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                                                       本ブログでは、産業現場などで最近起きた事故、過去に起きた事故のフォロー報道などの情報を提供しています。  それは、そういった情報が皆さんの職場の安全を考える上でのヒントにでもなればと考えているからであり、また、明日は我が身と気を引き締めることで事故防止が図れるかもしれない・・・・そのように思っているからです。  本ブログは、都度の閲覧以外、ラフな事例データーベースとして使っていただくことも可能です。        一方、安全担当者は環境も担当していることが多いと思いますので、あわせて環境問題に関する情報も提供するようにしています。       (旧タイトル;産業安全と事故防止について考える)
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201918630分に日本経済新聞から、下記趣旨の記事が写真や図解付きでネット配信されていた。

 

崩れない盛り土を造るために最も重要なことは、水の影響をよく見極めることだ。

対策を誤れば崩壊し、周囲に多大な被害を及ぼす。

 

2017年10月に和歌山県紀の川市の斜面が豪雨で崩れ、土砂が民家を襲った事故は、斜面上に盛り土をして造った農道が原因だった。

 

この事故で斜面下の住宅など4棟が被害を受け、男性1人が死亡した。


事前のボーリング調査で地下水は無いと判断し、水の影響をあまり考慮していなかった。

 

 

【盛り土無ければ斜面崩れず】

 

斜面が崩壊したのは17年10月22日。

台風21号による大雨の影響で午後8時30分ごろ、南北方向に傾斜する斜面が幅(東西方向)約80m、長さ約120mにわたって崩れた。

崩れた土砂は1万8000m3に及ぶ。

 

崩れた斜面の上部には、東西方向に盛り土で造成した農道が通っている。

この盛り土全体が崩れ、斜面を滑り落ちた。

 

付近の観測所のデータによると、当日の1日当たりの降雨量は219ミリで、観測史上最大を記録していた。

 

農道を建設した和歌山県は、17年11月に有識者でつくる調査検討会(会長:大西有三・京都大学名誉教授)を設置し、崩壊の原因を調査。

その結果、大量の雨水を含んだ盛り土が斜面崩壊を誘発していたことが分かった。


当日の雨量データを使った解析によると、盛り土が無ければ、斜面は崩れずに済んだ。

 

県は責任を認め、国家賠償法に基づき、住民らと補償の交渉を続けているが、農道の設計に不備があったとまでは明言していない。

「農道の盛り土が無ければ被災しなかったという意味で、農道を造った県の責任を認めている。ただ、県に過失があったとまでは言えないのではないか」(道路建設課の太田和良課長)。

 

 

【専門家は「調査や設計に問題あった」】

 

農道は15年3月に完成した。

県によると、事前に実施した深さ7mのボーリング調査で地下水は認められず、盛り土の下の強風化岩層も、載荷試験で十分な支持力が確認されていた。

 

施工に不備はなく、設計通りしっかりと造られていた。

 

一方、専門家の見方は厳しい。

調査検討会の委員を務めた京都大学防災研究所斜面災害研究センターの釜井俊孝教授は、「事前の調査や設計に問題があったことは明らかだ」と指摘する。

釜井教授が問題視するのが、盛り土の法尻に設置した「補強土壁」だ。

 

補強土壁とは、補強材を入れて強化した土で垂直に近い壁面を造り、土留めするもの。

 

この農道では、「ジオテキスタイル」と呼ぶ樹脂製のネットを60cm間隔で層状に敷設した補強土壁を使い、盛り土の法尻を土留めしていた。

 

補強土壁の断面形状は幅5.6m、高さ7.5mの平行四辺形で、壁面の勾配は「1対0.3」だ。

 

この補強土壁が地下を通ってきた雨水を遮る形になったことが災いした。

 

崩壊時には、地下水位が盛り土の地表部まで上昇していたとみられる。

崩壊後の調査の結果、盛り土や補強土壁自体が崩れたわけではなく、その下の強風化岩層を滑り面としていた。

大量の水を含んだ盛り土が上載荷重となって斜面を崩したと考えられる。

 

 

【不十分だった排水対策】

 

補強土壁には、幅30cmの不織布による水平排水材が、上下に1.2m間隔、水平方向に2.4m間隔で千鳥配置されていた。

不織布を通じて補強土内の水を排出する仕組みだ。

 

釜井教授は、「この程度の不織布では到底、雨が降ったときに排水できるはずがない」と指摘する。

 

「補強土壁は、欧州の雨の少ない地域で発達した工法だ。日本で施工するのなら、日本の気候に適したモンスーンアジア型の補強土壁を考える必要がある」(釜井教授)。

 

ジオテキスタイルで補強してあるとはいえ、土なのだから水に弱い。

しっかりとした排水対策が必要だ。

 

通常、斜面に補強土壁を設置する場合、地山から水が入り込まないように、掘削部の底面と背面には、砕石による排水層や排水パイプといった排水工を設置する。

 

しかし、この補強土壁では、事前のボーリング調査で地下水が観測されなかったことから、排水工を省略していた。

 

そこで県は、標準的な排水工を設けた場合を想定して、浸透流解析や安定解析などを実施。

その結果、排水工を設置していても斜面は崩壊したという結果になった。

 

つまり、もっと抜本的な排水対策が必要だったといえる。


記録的豪雨だったとはいえ、盛り土がなければ斜面は崩れなかった。

水への対策が不十分だったと言わざるを得ない。

 

水への対策が手薄になった大きな要因は、事前のボーリング調査で地下水が観測されなかったことだ。

そのため、地下水が無いものとして設計が進んでしまった。

 

 

【事前に湧水のことを伝えていた】

 

では、本当に地下水は無かったのだろうか。

 

「水が無いわけがない。調査のときに、たまたま出なかっただけだ」と釜井教授は断言する。

 

崩壊現場は小さな谷で、水が集まりやすい形状になっている。

県が崩壊後に地域住民に聞き取り調査をしたところ、崩壊箇所の東側では湧水があり、かつては畑で、その湧水を利用していた。

住民は湧水があることを、農道の計画当初から何度も県に伝えていたという。

 

盛り土の施工後も、排水が不十分であることを示す兆候は表れていた。

 

農道の路面と地山との間に挟まれた盛り土天端の平地では、雨が降ると水たまりができ、10日ほど水が抜けなかった。

盛り土の天端にひび割れが生じたため、転圧し直して地山との境界部に側溝を設けたが、それでも雨の際には水たまりができた。

 

「周りの地形や環境、植生などを見て考えていない。データに依存しすぎる初歩的なミスだ」と釜井教授は批判する。

 

 

【想定より著しく弱かった風化岩】

 

誤算だったのは、水だけではない。

補強土壁の基盤とした強風化岩層の強度も、設計時の想定とは大きく異なっていた。

 

県によると、盛り土自体が崩れたのではなく、その下の強風化岩層で滑っていたことが、検討委員会で疑問点として挙がった。

 

強風化岩なので強度はあまり高くないが、それでも100m下まで流れるほど流動化することがあり得るのかという疑問だ。

 

そこで追加で土質試験を実施したところ、強風化岩層のせん断強度が、設計で想定した値よりも大幅に低いことが分かった。

補強土壁の基盤としての支持力はあったが、斜面の安定に必要なせん断強度は持っていなかった。

 

当初の地質調査や施工時には確認できなかった脆弱な灰白色粘土層が、強風化岩層に流れ盤構造で分布していたからだ。

 

斜面崩壊から1年ほどたった18年11月2日、県は調査検討会の報告書を公表した。

「今後の教訓となるように」との委員からの要望を受け、報告書として公表することにした。

 

報告書は、斜面崩壊のメカニズムを以下のようにまとめている。

 

「農道盛り土が上載荷重として作用し斜面のバランスを低下させたことや、記録的な豪雨で地下水位が大幅に上昇したことが誘因となり、強風化岩層の潜在的な弱層を滑り面として、滑り破壊が生じた」。

 

原因が明らかになったこと受け、県は今後、復旧工事に取り掛かる。

路面の位置を下げて盛り土量を減らすことを検討している。

 

[日経コンストラクション 20181126日号の記事を再構成]

 

出典

『水を甘くみた盛り土が凶器に 斜面崩れ民家襲う』

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3894806014122018000000/ 

 

 

 

 

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化学関係の工場で約20年、安全基準の制定、安全活動の推進、事故原因の究明と再発防止策立案などを担当しました。
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