員の証言によりますと、現場では二酸化炭素が放出される前に避難を呼びかけるアナウンスが流れたということです。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210416/1000063096.html
4月16日18時12分にYAHOOニュース(共同通信)からは、現場責任者は当日の朝礼で消火設備に触れないよう指導していたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
捜査関係者によると、現場責任者の男性が「事故当日の朝礼で消火設備に触れないよう作業員に指導した」と説明したことも判明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1312d2d64bd06debb45a2383c400cd2cd684c49d
4月16日18時47分にNHK首都圏からは、消防庁は全国の自治体などに安全対策の徹底を求める通知を出したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
総務省消防庁は、全国の自治体と消火設備の業界団体に対し、安全対策の徹底を求める通知を出しました。
通知では、二酸化炭素を放出する消火設備の近くで工事を行う際、消火設備の点検の資格を持つ人などが立ち会って安全管理を行うことや、誤って消火剤が放出されないよう、元栓を閉めてから工事を始めることなどを求めています。
二酸化炭素を放出する消火設備では、去年12月に名古屋市で、ことし1月に東京・港区で放出事故が発生し、総務省消防庁は、このときも2度にわたって安全対策の徹底を求める通知を出していました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210416/1000063100.html
4月16日23時1分にYAHOOニュース(TBS NEWS)からは、地上にいた工事関係者の1人は消火設備について理解していなかったと答えたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
Q.誤ってボタン作動した?
「そうじゃなくて、ボタンがどこにあるかもわかりません。どうすれば発報(作動)するのかもわからないですし、そういう注意はしようがない」(地上にいた工事関係者)
二酸化炭素を噴出する装置は、駐車場内の壁に8か所に設置されていて、駐車場の中からは止めることが出来ません。
事故当時、作業員らは床から天井までの高さが1.8メートルの狭い空間で天井の張り替え作業をしていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f849b6c746e6f3ea8ba07bf79cb140b95bb64ca
4月17日付で毎日新聞東京版からは、元請け会社は資格者立会を求める消防庁の通知を把握していたという下記趣旨の記事が、駐車場のイメージ図付きでネット配信されていた。
工事をしていた元請け建設会社の幹部は取材に、「(消防設備士などの資格者の立ち会いを求める総務省消防庁の)通知は把握していたが義務ではなく、事故を想定していなかった」と説明した。
https://mainichi.jp/articles/20210417/ddm/041/040/113000c
4月17日5時36分にYAHOOニュース(共同通信)からは、作業していた会社は数年前にも同じマンションで同様の工事をしていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
現場責任者によると、数年前にも同じマンションで同様の工事をした。
取材に「CO2で事故が起きるとの想定はなく、危険性はないと認識していた」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/77d443bed0c1a5234e513e83728121ffb75400da
4月17日6時44分に読売新聞からは、噴出器近くの天井板を嵌め込んだ際に煙が噴き出したなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
自力避難した30歳代の男性作業員が「別の作業員が噴出器近くの天井板をはめ込んだ際、煙が噴き出した」と話していることが、捜査関係者への取材でわかった。
警視庁は、作業中に噴出器かその電気配線を傷つけた可能性が高いとみて、業務上過失致死容疑で調べている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210417-OYT1T50112/
4月17日6時56分にNHK首都圏からは、死亡した4人は直前まで作業していた場所で倒れていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
亡くなった4人は、いずれも直前まで作業していた場所で倒れていたことが、捜査関係者への取材で分かりました。
二酸化炭素は短時間で一気に充満する仕組みになっているということで、警視庁は現場の状況などから、4人が消火設備が作動した直後に意識を失ったとみています。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210417/1000063128.html
4月17日12時8分にYAHOOニュース(テレビ朝日)からは、消火装置は「自動」設定のままだったという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
消火装置には地下1階の感知器が熱などに反応する「自動」の設定と、地上にある駐車場の外のボタンを押さないと作動しない「手動」の設定があり、当時は「自動」の設定だったことが捜査関係者への取材で分かりました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b83a01e36edcb18803839c7d43e474fadac34bd
4月17日18時37分に産経新聞からは、消火設備の電源は入ったままだった、死因は二酸化炭素中毒だったなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
同様の工事では、消火装置の電源を落としたり、手動に切り替えたりして誤作動を防ぐ。
捜査関係者によると、事故当時は、駐車場の格納スペースで天井を張り替えていたが、装置の電源は入ったままだった。
捜査1課は17日、司法解剖の結果、死因は二酸化炭素中毒だったと発表。
高濃度のCO2で短時間で意識を失い、避難できなかったとみられる。
https://www.sankei.com/affairs/news/210417/afr2104170007-n1.html
4月18日6時33分にYAHOOニュース(FNN PRIME)からは、作業員が一旦取り外した煙感知器のカバーを戻していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
その後の調べで、警察や消防が駆けつけた際、天井についている消火設備の煙の感知器のカバーが外れた状態だったことも新たにわかった。
自力で避難した男性が、「作業員が取り外した感知器のカバーを戻していた」と話していることから、警視庁は、この作業と事故との関連を調べている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9f2b24dea3ab318df84e1ddff1e9abffcfd55702
4月19日20時33分にYAHOOニュース(毎日新聞)からは、工事のため検知器は天井から外され吊り下げられていたという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
天井板の交換には検知器を外す必要があり、工事中は複数の検知器が配線につながったまま、つり下がっている状態だった。
通常よりも誤検知しやすい状態だった可能性がある。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad4befcc80a2fbc03fc67002b9c88d1d32dd0696
4月20日21時32分にYAHOOニュース(ABEMA TIMES)からは、熱と煙の両センサーが反応しない限り装置は作動しないが、今回は先に熱センサーが反応し、その3時間後に煙センサーが反応したため装置が作動したという、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
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警視庁は、工事の元請け業者で東京・豊島区にある「K建設東京本社」と1次下請けの業者を家宅捜索した。
家宅捜索の容疑は業務上過失致死傷の疑いで、資料などを押収し、工程で安全管理に問題がなかったか調べることにしている。
・・・
消防が行う専門的な点検に関しては、有識者を立ち会わせるのが義務化されているが、今回のような工事においては専門家の立ち会いを推奨するに留まっていて、義務ではない。
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今回の装置の仕組みとして、煙に反応する感知器と熱に反応する感知器の両方が反応しない限り、二酸化炭素は噴出しない。
事故の約3時間前に、管理人室のモニターで感知器のひとつが作動したというランプが作動し、管理人が警備会社に連絡したそうだが、工事の影響だろうというところで止まってしまっていたようだ。
事故の約3時間前から消火装置が作動する一歩手前の状態だったということになるが、一度反応した感知器を解除するためには、消防や専門家が現地に来て解除を行うしかできない。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/05a5415578dfb5bf61c360537474416db7a3a470
4月21日9時45分に朝日新聞からは、熱センサーは8ケ、煙センサーは4ケ設置されていたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
捜査関係者によると、1度目の警報は15日午後2時ごろに鳴った。
2度目の警報は午後4時半ごろで、この直後に二酸化炭素が噴射された。
現場には天井に消火設備の熱センサーが八つ、煙センサーが四つ設置されていた。
https://www.asahi.com/articles/ASP4P344DP4NUTIL03P.html
4月21日10時44分にYAHOOニュース(テレビ朝日)からは、装置作動後はバルブを閉めない限り放出は止まらないのに現場責任者は装置の緊急停止ボタンを押していたなど、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
その後の捜査関係者への取材で、作業に立ち会っていた男性が避難して助けを求めてから工事の現場責任者が通報するまでに約30分かかっていたことが分かりました。
防犯カメラには、この間に現場責任者らが装置の緊急停止ボタンを押す姿などが映っていたということです。
しかし消火装置は、いったん二酸化炭素が噴出されると、タンクのバルブを閉めない限り止まらない仕組みでした。
警視庁は、工事の関係者が消火装置の操作の仕方をどこまで認識していたか、問題点を調べています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a14b79ec8a3fb9699dd32b0d67672de6ad407518
(ブログ者コメント)
〇去年は名古屋市で、今年は港区で同じようなCO2消火設備誤作動事例があった。(両者、本ブログでも紹介スミ)
いずれも作動ボタンを誤って押したことが原因だった模様。
〇関連情報調査中、二酸化炭素による事故は二酸化炭素増加による酸素欠乏と二酸化炭素そのものによる中毒の2つに分けて考える必要ありなどと記された下記文献が見つかったので紹介する。
『ドライアイスによる急性二酸化炭素中毒の1 例』
(日本職業・災害医学会会誌 第55巻5号 2007年)
・・・
2002 年 7 月 4 日午前 8 時頃,ドライアイス貯蔵庫横のトイレで意識消失にて倒れている 4 人が従業員に発見され,うち1 人が当センターに救急搬送となった.
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よって,現場・発生状況より意識障害の原因はドライアイスによる急性二酸化炭素中毒と診断し,酸素投与を継続した.
・・・
生体への障害として,慢性呼吸器疾患などで生体内の二酸化炭素蓄積による CO2 ナルコーシスは 良く知られているが,生体外の二酸化炭素曝露による障害として,ドライアイスの成分である二酸化炭素ガス吸入による急性中毒にて死亡する危険性があることはあまり知られていない.
急性中毒症状として,2~10% で視力障害,耳鳴り,チアノーゼなどの症状が現れ,10~25%で血圧の上昇,振戦,1 分で意識消失がおき,25% 以上では即時に昏睡状態に陥り,死に至る(表 2).
よって,二酸化炭素の作業環境基準は 0.1% 以下であり,工場によっては濃度が一定以上になると作動する警報装置を設置している所もある.
急性二酸化炭素中毒の状況として,二酸化炭素過剰に酸素欠乏を伴う場合と二酸化炭素自体によるものとの二つに分類される.
前者はタンク,貯蔵庫,地下室などの閉鎖空間で球根,みかん,大豆,もろみ,木材などによる呼吸,発酵で空気中の酸素が減少し,二酸化炭素が増加することによっておこるものである1).
後者は閉鎖空間でのドライアイスの気化2),自動火災報知器の誤作動や二酸化炭素消火装置からのガス噴出1),八甲田山など火山性の二酸化炭素中毒3)4)などが報告されている.
本例 はドライアイス販売工場で通常はシャッターを開けて仕事をするはずが,事故時には何故かシャッターが閉じたまま作業していることに気付かず閉鎖空間を作ったため,ドライアイスの成分である二酸化炭素ガスにて急性中毒を生じ,意識障害を起こしたと考えられた.
ちなみに,曝露した4 人のうち 1 人は心肺停止状態で他病院に搬送され死亡している.
急性二酸化炭素中毒による死亡のメカニズムに関して報告されている文献は少ない.
服藤らの報告5)では,雄性マウスを用いた動物実験で,窒素置換型の酸素欠乏では,死亡しない酸素濃度であっても,二酸化炭素置換型の酸素欠乏では明らかに死亡すると報告している.
・・・
池田ら6)は 80% 二酸化炭素,20% 酸素混合ガス中 にイヌを曝露させる実験を行い,1 分で呼吸運動が停止し,その後 10 分程度で心停止したことから,高濃度二酸化炭素中毒吸入による死因は低酸素血症によるものではなく,二酸化炭素中毒によるものであると報告している.
また,黒木ら7)は無酸素ガス下のラット実験で二酸化炭素ガスを注入することにより,呼吸停止状態にさせ血液ガス分析を行ったところ,二酸化炭素ガス血症に基づく高度のアシドーシスが急死の原因であり,それに基づく不整脈死の可能性が高いと報告している.
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http://www.jsomt.jp/journal/pdf/055050229.pdf
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。