2016年6月3日12時30分にNHK盛岡から、下記趣旨の記事がネット配信されていた。
去年9月、陸前高田市が高台に住宅を再建する被災者のために竹駒町に造成した土地5区画のうち、2区画で地盤沈下が見つかった。
市は、ことし1月から3月にかけて、地盤沈下が起きた土地の土を採取して調査を行ったが、この土が水を含むと強度が落ちる性質だということが分かった。
この土は、近くの山で採取された、砂を含んだきめの細かい土だったという。
市は、この土が雨などで水を含んで強度が落ち、地盤沈下が起きたと見ている。
市は、宅地を引き渡す際に1区画あたり5つの地点で調査を行い、すべての地点で基準を満たしていたが、調査は土が乾いた状態で行われ、雨などで水を含んだ場合は想定していなかったという。
地盤沈下のあった2区画のうち、1つの区画は市が費用を負担して地盤を強化する工事が行われ、住宅建設が進められているが、もう1つの区画については、被災者が住宅建設を取りやめたため、地盤を強化したあとに移転者を改めて募集することにしている。
出典
『水で強度低下で地盤沈下か』
http://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/6045846301.html?t=1464988289622
6月4日付で朝日新聞岩手全県版(聞蔵)からも、同趣旨の記事がネット配信されていた。
市内の他の造成地では地盤沈下の被害が起きておらず、「他の造成地で地盤沈下が起きる可能性は低い」と、市は説明している。
市は、造成前、乾いた状態の土質強度を建設業者を通じて調査。
基準を満たしていることは確認している。
水分を含んだ状態の試験はしていなかったが、そもそも、こうした試験は義務付けられていないという。
発覚当時の状況については、2015年11月19日付で岩手日報から下記趣旨の記事がネット配信されていた。
陸前高田市竹駒町の防災集団移転事業造成地で地盤沈下が起きたことが、18日、分かった。
関係者によると、所有者に土地を引き渡した後で、2区画の住宅建築工事が中断している。
原因は調査中。
市によると、造成地は同市竹駒町の下沢団地(5区画)で、山の斜面を切り土と盛り土で造成した。
地盤沈下は南側の盛り土部分で発生し、住宅の建築が始まった9月上旬に約2cm沈下が分かった。
1件は住宅建築中、もう1件は基礎工事中で、コンクリートにひびが入った。
北側の切り土部分は、既に2世帯が自宅を建てて生活している。
引き渡し前に施工業者が盛り土区画の5地点、切り土区画の3地点を調査したが、地盤の強度に問題はなかった。
出典
『防集造成地で地盤沈下 陸前高田、2区画の工事中断』
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/news.cgi?sh=20151119_1
(ブログ者コメント)
盛り土として、水を含めば強度が落ちる性質の土を使用したことが原因らしい。
どういうことか調べてみると、「粘性土は盛土材料としては難しい」とか、「土丹という砂質粘土が凝固した土を盛り土に使用すると沈下の危険あり」とする解説記事が見つかった。
『土の性質と盛土材料』㈱KJ GLOBAL 一級建築士事務所
http://www.kj-global.com/kiso-jiban/doshitsu-morido/
今回の土がどうだったかは不明だが、「砂を含んだキメ細かい土」だったと報じられていることから考えると、土丹だった可能性もある。
もしそうだとすれば、土地造成業者にとって基礎知識であろうはずの、盛り土にふさわしくない土を使ったことになる。
なぜだろう?
(2016年6月18日 修正1 ;追記)
2016年6月4日付の岩手日報紙面に、造成工事で発生した現場の土を盛り土として使用していたという、下記趣旨の記事が掲載されていた。
市は、原因把握と移転の再募集に向けた地盤改良の準備のため、3月に土を採取して通常と水を含んだ飽和状態で強度を調査。
飽和状態で強度低下を確認した。
地盤沈下は、山の斜面を切り土と盛り土で造成した下沢団地(5区画)で発生し、建築中だった2区画の基礎にヒビを発見。約2cmの沈下を確認した。
盛り土は、工事で発生した現場の土を使用していた。
住宅建築中だった1区画は、土中に杭を打ち込んで地盤を強化した上で、建築を継続。
残り1区画は、移転予定者が建築を中止した。
その間、ずっと奥歯に挟まっていたのは、他社の事故情報がほとんど耳に入ってこなかったことです。
そこで退職を機に、有り余る時間を有効に使うべく、全国各地でどのような事故が起きているか本ブログで情報提供することにしました。
また同時に、安全に関する最近の情報なども提供することにしました。